宅地建物取引業(宅建業)を営む個人事業主の方にとって、事業拡大や節税を目的とした法人成りは大きな節目といえます。
しかし宅建業免許においては、個人から法人へ事業主体が変わる場合、組織変更の手続きではなく、新規の免許申請が必要となります。
今回は、個人事業主が法人成りする際に押さえておくべき注意点と免許取得までの流れを解説します。
免許の書換えでは新規申請なの?
宅建業免許は、免許を受けた個人または法人に対して与えられるものです。
そのため、法人の代表者が個人事業主本人であっても、法律上は全く別の事業者として扱われます。
個人の免許
法人設立と同時に廃業届を提出し、失効させます。
法人の免許
設立した法人名義で、一から免許を申請します。
したがって、法人設立が完了したからといって、個人の免許をそのまま引き継ぐことはできません。この空白期間をいかに短くするかが、業務を止めないための鍵となります。
法人成りにおける注意点
法人成りを成功させるために、特に注意するべき点が3つあります。
➀宅建業法上の専任の宅地建物取引士
法人で宅建業を行うには、事務所ごとに専任の宅建士の設置が義務付けられています。個人事業主本人が引き続き専任の宅建士となる場合、法人の役員(または従業員)として常勤している必要があります。
➁営業保証金の供託について
新規免許申請の際には、営業保証金(1,000万円)の供託、または宅地建物取引業保証協会への加入(弁済業務保証金分担金の納付)が必要です。
➂欠格要件に該当していないことの証明
法人の履歴事項全部証明書や役員の住民票など、求められる書類が個人とは異なります。特に役員全員の誓約書や身分証明書など、法人の役員全員に対する審査が行われるため、書類収集には余裕を持って臨みましょう。
法人成り・免許取得のステップ
スムーズな移行のために、以下のスケジュールを意識して下さい。
| 手順 | 概要 | 内容 |
| ステップ1 | 法人設立準備 | 定款の目的欄に「宅地建物取引業」が含まれていることを確認する。 |
| ステップ2 | 法人設立登記 | 当期完了後に登記事項証明書を取得する。 |
| ステップ3 | 事務所の準備 | 独立した事務所としての要件(出入口の区分、事務スペース等)を満たす。 |
| ステップ4 | 免許申請 | 管轄の都道府県庁(または国土交通省)へ新規申請書を提出する。 |
| ステップ5 | 審査と免許証交付 | 標準審査期間(概ね30日~40日程度)を経て、免許証が交付される。 |
| ステップ6 | 保証協会への加入 | 免許交付後に保証協会での手続きを完了させる。 |
法人としての免許が下りるまでは、法人名義で宅建業を行うことはできません。
営業の空白期間を避けるために
多くのご相談で懸念されるのが個人の廃業から法人の免許取得までの空白期間です。
理想的な流れは、法人の免許が交付された時点で、個人の廃業届を提出することです。免許交付前にお客様との媒介契約を法人で締結してしまわないよう、コンプライアンスには細心の注意を払う必要があります。
また、管理受託物件などの既存の契約がある場合、契約主体の変更が必要になります。この調整は、法人設立登記の前から準備を進めておくのが賢明です。
まとめ
法人成りは、更なる事業拡大の機会といえます。しかし、宅建業免許は消費者保護を目的とした厳しい規制下にあります。手続きの不備や、無免許営業とみなされるような事態は、その後の信用に大きく影響します。
不明な点や書類作成に不安のある方は、当事務所へお気軽にご相談ください。
一つひとつの要件を確実にクリアし、円滑な許可取得を目指しましょう。
「グラス湘南行政書士事務所」