建設業を営む上で、非常に重要となる経営事項審査(経審)において、会社の技術力を効果的にアピールできるCPD単位の取得について、解説します。

経営事項審査のCPD単位取得で技術力をアピール!CPD単位とは?

建設業者の皆様にとって、公共工事の受注に欠かせないのが、経営事項審査です。この経審では経営状況と経営規模・技術力・社会性等の総合的な評価が行われ、その結果がP点(総合評定値)として算出されます。
このP点を高める要因の一つが技術職員の能力、特に継続的な学習意欲と実績を示すCPD単位です。CPD単位を適切に取得し、経審で評価を受けることは、企業の技術力と人材育成への熱意を対外的に示す強力なツールとなります。

CPD(継続能力開発)単位とは?

CPDとは、技術者や専門家が、その専門能力を維持・向上させるために、継続的に行う学習や研修、自己研鑽などの活動を指します。CPD単位は、これらの活動を定量的に評価し、どれだけ知識やスキルを更新し続けているかを証明するための指標です。
建設業におけるCPD活動の主な例としては、以下のようなものが挙げられます。

・技術研修会や講習会への参加
・eラーニングによる学習
・学術論文の発表や技術図書の執筆
・ボランティア活動(例:防災活動への参加)
・資格取得のための学習

これらの活動に参加・実施することで、所定の評価機関から単位が付与されます。

経審におけるCPD単位の評価の仕組み

経営事項審査では、「技術力」の評価項目の一つとして、技術職員の継続的な学習実績が加点対象となっています。

加点対象となる技術者と単位

経審で評価対象となるのは、一級の技術者(例:一級建築士、一級施工管理技士)が取得したCPD単位です。
具体的には、審査基準日(申請する経審の対象期間の最終日)から過去1年間に取得したCPD単位数に応じて、その技術者の技術力が評価され、経審のW1(技術職員の数及び状況)の評価項目に反映されます。

評価される主なCPD制度

経審で評価対象となるCPD制度は、国土交通省の告示により定められています。主要なCPD制度としては、以下のようなものがあります。

・(一社)建設コンサルタンツ協会
(JCCA)のCPDプログラム
・(公社)土木学会のCPD制度
・(一社)日本建築士事務所協会連合会のCPD制度(二級・木造建築士を除く)
・(一社)日本建設業連合会(日建連)のCPD制度
・各都道府県の建設産業団体が運営するCPD制度

重要なのは、自社の技術者が取得しているCPD単位が、経審で評価対象となる制度のものであるかを確認することです。

加点効果の具体例

加点効果は、各技術者の単位数に応じて細かく定められていますが、例えば、年間30単位以上の取得で最大の評価となるケースが多く見られます。一級技術者が多数在籍し、全員が継続的にCPD活動を行っている企業は、技術力評価において大きなアドバンテージを得ることができます。

CPD単位を取得。活用するメリット

CPD単位を取得し、経審でアピールすることには、加点以上の多くのメリットがあります。

経審の点数アップと競争力の強化

最大のメリットは、技術力評価(W1)の加点によるP点の上昇です。P点は公共工事の入札参加資格を決める重要な数値であり、点数が上がることで、より大規模で安定した公共工事の受注機会が増加し、企業の競争力が大幅に向上します。

企業の技術力と信頼性の可視化

CPD活動は、最新の技術や法改正、安全管理に関する知識を常にアップデートしていることの証明です。これは、「この会社は、技術力向上に真剣に取り組んでいる」ということを発注者(国や自治体)に伝えることになり、企業の信頼性を高めます。

社員のモチベーション向上と人材育成

CPD活動は、社員のスキルアップとキャリア形成に直結します。会社がCPD取得を奨励し、費用負担などのサポートを行うことで、社員は自己成長の機会を得て、モチベーションが向上します。これは、優秀な人材の定着にもつながる、企業にとって非常に大きなメリットといえます。

CPD単位取得を円滑に進めるためのアドバイス

どの制度の単位を狙うか明確にする

自社の主要な資格(土木・建築など)に合わせて、経審の評価対象となる最も効率的なCPD制度を選定し、全社的な取り組みとして、浸透されることが望ましいといえます。

計画的な単位取得を促す

単位は「過去1年間」の取得実績で評価されます。審査基準日から逆算して、年間で必要な目標単位数を設定し、計画的に研修参加などを促すことが重要です。

記録と証明書の確実な管理

取得したCPD単位は、各CPD運営団体が発行する証明書や単位取得証明をもって経審で提出する必要があります。これらの証明書を技術者個人任せにぜず、会社として一元管理する体制を整えることが肝要といえます。

まとめ

CPD単位の取得は、建設業者にとって義務ではなく、投資といえます。
技術職員一人ひとりの継続的な努力と学習の実績を経営事項審査というかたちで、具現化することで、競争の激しい建設業界で一歩抜きんでた存在となることが期待されます。
経審におけるCPD単位の取扱い、申請書類の作成、単位取得証明書の整理などでお困りごとがあれば、当事務所にお気軽にご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所