不動産取引において、最も繊細かつ重要な事項として事故物件に関する告示義務があります。
毎年初夏になるとテレビの特番で怖い物語が始まりますが、事故物件はよく使われる舞台で定番といえるのではないでしょうか。
お化けを信じる、信じないは別としてそれだけ事故物件は人の目にとって恐怖や嫌悪を感じる表れともいえます。
宅建業者としてこの問題に直面した場合、法的基準だけではなく本質的な心理を理解する必要があります。
今回は、番外編として心理的瑕疵とあわせて、不動産取引の根幹となる契約不適合責任について触れていきます。

死そのものよりも死にかたへの恐怖

人が亡くなった事実そのものよりも、どのように亡くなったのかという「死にかた」に対して強い恐怖や嫌悪を抱くという性質を持っているのではないでしょうか。

自然死と心理的瑕疵担保

高齢の方が自宅で亡くなる、いわゆる自然死は多くの購入者や賃借人にとって心理的な瑕疵とは捉えられません。「安らかにお眠り下さい」というフレーズがある通り生人(いきびと)が故人の死を受け入れていることの表れでもあり、ここに嫌悪感を感じる人は少ないのではないでしょうか。
歴史上の人物についても同じことがいえます。城巡りなど亡き武将が活躍した場所を巡る行為は恐怖や嫌悪を感じるものではありません。

死にかたへの恐怖

一方で、他殺や自殺、孤独死のなかで著しい汚損がある場合などは、話が変わってきます。ここでは、死そのものへの恐怖というよりも、事件性や異常な状況で亡くなっているという死にかたや死が突然訪れたことへの想像力が、心理的な忌避感を引き起こします。
本人が死を受け入れられずに死んでいった、いわゆる仏教でいう成仏していない状態です。魂が生前の未練から解放されず、化けて出てくるのではないか・・
人の死、そのものよりも、その事案が抱える背景や状況に対する嫌悪感こそが、心理的瑕疵の根源といえるのではないでしょうか。

契約不適合責任との違い

不動産取引には物理的な欠陥等に関する契約不適合責任という重要な概念があります。心理的瑕疵担保との違いを理解しておくことが必要です。

契約不適合責任とは?

売買の目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容と適合しないものである場合に、売主が負う責任です。
具体的には、以下のようなケースが該当します。

・物理的な瑕疵:雨漏り、シロアリ被害、配管の故障、土壌汚染など。
・権利上の瑕疵:抵当権がついたままになっている、隣地との境界が確定していないなど。

買主が追及できる権利

契約の内容と適合しない場合、買主は以下の権利を行使できます。

・追完請求:修補(修理)の請求、代物請求、不足分引渡し請求。
・代金減額請求:補修されない場合の代金減額。
・契約解除:目的を達成できない場合の契約の取消し。
・損害賠償請求:債務不履行に基づく損害賠償。

心理的瑕疵担保と契約不適合責任の決定的な違いは、物理的な損傷があるか否かです。物理的な損傷がある場合は契約不適合として、ない場合は心理的瑕疵として、それぞれ法的なアプローチや告知の考え方が異なることを認識しておく必要があります。

心理的瑕疵の告示義務はいつまで続くのか?

この問題は、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」により一定の目安が示されています。
賃貸借契約の場合、概ね3年間が目安です。よく事件後、一度入居すれば告示義務はなくなるという考えがありますが、ガイドラインではそのような文言はありません。またガイドライン上の3年が経過していても、告示が必要な状況もありますので、あくまで目安として捉える必要があります。
売買契約の場合は期間の定めはありません。いつまでも告知義務が残る可能性があると考え、慎重な判断が必要です。

まとめ

心理的瑕疵や契約不適合責任の判断は、後に深刻な訴訟トラブルへと発展する可能性があります。
もう告知しなくてもよいだろう・・
多少の瑕疵だから説明しなくてよいだろう・・
このような考えは宅建業法の告示義務違反に該当します。
これらの基準を正しく理解し、透明性の高い取引を行うことが、結果としてお客様からの厚い信頼に繋がります。
当事務所では、宅建業免許の申請を承っています。不安な点がございましたらお気軽にご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所