これから建設業の会社を設立し、事業をスタートさせようとしている方もいらっしゃるでしょうか?
会社設立の段階で、将来の建設業許可取得を見据えた準備をすることは、時間や費用の面で有効といえます。
特に会社設立時に作成する定款は、会社の根本的なルールを定める非常に重要な書類です。この定款に、建設業許可の要件にかかわる事項を適切に記載しておくことが、スムーズな許可取得の鍵となります。
今回は、建設業許可を見据えた、会社設立時の定款に記載すべき事項と、その注意点について解説します。

定款に記載すべき事業目的を網羅せよ!

定款に必ず記載しなければならない事項の一つが事業目的です。これは、会社がどのような事業を行うかを外部に明確に示すものです。建設業許可を取得する上で、この事業目的の記載は特に重要です。

記載のポイント

取得予定の建設業種を具体的に記載する

建設業許可は29の業種に分かれています。将来的に取得を予定している全ての業種を、漏れなく具体的に記載する必要があります。

目的を広めに記載する

将来的に事業を拡大し、新たな業種の許可を取得する可能性を考慮し、現時点では予定がなくても関連する業種や、建設業に付随する業務も併せて記載しておくことをお勧めします。定款変更は手間と費用がかかりますが、設立時に多めに記載しておくことで、追加する手間を省略できます。

「建設業」の文言を含める

目的の最初から最後に建設工事の請負、設計及び施工や総合建設業といった、会社が建設業を営むことが明確にわかる文言を入れておくと、対外的に分かりやすくなります。
ただし、「建設業」と漠然とした記載だけでは、許可申請時にどの業種を行っているのか証明できず、許可行政庁から具体的な記載を求められる場合があります。例えば、「土木工事業」「管工事業」など、許可の看板の名称に合わせて記載しましょう。

資本金の記載と注意点

定款には資本金の額を記載します。この資本金は、建設業許可の要件である財産的基礎・金銭的信用に関わる重要な要素です。

記載のポイント

一般建設業の場合

一般建設業の許可取得にあたり、自己資本が500万円以上などの財産的要件を満たす必要があります。設立時の資本金は、この要件を満たす重要な指標となります。最低でも500万円以上を資本金として設定することをお勧めします。

特定建設業の場合

特定建設業の許可(元請として4,000万円以上の工事を下請に出す場合に必要な許可)を取得する場合、より厳しい財産的要件が求められます。

1.資本金の額が2,000万円以上
2.自己資本の額が4,000万円以上
3.流動比率が75%以上
4.欠損の額が資本金の20%を超えないこと

これらの要件を満たすため、特定建設業を目指す場合は、設立時から資本金を2,000万円以上としておくことが望ましいです。

役員構成に関する規定の注意点

定款に役員個人の氏名や詳細な経歴を記載する必要はありませんが、会社の組織を規定する事項は、将来の許可要件に影響します。

経営管理体制の整備

建設業許可では適切な経営業務の管理責任者または、経営業務を管理する体制が求められます。設立時の役員(取締役)の中に、過去に建設業の経営経験を持つ者がいるか、あるいは将来的に経営体制を確保できるような組織形態にしておく必要があります。

機関設計をシンプルに

許可申請の際、許可行政庁は会社の組織図(機関設計)を確認します。取締役会や監査役などを設置せず、取締役1名などのシンプルな組織形態にしておく方が、許可申請時の提出書類や手続きが簡易化されるのは事実です。

定款作成時の実務上の注意点

株主総会の招集通知期間の短縮

株主総会は事業年度の開始や役員変更など、許可申請に影響する重要事項を決定する場です。定款で招集通知期間を短縮しておくことで、緊急時に迅速な意思決定が可能になり、許可申請の準備をスムーズに進めることができます。

事業年度の決定

特に注意すべき点ということではありませんが、顧問税理士と相談の上、会社の事務処理を考慮して事業年度の決定を行うことが望ましいです。それは、許可申請時の決算期は、財産的要件の判断基準となります。

会社設立は、建設業をスタートさせるためのはじめの一歩といえます。定款作成の段階で、将来的な展望を見据えることで、定款変更等の手続きに要する、時間や費用を削減することに繋がります。
当事務所では、事業計画と将来的な許可取得の目標を聞き取り、それに合致した事業目的、資本金の設定、許可要件を満たすための役員構成や組織設計について、設立前の段階から専門的なアドバイスを提供します。お気軽にご連絡ください。
グラス湘南行政書士事務所