建設業許可の新規取得や更新には「人」の要件があります。そのなかで特に誤解されやすいのが、会社法上の役員と、建設業法で求められる常勤役員等(経管)の違いです。
今回は、建設業許可を取り扱う行政書士が、通常の役員と常勤役員等(経管)の決定的な違いについて、実務的なポイントを解説します。
通常役員と常勤役員等(経管)は何が違うの?
通常の役員
株式会社であれば取締役、執行役などを指します。会社経営の意思決定を行う立場の人です。建設業許可においては、欠格要件(法律違反をしていないか等)の対象者となりますが、必ずしも建設業の経営経験は問われません。
常勤役員等(経管)
建設業許可を受けるために主たる営業所(本店など)に必ず一人置かなければならない、建設業の経営に精通した責任者のことです。令和2年の法改正により、名称が経営業務管理責任者から常勤役員等へと変わりました。
常勤役員等(経管)に求められる3つの絶対条件
通常の役員であれば名前が登記されているだけで十分ですが、常勤役員等(経管)になるためには以下の3つのハードルを全てクリアする必要があります。
➀常勤であること
他の会社の役員を兼任していたり、とても通える範囲内とはいえない遠方に住んでいたりする場合、常勤性が認められないことがあります。
確認書類の例
資格確認証(事業所名が記載されているもの)、住民票など。
注意点
資格確認書等では事業所名が確認できるものである必要があります。事業所名が確認できない場合は、別途社会保険の加入状況を証明する書類が必要になります。
➁役員としての経験があること
経営者(取締役)などとしての経験を求められます。
原則
建設業の経営経験が5年以上あること。
改正後の特例
建設業の経営経験が2年以上あり、かつそれ以前に他業種での経営経験を含めて合計5年以上ある場合なども、適切な補助者を置くことで認められるケースがあります。
➂建設業の経験であること
過去に経営していた会社が建設業を営んでいたことを客観的に証明しなければなりません。
証明資料
過去5年分(または6年分)の確定申告書、注文書、請書、請求書など。
通常の役員と常勤役員等(経管)の比較表
| 項目 | 通常の役員(取締役など) | 常勤役員等(経管) |
| 主な役割 | 会社経営の意思決定 | 建設業の経営業務の管理・執行 |
| 常勤性の要件 | 非常勤でも可(登記されていること) | 原則、常勤必須 |
| 経営経験 | 不問 | 建設業での5年以上の経験(原則) |
| 欠格要件 | 対象となる | 対象となる |
| 社会保険 | 加入が望ましい(役員報酬による) | 健康保険等の加入が必須 |
なぜ常勤役員等の要件はこれほど厳しいの?
建設業は、一件あたりの契約金額が大きく、下請保護や近隣住民の安全確保など、社会的責任が非常に重い業種です。そのため、適切な経営体制が整っていない会社には、許可を与えないというスタンスが取られています。
特に、令和6年から本格始動した働き方改革に伴う残業代上限規制や、建設資材の高騰、社会保険加入の徹底など、建設業を取り巻く環境は厳しさを増しています。こうした変化に対応できる経営能力を証明するのが、この経管というポストなのです。
申請時の注意ポイントは?
神奈川県をはじめ、各自治体での申請において、特につまずきやすいポイントを挙げます。
経営の証明は連続性が重要
例えば、過去に役員を3年経験し、1年休んで、また2年経験したという場合、その合計で5年以上を証明する必要があります。この1年の空白の間に何をしていたか、その前後で建設業の実績が継続しているかを、契約書等でシビアにチェックされます。
なお、東京都など一部地域では、実務経験の証明において3ヶ月以上の空白を認めない独自の運用(3ヶ月ルール)があるため、他県での実績を引き継ぐ際は注意が必要です。
電子申請(JCIP)への対応
現在は、建設業許可も電子申請(JCIP)が推奨されています。紙ベースでの申請とは添付書類のルールが微妙に異なるため、常勤性を証明する資料のデータ化も計画的に進める必要があります。
下請代金の支払いルール
常勤役員等(経管)は、適正な契約締結の責任者でもあります。特定建設業許可を取得している場合、下請代金の支払期日や、特定下請代金の金額(一般は5,000万円、特定は8,000万円など)といった法改正の内容も把握しておく必要があります。
まとめ
常勤役員等(経管)は、建設業許可における肝といえます。万が一、常勤役員等が退職したり、亡くなったりして不在になった場合、代わりの人がすぐにいなければ、その瞬間に許可は失効してしまいます。
通常の役員のなかから、将来の経管候補を準備しておくといった、長期的なビジョンを持った経営が不可欠です。
少しでも不安に思われたら、当事務所へお気軽にご連絡ください。現状の確認と、将来を見据えた体制づくりをサポートいたします。
「グラス湘南行政書士事務所」