建設業の現場で、注文書と請書だけ交わし、詳細は後で決めよう、といった口約束や簡略化された契約が珍しくありません。しかし、建設業法において、請負契約は非常に厳格なルールが定められています。ルールを無視すると、行政処分の対象になるだけではなく、万が一のトラブルの際に会社を守ることができなくなります。
今回は、建設業法第19条に基づいた請負契約の必須項目と、実務上の注意点を解説します。
書面で交わさなければならない理由
建設業法第18条では、建設工事の請負契約の当事者は、対等の立場における合意に基づいて、公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならないと定められています。
これを受けて第19条では、契約の成立時に特定の事項を記載した書面を作成し、相互に署名または記名押印して交付することを義務付けています。
たとえ信頼関係のある取引先であっても、以下のリスクを避けるために書面契約は不可欠です。
・言った、言わないのトラブル防止(特に追加工事の費用などで注意)
・行政処分(指示処分・営業停止など)
・建設業許可の維持、更新への影響
建設業法第19条で定められた必須記載事項
建設業法では、契約書に必ず記載しなければならない事項が決められています。漏れがあると不適切な契約とみなされるため、以下の点をチェックしてください。
➀基本的事項
・工事の内容:何をどこまでやるのかを明確に。
・請負代金の額:消費税の扱いも明記します。
・工事着手の時期・完成の時期:工期の設定です。
➁支払いに関する事項
・代金の支払時期・方法:前金払、中間払、完成払などのタイミングと、現金・手形などの支払い手段。
➂変更・トラブル対応に関する事項
・工期変更・代金変更:工期の遅延や内容変更に伴う費用の負担ルール。
・天災地変等の不可抗力:地震や台風で損害が出た際、どちらが負担するか。
・価格変動への対応(インフレ条項):資材価格の高騰に伴う代金変更のルール。
➃責任の所在に関する事項
・第三者への損害:工事中に近隣住民などに迷惑をかけた場合の責任。
・検査・引渡し時期:いつ検査を行い、いつ建物を受け渡すか。
・契約不適合責任:引渡し後に欠陥が見つかった場合の保証。
⑤契約・紛争解決に関する事項
・履行遅滞・違約金:工期に遅れた場合のペナルティや、代金未払いの利息。
・紛争の解決方法:トラブル時に建設工事紛争審査会などを利用する旨。
実務でよくある落とし穴
契約書を作成する際、特に注意するべきポイントを3つ挙げます。
➀着工前の契約締結が鉄則!
工事が始まってから、または終わってから契約書を作成するケースです。建設業法では工事の着手前に書面を交付することが求められています。急ぎの現場でも最低限、契約書と注文書、請書の形式を整えましょう。
➁追加・変更工事も書面が必要
当初の契約にはなかった追加工事が発生した場合これも別途、追加契約書や変更合意書を交わさなければなりません。口頭で進めてしまい、最後に見積もりを出して揉めることは、最も典型的なトラブルパターンといえます。
➂電子契約の活用
2026年現在、多くの建設会社が電子契約を導入しています。建設業法でも認められていますが、相手方の承諾が必要であり、かつ改ざん防止措置が講じられたシステムを使う必要があります。
適切な契約書を作成するポイント
自社で一から契約書を作成するのは大変です。まずは、各団体が公表している標準請負契約約款をベースにすることをお勧めします。
・民間連合協定 建設工事請負契約約款
・建設業健全発展推進コンソーシアムの標準書式
これらは建設業法の規定を網羅しており、信頼性が高いです。ただし、自社の工種や取引形態に合わせて微調整が必要な場合もあります。
まとめ
建設業における請負契約は、事務作業に留まらず、自社を守るためのトラブル防止と、発注者からの信頼を得るためのものでもあります。
コンプライアンス(法令遵守)が厳しく問われる昨今、適切な契約締結は建設業許可を維持する上での大前提です。
少しでも不安のある方は、ぜひ当事務所へお気軽にご相談ください。
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「グラス湘南行政書士事務所」