建設業許可は全部で29業種あり、機械器具設置工事はどのような工事が当てはまるのでしょうか?
今回は、機械器具工事が対象とする工事の定義と、他業種との決定的な境界線を明確に解説します。
機械器具設置工事とは?対象の工事の範囲と28業種との境界
建設業許可における機械器具設置工事とは、プラントや工場、各種施設などに特定の機械や設備を一体的に据え付け、組み立てる工事を指します。
この業種の対象とする工事は多岐にわたりますが、共通しているのは、その設備が施設や生産ラインの主となる機能を持つ点です。例えば以下のような工事が該当します。
プラント設備工事
化学工場、石油精製施設、製鉄所などの大型プラントにおける各種生産設備の据え付け、配管、組み立て。
各種生産機械の設置
製造工場における大型工作機械、プレス機などの据え付け。
立体駐車場装置の設置工事
機械式の立体駐車場の組立・設置。
昇降機等設置工事
エレベーター、エスカレーター、ダム堰の開閉設備などの設置。
集塵設備工事
大規模な集塵装置の設置。
他の28業種に当てはまらない工事が機械器具設置工事なの?
建設業許可は29の業種に分かれていますが、機械器具設置工事は、これらの他の28業種に該当しないもの、または複数の専門工事が複合的に絡み合い、その全体が機械器具の設置という主たる目的に集約される場合に適用されます。
電気工事、管工事、水道施設工事、清掃施設工事などとの関係
機械器具設置工事では、プラントや機械を稼働させるために、電気動力、水(冷却供給)、熱・火(ボイラー・燃焼炉)、エアー(圧縮機・空調)など、様々な要素が必要となります。これらの設備を設置する際、それぞれの専門工事(電気工事、管工事など)が含まれますが、それらは全て主である機械器具を設置し、稼働させるという目的のために一連の工事として、機械器具設置工事の許可で一括して請け負うことが可能です。
ポイントとしては、個々の専門工事(電気配線や配管)が主たる目的ではなく、複合的な機械設備全体を完成させることが主たる目的である点です。一方、動力線の引込みや給排水管の設置のみであれば、それぞれの専門工事の許可が必要になります。機械器具設置工事は、これらの全てが主となる工事が重なり合った、複合的な設置工事を包括的に請け負う為の許可といえます。
特に混同しやすい「とび・土工工事」との違い
機械器具を据え付ける際、重機による運搬や、アンカーボルトの埋め込み、基礎となるコンクリート工事が伴います。この部分が「とび・土工工事・コンクリート工事」と混同されやすい点です。
「とび・土工工事」のイメージ
・基礎工事や杭打ち、地盤改良など、建物の土台となる部分の工事。
・機械器具の運搬や仮設、足場の設置など、あくまで補助的な作業。
「機械器具設置工事」のイメージ
・据え付けられる機械器具本体の組み立て、調整、試運転までを含めた一連の設置作業。
・重機を使って行うアンカー設置も、機械本体を固定し、一体化させるという最終的な機械の機能実現を目的としているため、機械器具設置工事の一環と見なされます。
つまり、その作業が機械そのものを動く状態にするための作業であれば機械器具設置工事であり、建物や構造物の土台を造るための作業であれば、とび・土工工事という線引きになります。
工場全体の主となるものを設置する工事
機械器具設置工事で請け負う設備の多くは、その施設(工場、プラントなど)の生産性や機能を決定づける最重要部分です。
例えば、自動車工場の大型プレスライン、食品工場のメインの加熱殺菌ライン、製鉄所の溶鉱炉などが該当します。これらの設備を設置することは、建物を建てること以上に、その施設の存在意義を確立する行為であり、高度な専門性と複合的な技術を要求されます。
神奈川県の建設業許可申請における重要事項
機械器具設置工事の申請は必ず行政庁へ事前相談を!
建設業許可を申請する際、特に機械器具設置工事のような、他の業種との境界が曖昧になりやすい業種については、その工事内容が本当にこの業種に該当するのかどうかを慎重に判断する必要があります。
特に神奈川県において、機械器具設置工事で新規や業種追加の申請を行う場合は、申請を行う前に、必ず建設業担当窓口に連絡(事前相談)をしてから申請する必要があります。
これは、工事内容の複合性から、判断に迷うケースが多いため、許可の要件を満たす工事実績であるか、技術者の要件が適切であるかなどを、行政側と事前に確認し合うための重要な手続きです。
事前相談をせずに申請し、業種区分が不適当であると判断された場合、申請が遅延したり、最悪の場合は不許可となるリスクがあります。申請前に、図面や契約書などの資料を準備することが、スムーズな許可取得へと繋がります。
下記のようなケースは当事務所へ、ぜひご相談ください。
・過去の工事実績が、「とび・土工」と「機械器具設備」のどちらに該当するか判断が難しい場合。
・電気、管、機械など複数の要素が絡み合う、複雑な工事を請け負う予定の場合。
「グラス湘南行政書士事務所」