建設業を営む上で、事業の規模拡大や公共工事の受注を目指すなら、建設業許可の取得は避けて通れません。しかし、「過去に犯罪歴(前科)があるけれど、許可は取れるのだろうか?」と不安に感じる方もいらっしゃるでしょうか?
建設業許可は、建設業法に基づき、経営能力、技術能力、誠実性、財産的基礎などの要件を満たさなくてはなりません。このなかで、前科が関わってくるのが、誠実性の部分である欠格要件です。
今回は、建設業許可と前科の関係について、建設業を取り扱う行政書士の立場から解説します。
建設業許可の「欠格要件」とは?
建設業法では、許可申請者が一定の要件に該当する場合、許可を与えないという欠格要件を定めています。過去の犯罪歴(前科)が問題となるのは、主に以下の条文に関わる場合です。
①禁錮以上の刑に処せられた場合(建設業法第8条1号)
・「禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」は、欠格要件に該当します。
・この「禁錮以上の刑」には、懲役や禁錮が含まれます。刑罰の種類と重さから、建設業の適格性に影響を及ぼすと判断されるものです。
・執行猶予が付いた場合でも、執行猶予期間が満了していない間は、この欠格要件に該当します。執行猶予期間が満了し、刑の言い渡しが効力を失ってから、この欠格要件からは外されることになります。
・罰金刑については、次の「特定の法令に違反した場合」を除き、この欠格要件には原則として該当しません。
②特定の法令に違反し、罰金刑に処せられた場合(建設業法第8条2号)
建設業の適正な運営を確保するため、特に以下の特定の法令に違反し、罰金刑以上の刑に処せられた場合も、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者は欠格要件に該当します。
【特定の法令の例】
・建設業法の例:無許可業者、一括下請の禁止違反など
・労働基準法の例:賃金不払い、違法な長時間労働など
・労働安全衛生法の例:重大な労働災害を引き起こすような安全管理義務違反など
・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)
・刑法の特定の罪の例:詐欺、恐喝、背任など、特に誠実性を疑われる罪
これらの法令違反による罰金刑は、建設業法を営む上で求められる誠実性を欠くと判断されるため、禁錮以上の刑と同じく5年間は欠格要件となります。
欠格要件は誰に適用されるのか?
欠格要件は、申請者本人だけでなく、その事業運営に関わる重要な人物にも適用されます。具体的には以下の通りです。
・申請者本人(法人であればその法人)
・法人の役員(取締役、執行役、これらに準ずる者)
・法人の支店長や営業所長
・個人事業主の支配人
・法定代理人(未成年者の場合)
申請を考えている会社や個人事業主で、上記に該当する者がいる場合、その者の過去の犯罪歴(前科)が上記の欠格要件に該当しないかを確認する必要があります。
過去の経歴をクリアするためのチェックポイント
前科がある方が建設業許可取得を目指す場合、以下の3つの重要なポイントを確認して下さい。
刑の重さ
・禁錮以上の刑だったか(懲役・禁錮)
・特定の法令違反による罰金刑だったか
刑の執行終了日または猶予期間満了日
・「刑の執行を終わり」とは、刑務所からの出所日などを指します。
・「執行を受けることがなくなった日」とは、執行猶予期間の満了日などを指します。
5年間の経過確認
・上記の執行終了日または猶予期間満了日から丸5年間が経過しているかどうか
5年間が経過していれば、原則として欠格要件には該当しません。
過去に前科があったとしても、5年の期間を過ぎていれば、法令上は欠格要件から外れ、許可取得の可能性が開けます。
前科が罰金刑だった場合の注意点
前述の通り、特定の法令違反による罰金刑は欠格要件となりますが、それ以外の法令、例えば、軽微な道路交通法違反などによる罰金刑は、原則として、直ちに欠格要件とはなりません。
ただし、許可審査においては、申請者の誠実性が総合的に判断されます。反復・継続的な法令違反がある場合や、建設業の信用を損なうような事案であると判断された場合は、許可行政庁の裁量により、許可が下りない可能性もありますので注意が必要です。
特に、申請時や許可後の虚偽の申告は、絶対に避けなければなりません。
これは建設業法違反となり、それ自体が欠格要件に該当する可能性があります。
前科の有無やその詳細な状況は、インシデントな情報で専門的な判断が必要な問題といえます。
過去の経歴を理由に建設業許可取得を諦める前に、一度当事務所へご相談ください。
当事務所ではお客様のプライバシーを厳守し、最適な解決策ご提案できるようにバックアップ致します。
「グラス湘南行政書士事務所」