公共工事の入札に参加するために、必須となるのが経営事項審査(経審)です。この経審の結果は、その会社の格付け(評価)に直結し、受注できる工事の規模や種類を大きく左右します。この経営事項審査の結果には有効期限があります。
「前回の審査から時間がたってしまい、気付いたら有効期限が切れていた」という事態は、公共工事の受注機会を失うことにつながりかねません。今回は、経審の有効期限の基本から期限切れを防ぎ、スムーズに次期審査に望むための具体的な準備について、専門家の視点から解説します。
経営事項審査の有効期限の基本を知る
経審の結果は、一度取得すれば永久に有効というわけではありません。
経営事項審査の結果通知書(総合評定値通知書)に記載されている審査基準日から1年7ヶ月が有効期限となります。
・審査基準日:原則として直前の決算日
・有効期限:審査基準日から1年7ヶ月
・注意点:この有効期限内に次回の審査基準日を決算日とする新しい経審を受け、新しい総合評定値通知書を取得する必要があります。
入札参加資格申請(指名願)との関係
多くの自治体や官公庁の入札参加資格(指名願)の申請・更新には、有効期限内の経審の結果通知書の提出が必須です。有効期限が切れてしまうと、その時点から原則として新たな公共工事の入札に参加できなくなります。
公共工事の受注を継続するためには、この有効期限が切れ目なく続くようにスケジュールを組むことが重要となります。
次期審査に向けた準備のロードマップ
経審の有効期限切れを防ぎ、かつ前回よりも有利な結果(評点アップ)を目指すためには、計画的な準備が不可欠です。次期審査に向けた準備は、大きく分けて決算後すぐの申請準備と評点アップのための事前準備の2段階で進める必要があります。
ステップ1:決算後の速やかな申請準備
次期審査の審査基準日(決算日)を迎えたら、以下の手続きを速やかに行います。
決算後
確定申告の完了
経審の評点計算の基礎となるため、正確かつ速やかに処理。
建設業許可の変更届(決算変更届)の提出
審査基準日(決算日)から4ヶ月以内に、許可行政庁に提出。これが済んでいないと経審の申請ができません。
決算変更届提出後
経営状況分析の申請
登録経営状況分析機関に依頼。「Y点」を算出。最も早く結果が出る部分なので、速やかに行動を開始します。
分析結果受領後
経営事項審査の申請(県の窓口等)
「X1点」「X2点」「Z点」「W点」を算出
申請のポイント
申請の完了までに最低でも3~4ヶ月が要します。有効期限の約半年前には、準備に着手し、有効期限の2ヶ月前には申請を完了させることを目指しましょう。
評点アップ(P点向上)のための準備
経審の有効期限を意識する目的は、P点(総合評定値)を向上させることで、より大きな工事を受注できる「格付け」を得ることが重要です。
P点を構成する要素(経営規模X1、経営状況Y、技術力Z、その他W)を戦略的に強化する必要があります。
経営規模(X1)の対策:完成工事高を上げる
・完成工事高:最も大きな配点を占めます。毎期の工事を適正に計上することが基本です。
・業種ごとのバランス:複数の業種で経審を受ける場合、それぞれの業種でバランス良く実績を積み重ねることが望ましいです。
経営状況(Y)の対策:財務体質の改善
Y点は、「負債抵抗力」「収益性・効率性」などの指標で評価されます。
・純資産額の確保:自己資本比率の向上はY点だけではなく、企業の信用力全体に直結します。過度な借入を抑え、利益を内部留保するなどの対策が必要です。
・欠損の回避:赤字決算がY点を大きく下げます。安定的な収益確保に努めましょう。
技術力(Z)の対策:技術者の確保と資格の取得
・技術職員数と資格:一級・二級の国家資格や監理技術者の人数と保有資格が評価されます。資格取得の奨励や計画的な採用が評点アップに繋がります。
・継続的な学習:技術者のCPD(継続学習制度)への取り組みも加点要素となるため、積極的に活用しましょう。
その他(W)の対策:社会性と信頼性の向上
・法令遵守:労働福祉の状況(雇用保険・健康保険・厚生年金への加入)は、満たしていないと大幅な減点となります。
・ISO認証:ISO認証 9001,14001の取得への取り組みは、加点対象となります。
まとめ
経営事項審査の有効期限は、公共工事受注に影響します。
経審の申請手続きは複雑で、1つでも不備があると審査が大幅に遅れてしまう恐れがあります。特に評点アップを狙うための書類準備や計算は、専門的な知識が必要です。
当事務所では、新規建設業許可申請はもちろん、経営事項審査にまつわるご相談も承ります。お気軽にご相談ください。
「グラス湘南行政書士事務所」