近年、建設業界は、労働人口の減少、高齢化、そして長年の慣行による長時間労働といった、深刻な課題に直面しています。この状況を解決するべく、業界を持続可能なものにするため、国は法制度の根本的な見直しを行っています。
ここ数年、建設業の改正が相次いで進むなか、特に注目すべきは現場で働く技能者の処遇改善といえます。その取り締まりを行うのが「建設Gメン」の存在です。
今回は、改正法の核心である処遇改善の内容と、取り締まりの強化を担う建設Gメンの役割について、知っておくべきポイントについて解説します。

なぜ処遇改善が建設業の最重要課題なのか?

改善処遇とは、簡単にいうと建設技能者の賃金引上げ、社会保険への加入徹底や働きやすい労働環境の実現を目指す取り組みのことです。処遇改善が必要な具体的理由として主に3つ挙げられます。

深刻な人手不足の解消

建設業は昨今、熟練技能者の大量引退が問題視されています。この問題により人手不足はさらに深刻化する懸念があります。魅力的な処遇改善は、担い手の確保や育成に直結するといえます。

公平な競争環境の確立

適正なコストが反映されず、不当に安い請負代金での契約は下請、孫請業者などにしわ寄せが及び、結果的に現場で働く技能者の賃金が削られてしまうことに繋がります。改正法は、こうした不公平な取引慣行を是正することを、目的としています。

2024年4月からの労働時間規制(残業上限規制)への対応

2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が本格的に適用されました。工期にゆとりを持ち、適正な労働費を確保しなければ、この法規制を遵守することは困難です。処遇改善は働き方改革の土台でもあります。

改正建設業法が定める処遇改善の具体的措置

改正建設業法では、主に以下の3つの側面から、処遇改善に努めるものとしています。

建設業者の「努力義務」の明記と「責務」の強化

改正法により、建設業者には労働者の処遇改善に向けた取り組みを行う、努力義務が明確に課されました。具体的には適正な賃金水準の確保、社会保険等への加入促進、技能の向上及び評価に関する措置といった取り組みが求められます。
国は、これらの取り組みについて調査・公表を行う仕組みを導入し、業界全体の意識向上と競争原理の活用を図っています。

労務費の基準(標準労働費)の設定と活用

技能者の適正な賃金水準の確保のため、国は中央建設業審議会において、工事の種別ごとに必要な労働費の基準(標準労働費)を設置し、公表します。
この標準労働費は、請負契約における労働費の目安として機能し元請、下請間の価格交渉の基準となります。
受注者は、この標準労働費を著しく下回る労働費となる見積書の提出が禁止されます。また注文者(発注者)も、標準労働費を著しく下回る見積変更(値引き)を依頼することが禁止されます。

不当に低い請負代金禁止の厳格化

従来の建設業法でも、不当に低い請負代金での契約は禁止されていましたが、改正法では、労務費の視点から、この規定をさらに厳格化します。資材高騰時などに、そのしわ寄せが労務費に及ぶことを防ぎ、適正な利益と賃金原資を確保することを義務付けます。

労働費の減資を排除し、原資を守ろう!

処遇改善の実効するための建設Gメンとは?

建設Gメンとは、建設業法等の法令遵守を徹底するために、現場や事務所へ実地調査を行う国土交通省の職員のことです。
建設Gメンの主な任務は、改正法の定める処遇改善が、遵守されているかを徹底的にチェックすることにあります。

不適正な取引実態の調査

以下の点について、元請、下請業者双方に対し契約書、見積書、発注書の控え、賃金台帳、銀行振込データなどを突き合わせ実態を調査します。

・標準労働費を下回る水準での契約の有無
・資材高騰分が適正に価格転嫁されているか
・契約変更(値引き)強要の有無

工期の適正化調査

長時間労働の原因となる、不適正な工期設定が行われていないか、法定労働時間の遵守を前提とした工期となっているかを調査します。

指導、勧告、公表

建設Gメンは違反が確認された場合、その事業に対して改善指導を行います。悪質なケースや指導に従わない場合は、国土交通大臣が勧告や企業名の公表といった厳しい措置をとります。
建設Gメンの調査は、行政監査という認識を持ち、常に法令遵守を徹底しておく必要があります。

建設業者が取り組むべき対策とは?

契約書類と帳簿の整備・管理の徹底

建設Gメンの調査では、契約書類や賃金台帳が最も重要な証拠となります。

・見積書に労働費が適正に計上されている根拠を明記する。
・請負契約書だけではなく、発注書・請書なども正確に保管する。
・下請け会社からの請求書や支払明細が、適正な労働費を含んでいるか確認する。

適正な価格交渉の実施

標準労働費や昨今の物価高を反映した、適正な価格交渉を元請、下請業者双方と行う体制を構築することが肝要です。

まとめ

改正法は非常に複雑であり、法律の解釈や運用には専門的な知識が必要です。
建設業許可を取り扱う、当事務所では以下の内容を承ります。

・法令を遵守した契約書の作成・見直し
・建設業許可取得はもちろん、維持に必要な帳簿書類の指導
・建設Gメンの調査への対応準備

事業を安定させるためのサポートを提供いたします。お気軽にご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所