宅地建物取引業(宅建業)を営む上で、重要な項目は事業員の管理といえます。新規の免許申請や更新申請の際、確認が必要なのが従業者証明書の整備状況です。
「ただの社員証じゃだめなの?」と思われがちですが、宅建業法第48条によって厳格に定められた法的書類であり、不備があると指導の対象にもなります。
今回は従業者証明書の重要性と正しい作成方法について解説します。
従業者証明書とは何か?
宅建業法第48条では、以下のように定められています。
(証明書の携帯等)
第48条 宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない。
2 従業者は、取引の関係者の請求があつたときは、前項の証明書を提示しなければならない。
3 宅地建物取引業者は、国土交通省令で定めるところにより、その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、第1項の証明書の番号その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。
4 宅地建物取引業者は、取引の関係者から請求があつたときは、前項の従業者名簿をその者の閲覧に供しなければならない。
つまり、宅建業者の従業員がお客様と接したり、業務を行たったりする際には、必ずこの証明書を携帯していなければなりません。また、取引の関係者から請求があった場合には、これを掲示する義務もあります。
従業者証明書が必要な従業員の範囲
ここで注意が必要なのは、誰に従業者証明書を持たせるべきかという範囲です。
一般的にイメージされている営業担当者だけでなく、以下のスタッフも含まれます。
・代表者・常勤役員
・専任の宅地建物取引士
・一般事務、受付、経理等のスタッフ(パート・アルバイト含む)
一時的に事務補助を行う者や、非常勤役員
基本的にその事務所の業務に少しでも関わる人すべてと捉えておくのが安全といえます。
従業者証明書の正しい書き方と様式
従業者証明書には決まった様式(様式第8号)があります。サイズや記載事項が細かく決まっているため、独自で作成した社員証で代用することができませんので注意が必要です。

※神奈川県 宅地建物取引業法免許申請書等の記載手引 引用
①形状とサイズ
縦5.4cm×横8.5cmの一般的なカードサイズで色彩は青色以外とされています。
②表面の記載事項
・従業者証明書番号:後述する独自のルールで採番します。
・氏名・成年月日:住民票どおりの正確な情報を記載。
・写真:縦3.0cm×横2.4cm。撮影年月を付記します。
・免許証番号:国土交通大臣( )第号や○○県知事( )第号を記載します。
・商号または名称:会社名。
・主たる事務所の所在地:本店の住所。
・有効期間:5年以内。
③裏面の記載事項
裏面には、宅建業法第48条の抜粋や、住所変更時の記載欄を設けます。
従業者証明書番号の付け方ルール
証明書番号の付け方は、会社が好きに決めてよいものではなく、以下のルールに基づいた6桁の数字で構成されます。
①第1・2桁目:雇用又は採用された年の西暦下2桁。2026年採用なら「26」。
②第3・4桁目:雇用された月。4月採用なら「04」。
③第5・6桁目:従業員ごとの固有番号。
2026年4月に採用された、その月で一人目の従業員番号は「260401」となります。
この採番ルールを徹底することで、その従業員がいつから在籍しているのかが一目で分かるようになっています。
有効期限と更新のタイミング
従業者証明書の有効期限は、最長5年です。なぜ5年かというと、宅建業の免許自体の有効期限が5年だからです。実務上は、免許の更新時期に合わせて従業者証明書も新しく作り直すケースが一般的です。
もちろん、途中で役職が変わったり、事務所が移転したりした場合には、その都度書き換え、あるいは再発行を行う必要があります。
従業者名簿とのセット管理が必須
従業者証明書を発行したら、必ずセットで行わなければならないのが従業者名簿(様式第8号の2)への記載です。
従業者名簿は、事務所ごとに備え付ける義務があり、以下の点に注意が必要です。
・退職後10年間の保存義務:従業員が辞めたからといって、すぐに名簿から抹消したり破棄したりしてはいけません。
・閲覧義務:取引の関係者から見てほしいと言われたら、拒否することはできません。
・実務経験の証明:従業員が将来、宅地建物取引士の登録をする際、この名簿が実務経験を証明する重要な資料になります。
行政書士からのアドバイス
行政の立入検査が入った際、チェックされるのがこの従業者証明書と従業者名簿の整合性です。退職した人のカードが回収されずに残っていないか、新しく入った人の採番ルールが間違っていないかなど、今一度、漏れがないか確認しましょう。
これらが適切に管理されている会社は、他の重要事項説明や契約書管理も行き届いていると判断されます。
まとめ
従業者証明書は、法に基づいた正規の従業者であることを証明するものです。いつ検査が来ても安心な状態を整えておくことが肝要です。
「新規免許申請で従業員名簿の作り方がわからない」「更新にあたって古い証明書を整理したい」といったお悩みがあれば、ぜひご相談ください。複雑な書類作成を代行致します。
「グラス湘南行政書士事務所」