個人事業主から法人成りは、事業規模を拡大する一つの機会といえます。
しかし、産業廃棄物収集運搬業を営んでいる場合、避けて通れないのが許可証の取り扱いです。
個人で取得した許可があるからといって、会社にしてもそのまま使えるわけではありません。
そこには思わぬ落とし穴や、無許可営業となってしまうリスクがありますので注意が必要です。
今回は、神奈川県内を中心に産廃業、建設業を取り扱う行政書士の視点から、法人化の際の産廃許可の手続きと注意点を解説します。
個人の産廃許可は法人に引き継げない?
結論からいうと、個人事業主として取得した産業廃棄物収集運搬業の許可は、法人にそのまま引き継ぐことはできません。
産廃許可は、その人またはその法人に対して与えられるものです。法律上、個人と法人は全く別の人格として扱われます。そのため個人から法人へ組織変更する場合、これまでの許可は一度廃止し、法人として改めて新規許可を取得し直す必要があります。
一部の自治体では事業承継の認可制度がありますが、一般的な個人からの法人成りにおいては、新規申請として扱うのが実務上の通例です。
空白期間を作らないためのスケジュール管理
法人成りにおいて最も注意するべきは、個人許可の有効期限と法人許可の取得時期のズレです。
法人の新規申請をしてから許可が下りるまで、神奈川県および各政令市では、通常2ヶ月程度の審査期間がかかります。このスケジュールを読み間違えると、以下のような事態を招きかねません。
個人事業を廃業した状態で法人の許可がまだ下りていない。
その間、1日も収集運搬業務ができない。
これらを防ぐためには、法人の設立登記が完了したら速やかに新規申請を行い、法人の許可が下りるまでは、個人としての許可を維持し、個人事業主として業務を継続するという並行期間を設けるのが鉄則です。
法人での新規申請における3つのチェックポイント
法人で申請し直す際、特に以下の3点に注意が必要です。
①役員の講習会修了証
個人のときは事業主本人が講習を受けていれば済みましたが、法人の場合は取締役などの役員または政令で定める使用人が講習会を修了している必要があります。個人事業主本人が代表取締役に就任する場合は、その修了証がそのまま使えます。
②定款の事業目的
法人の履歴事項全部証明書の事業目的に、産廃業を行う旨の記載が必須です。
事業目的の記載例としては「産業廃棄物の収集、運搬及び処理業」などの文言が入っていないと、そもそも申請が受理されません。設立時の定款作成段階で必ず確認しておきましょう。
③経理的基礎(財務状況)
新設法人の場合、当然ながら直近3期分の決算書が存在しません。その代わりに、開始貸借対照表や今後3年間の収支計画書の提出が求められます。
資本金の額が極端に低かったり、個人の確定申告状況が芳しくなかったりすると、追加で診断書が必要になるケースもあります。
神奈川県特有の注意点
神奈川県で産廃業を営む場合、他県にはない複雑さがあります。それは窓口の多さが挙げられます。
神奈川県知事の許可だけではなく、以下の政令指定都市内で積込み、荷降ろしを行う場合は、各市の許可が必要になります。
・横浜市
・川崎市
・相模原市
・横須賀市
個人から法人に切り替える際、これら全ての自治体に対して、それぞれ新規申請を行う必要があります。申請手数料(新規81,000円)も自治体分だけ発生するため、コスト面での準備も欠かせません。
手続きをスムーズに進めるための流れ
一般的な法人成りの手続きフローは以下の通りです。
①法人設立:定款の事業目的に注意。
②法人の許可申請:神奈川県や各政令市へ。
③審査期間:約2ヶ月(この間は個人許可で業務継続)。
④法人許可の取得:許可証が届いたら法人名義での営業開始。
⑤個人許可の廃止届:法人の許可取得後、10日以内に提出。
⑥車両の名義変更、表示変更:車両の所有者を法人名義にし、車体の社名表記も書き換えます。
まとめ
法人成りの動機は様々ですが、産廃許可の切り替えは手続きの中でも複雑な部類に入ります。万が一、法人の新規申請が不許可になったり、許可の空白期間を作ってしまったりすると、会社としての信用に影響してしまいます。
当事務所では、神奈川県内の各自治体への申請を熟知しており、設立から許可取得までワンストップでサポートしております。
少しでも許可申請にお悩みがあれば、お気軽にご連絡ください。
「グラス湘南行政書士事務所」