「電気工事業を始めたい」、「建設業許可を持っているが、電気工事の登録も必要なの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
電気工事業を営むにあたり、避けては通れないのが、「登録電気工事業者」と「みなし登録電気工事業者」という区分と、それに伴う手続きです。
今回は、この二つの違いと、それぞれに必要な許可・登録申請について解説します。

電気工事業を営むための基本ルール

電気工事業を営むためには、建設業法と電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)の二つの法律が関わってきます。

建設業許可との関係

電気工事業は、建設業法上の電気工事業に該当します。

・請負金額が500万円以上の電気工事を請け負う場合(または建築一式工事で1,500万円以上の場合)は、建設業許可(電気工事業)が必要です。

・500万円未満の軽微な工事のみを請け負う場合は、建設業許可は不要です。

電気工事業法による登録とは?

しかし、建設業許可を得たとしても、これだけでは電気工事業を営むことはできません。
電気工事の安全性の確保を目的とする電気工事業法に基づき別途、登録または通知の手続きが必要となります。この手続きにより分類されるのが、登録電気工事業者とみなし登録電気工事業者です。

登録電気工事業者とは?

定義と特徴

登録電気工事業者とは、建設業許可(電気工事業)を取得していない事業者が、一般用電気工作物または自家用電気工作物に係る電気工事を営むために、経済産業大臣または都道府県知事の登録を受けた事業者のことです。
主に、小規模な電気工事(請負金額500万円未満の軽微な工事)を専門に行う業者が該当します。
登録の有効期間は5年間で、継続して営業するには更新が必要です。登録には、主任電気工事士の選定や、営業所ごとの器具の備え付けなどが要件となります。必要な申請は登録電気工事業者登録申請となります。

みなし登録電気工事業者とは?

定義と特徴

みなし登録電気工事事業者とは、既に建設業許可(電気工事業)を取得している事業者が、電気工事業法上の手続きを行った事業者のことです。
建設業許可を取得している事業者は、その許可審査の中で、すでに経営能力や技術力が認められているといえます。そのため、電気工事業法上の登録は不要とされ、代わりに通知を行うだけで営業が可能となります。この「登録が不要と見なされる」ことから、みなし登録電気工事業者と呼ばれます。
主に、請負金額500万円以上の工事を請け負う能力を持つ事業者が該当します。建設業許可の有効期間(5年間)と連動します。みなし登録となるためにの要件は、登録電気工事事業者と同様に、主任電気工事士の選任や営業所ごとの器具の備え付けなどが必要です。
必要な申請は、電気工事業開始通知書です。

二つの電気工事業者の違いを比較

項目登録電気工事業者みなし登録電気工事業
建設業許可持っていない持っている
請負上限額500万円未満の軽微な工事のみ上限なし(許可の範囲内)
根拠法電気工事業法による「登録」建設業許可と電気工事業法による「通知」
有効期間経済産業大臣または都道府県知事経済産業大臣または都道府県知事
申請先経済産業大臣または都道府県知事経済産業大臣または都道府県知事
対象業者
軽微な工事を主とする業者
500万円以上の工事も請け負う業者

最も大きな違いは、建設業許可を持っているか否かです。これにより、請け負える工事の規模と、電気工事業法上の手続きが登録となるか通知となるかが変わってきます。

許可・登録申請の具体的なステップ

電気工事業を始めるには、事業計画に合わせて以下のステップを踏む必要があります。

ステップ1:事業計画の確定

500万円以上の工事を請け負うか?

YES→みなし登録を目指します。(建設業許可が必要)
NO→登録電気工事業者を目指します。

ステップ2:必要な資格者の確保と営業所の準備

・主任電気工事士の選任:第一種または第二種電気工事士の免状を保有し、一定の実務経験を持つ者を営業所ごとに配置します。
・検査器具の準備:営業所ごとに絶縁抵抗計、設置抵抗計、回路計などの僅差器具を常備する必要があります。

ステップ3-1:みなし登録電気工事業者となる場合(500万円以上の工事を請け負う場合)

・建設業許可(電気工事業)申請:許可要件を満たし、知事または大臣に申請します。
・建設業許可取得
・電気工事業開始通知書提出:建設業許可取得後、速やかに所管の行政庁に通知書を提出します。

ステップ3-2:登録電気工事業者となる場合(軽微な工事)のみの場合

・登録電気工事業者登録申請:知事または大臣に登録申請を行います。
・登録電気工事業者登録完了

注意点:無登録・無通知でに営業は法令違反です!

建設業許可を持っていても、開始通知を怠ると、電気工事業法違反となります。また、電気工事士の資格を持たない者が、工事を行うことも厳しく禁じられています。法令を遵守した適正な手続きが必要です。

まとめ

登録電気工事業者とみなし登録電気工事業者の違いは、建設業許可の有無であり、これにより請け負える工事の規模と、電気工事業法上の手続きが異なります。
当事務所では、建設業許可申請はもちろん、電気工事業の登録、通知手続きに関する内容も承ります。お気軽にご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所