「単価契約」という言葉を聞いたことがある方も、いらっしゃるでしょうか?

単価契約とは、どのような契約形態で請負契約と、どう違うのでしょうか?また近年問題視されている「偽装請負」と混同されやすい点もあります。
今回は、建設業における単価契約の基本的な定義と、請負契約との明確な違いについて解説します。

(1) 建設業における単価契約とは?

建設業における単価契約とは、工事の具体的な内容や数量が契約時点で確定していない場合や、繰り返し発生する軽微な工事・補修工事などにおいて、あらかじめ個々の材料や作業、単位あたりの単価(価格)だけを取り決めておく契約形態のことをいいます。
この契約自体は、全体の工事を確定させるものではなく、あくまでも単価の基準を設定するものです。

単価契約の主な特徴

単価の事前確定

契約書で「○○一式あたり○○円」や「1平方メートルあたり○○円」のように、作業や材料の単価が定められています。

数量の変動

実際の工事の進行に伴って、使用する材料の数量や作業量が変動します。

都度発注・精算

発注の作業指示が出た後、最終的な出来高(単価×数量)で工事代金が確定し、精算されます。
単価契約は、大規模な新築工事よりも、プラントの保守管理、道路やインフラ設備の維持・補修、定期的なメンテナンス工事など、継続性・反復性があり、かつ突発的な需要に対応しなければならない場面で特に活用されます。

(2) 単価契約と請負契約との違いは?

原則として、建設業における契約の形態は請負契約です。そのなかでも一般的なのは、工事の全体を請け負い、契約締結時に最終的な工事代金(総価)を取り決める総価契約です。
単価契約は、この総価契約とは性質が異なります。

項目単価契約請負契約(総価契約)
契約金額単価のみを定める。総額は工事完了後に確定。総額を定める。
数量・範囲契約時点では未確定または変動的。契約時点で確定していることが多い。
適用範囲保守・修繕、継続的な軽微な工事、突発的な工事。新築、大規模な改修・リフォームなど。
リスク発注者側は総額予算オーバーのリスクがある。請負側は見積の数量ミスによる損失リスク。
柔軟性数量変動に柔軟な対応がしやすい。数量変動には都度、変更契約が必要。

請負契約である点においては、単価契約も総価契約も同じですが、単価契約は総額が未確定の状態であるため、特に発注者側は予算の管理に注意が必要です。しかし、急な補修作業などには、迅速に対応できるメリットがあります。

(3) 建設業上の注意点

単価契約であっても、それが請負契約である限り、建設業法の適用を受けます。
建設業法第19条では、請負契約の当事者は、契約締結に際して、一定の事項を記載した書面を交付しなければならないと定められています。

(建設工事の請負契約の内容)

第19条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

単位契約の場合、当初は総額が確定していなくても、以下の事項は必ず明記しなければなりません。
・請負代金の額(単価とその積算根拠)
・工事内容
・工期
・支払い方法
・損害賠償、天災等の不可抗力による損害負担方法
・その他国土交通省令で定める事項

単価のみを定めた契約書であっても、これらの法定記載事項を省略することはできません。

(4) 単価契約と偽装請負との違いは何?

ここが単価契約をめぐる最大の論点といえます。単価契約が、労働法の規制を逃れるための偽装請負の手段として用いられるケースがあります。

偽装請負とは?

偽装請負とは、形式的に「請負契約」や「業務委託契約」という名目で、実態としては発注者(元請)が受注者(下請や協力会社)の労働者に対して、直接的な指揮命令を行っている状態のことをいいます。
これは、労働者派遣事業の許可を得ていない違法な労働者供給事業と見なされ、職業安定法や労働者派遣法に違反する行為となります。

単価契約が偽装請負と疑われるケースは?

単価契約は、特に補修・メンテナンスの現場で活用されるため、元請の作業管理と下請の作業員が、密接に関わる状況が生じやすいといえます。
単価契約は、あくまで出来高に対して支払いを行う請負の一種であり、作業員の労働時間や労働力の提供に対して、支払いを行う雇用契約や派遣契約とは根本的に異なります。
単価契約で仕事を発注する場合でも、下請の作業員に対しては、具体的な作業方法や手順など、業務遂行に関する直接的な指示命令を行ってはいけません。指示はあくまで、「○○を完成させる」という完成物の仕様や品質に関するものに留める必要があります。

偽装請負のリスク

偽装請負が発覚した場合、発注者・受注者双方に以下の重大なリスクがあります。
1.法令違反:職業安定法などの罰則の対象となる場合がある。
2.社会保険・税金:労働者に対する社会保険や源泉所得税の未加入・未納付が問題となり、追徴税などのリスクを負う。
3.信用失墜:会社のイメージが著しく低下し、今後の事業継続に影響を及ぼす恐れがある。

まとめ

単価契約は、建設業において柔軟かつ効率的に業務を進めるための有効な契約形態といえます。しかし、この分かりづらさから、法律上の区分を曖昧にしてしまいがちです。
単価契約は請負契約であることを常に意識し、その実態が労働者派遣や雇用契約にならないよう、請負人としての独立性を確保することが肝要です。
当事務所では建設業許可申請や、許可に関するご相談を承ります。お気軽にご連絡ください。

グラス湘南行政書士事務所