近年、建設業界では人手不足が深刻な経営課題となっています。熟練技能者の高齢化と若年層の入職者減少により、事業維持が困難な状況に置かれている方もいらっしゃいます。
このような状況に対応するべく、日本の産業を支える人材を確保するために、2019年4月より導入された在留資格が特定技能制度です。
特定技能制度は、生産性の向上や、国内人材の確保のための取り組みを行ってもなお、人材を確保することが困難な産業分野において、一定の専門技術を持つ外国人材を受け入れるための制度です。
建設業は、特定技能の対象となる12分野の内の一つです。この制度の活用は、事業の継続と発展において非常に重要といえます。
建設業における特定技能制度の役割と目的
建設業における特定技能制度の主な目的は、即戦力となる外国人材を確保し、業界の人手不足の解消を図ることにあります。
建設分野で特定技能外国人を受け入れるにあたっては、どのような業務に従事できるか明確に定められています。それは、国土交通省が定める告示と、在留資格取得の要件となる建設技能評価試験の区分です。
特定技能外国人が従事できる業務
特定技能外国人が建設現場で従事できる業務の範囲は、18業務の建設技能評価試験の区分に対応して定められています。これは、技能実習制度における移行対象職種と概ね一致しており、日本の多様な建設分野をカバーしているといえます。
この18業務区分のいずれかの試験に合格した者、または対応する技能実習2号を修了した者が、特定技能1号の在留資格を得ることができます。
特定技能1号と特定技能2号の違い
特定技能制度には1号と2号があり、それぞれの要件が異なります。
特定技能1号
特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を有する技能を持つ在留資格です。
在留期間:上限5年(通算)
家族の帯同:原則として認められない
求めたれる水準:技能については18の業務区分に対応する建設技能評価試験等に合格、または技能実習2号を修了していることが必要です。また日本語においてもN4相当以上の日本語能力試験に合格していることが必要です。このN4とは、基本的な日常生活上の日本語を理解できるレベルとされています。
特定技能1号は、日本の現場で経験を積み、技能を磨くための入口に位置づけられています。
特定技能2号
特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する外国人向けの在留資格です。
建設業における特定技能2号は、2023年6月に全ての18の業務区分に対象が拡大されました。これにより、優秀な外国人材の長期的な定着が期待されています。
在留期間:上限なし(在留期間更新が可能で、事実上の永住も可能性としてあります。)
家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者、子)
求められる水準:技能については特定技能2号にかかわる試験に合格し、熟練した技能を有すること。具体的には、建設キャリアアップシステムの能力評価基準でレベル3以上の技能水準が求められます。
特定技能2号は、企業にとって長期的な事業計画の中核を担う熟練技能者として迎え入れることができる、非常に価値の高い在留資格といえます。
特定技能外国人の受け入れの条件と手続き
特定技能外国人を受け入れるためには、受け入れる企業側にも、外国人材が安定して働ける環境を整備するためのいくつかの義務が課せられます。
企業側の主な条件
1.適正な労働条件の確保
外国人に対して、日本人と同等以上の報酬を支払い、労働条件が適正であること。
2.建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用
国土交通省の告示により、受け入れ企業はCCUSに登録し、特定技能外国人にもCCUSへの登録を義務付ける必要があります。これは外国人材の技能習熟度や就労実績を適正に評価するための必須要件です。
3.支援計画の実施
特定技能外国人が日本で安定して活動できるよう、日常生活や職業に関する支援を行う必要があります。この支援は、自社で行うか、または登録支援機関に委託することができます。
4.その他建設業法の遵守
建設業許可を有していることなど、建設業法関係の要件も満たす必要があります。
申請手続きの流れ(概要)
1.採用活動
技能評価試験合格者や技能実習修了者などを採用します。
2.支援体制の構築
自社支援または登録支援機関へ委託します。
3.CCUSへの登録
企業、外国人ともにCCUSへ登録します。
4.在留資格認定証明書交付申請
外国人本人に代わって、出入国在留管理局に申請を行います。
5.入国・就労
認定証明書が交付され次第、外国人が来日し、雇用契約に基づき就労を開始します。
特定技能制度を活用するメリット
この制度を正しく活用することによって、以下のメリットが挙げられます。
メリット1:即戦力の確保
試験や技能実習で技能が確認された人材は、比較的短い期間で現場の戦力となります。
メリット2:長期的な人材育成
特定技能2号への移行が可能となったことで、優秀な外国人材を長期雇用、育成し、ベテランとして現場を牽引してもらうことが期待できます。
メリット3:経営の安定化
人手不足の解消は、工事の受注機会の増加と、事業の継続性の確保に直結します。
特定技能制度の手続きは、建設業法、入管法、労働法など様々な法令が絡み合い、非常に複雑です。申請書類の不備は、審査の長期化や不許可に繋がる恐れがあります。
「特定技能制度を活用したいけど手続きに不安がある」
「CCUSへの対応も含めて専門家のアドバイスが欲しい」など、お悩みの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。
「グラス湘南行政書士事務所」