経営事項審査(経審)の中でも特に時間と手間がかかるのが、工事経歴書の作成と、添付資料である請負契約書等の準備ではないでしょうか?
この煩雑な作業が、国土交通省の改正により、コリンズ(CORINS)を利用することで大きく効率化できるようになりました。
今回は、このコリンズ利用による経審書類提出の変更点を、具体的なメリットや注意点と合わせて解説します。
経営事項審査(経審)とは?なぜ工事経歴書が重要なのか?
経営事項審査は、公共工事を請け負おうとする建設業者が必ず受けるべき審査です。この審査の結果と、各自治体などが定め「入札参加資格審査を経て、公共工事の入札に参加できるようになります。
経審の主となる工事経歴書
経審の重要な評価項目の一つが、皆様がこれまで完成させてきた工事の実績です。これを証明するのが、審査基準日直前1年間に完成した全ての工事を記載する工事経歴書です。
完成工事高の算出
過去の工事実績(完成工事高)は、経審の点数(P点)の中でも特に大きな比重を占めます。
添付書類の膨大さ
従来、工事経歴書に記載した請負金額を証明するために、工事請負契約書や変更契約書、注文書などのコピー提出が義務付けられていました。特に請負金額の大きい工事については、その証明書類の量が多くなりがちでした。
コリンズとは?建設業者が活用すべきデータベース
まず、今回の改正のコリンズについて簡単に確認しましょう。
コリンズの概要と利用目的
コリンズは、国土交通省が運営する公共工事の工事実績データベースです。
公共工事を受注した建設業者は、工事の基本情報、請負金額、技術者情報などをコリンズに登録することが義務付けられています。
このシステムに登録された情報は、発注機関が建設業者の工事実績を確認する際に利用されます。
請負金額証明におけるコリンズ利用の改正点
令和5年1月の改正で、工事経歴書に記載する請負金額の証明方法に大きな変更がありました。
請負金額上位3件の証明書類が簡略化
従来の経審では、原則として完成工事高の合計額の上位3件について、その金額を証明する、工事請負契約書や注文書等のコピーの添付が必須でした。
しかし請負金額上位3件について、工事請負契約書や注文書等のコピーに代えて、コリンズからダウンロードした登録内容確認書のコピーを使用することが可能となりました。
契約書添付に代わるコリンズ活用のメリット
この変更がもたらすメリットは、添付書類の簡略化が挙げられます。
①変更契約書の枚数削減
大規模な公共工事では、設計変更や工期延長により、変更契約書が何十枚にもなることがあります。これらの全てをスキャン、コピーして添付するのは手間のかかる作業です。
コリンズの登録内容確認書には、最終的な請負金額が記載されています。これを利用すれば、契約書や変更契約書すべてのコピーに代えて、コリンズからダウンロードした確認書のコピー1枚で済ませることができます。
②準備時間の短縮
過去の契約書を倉庫から探し出し、必要な個所にマーカーで示し、コピーを取るという作業がなくなるため、時間的な短縮に繋がります。
コリンズに登録さえ完了していれば、審査直前でもスムーズに書類準備が進められます。
コリンズ利用時の厳守するべき重要事項
コリンズ利用は便利ですが、審査で問題なく認められるためには、以下の厳守するべき注意点があります。
最終的な請負金額と業種の判断個所を明記
変更契約後の最終的な請負金額を確認できる必要があります。またその工事が、経審を受ける建設業の、どの業種に該当するかが判断できる個所が必要です。
確認書のコピーを添付する際には、最終請負金額や業種が記載されている個所をマーカーで示したり、明記したりするなど、審査官が速やかに確認できるような配慮が求められます。
登録内容の実施と維持
この制度を活用するためには、コリンズへの登録を、正確な最終請負金額で完了させておくことが前提となります。
経審の審査基準日までに工事が完成している場合は、速やかにコリンズの完成時登録を完了させる必要があります。
万一、登録内容に誤りや不足がある場合、コリンズの確認書は利用できず、従来の契約書添付が必要になる可能性がありますので注意が必要です。
まとめ
コリンズの登録内容確認書を利用することで、請負金額上記3件の証明書類が、大量の契約書コピーから1枚の確認書に代わる可能性があります。これは、準備時間の短縮、人件費削減に繋がります。
経審の準備は非常に複雑です。ご不明な点、コリンズの活用方法に関するご相談などございましたら当事務所へご連絡ください。適切な準備で、評価点アップに繋がるサポートをさせて頂きます。
「グラス湘南行政書士事務所」