建設工事において、構造物を地盤や既存躯体に強固に固定するためのアンカー工事は欠かせません。しかし、このアンカー工事が建設業許可上のどの業種に該当するのかは、その工法や目的によって判断が分かれる、非常に専門的かつ重要な論点です。
今回は、アンカー工事が該当する可能性のある業種と、建設業許可を取得、維持するための判断基準、そして実務上の具体的な注意点について解説します。

アンカー工事の種類と建設業許可の業種特定

建設業許可は全29業種に分類されており、請け負う工事がどの工事に該当するかを特定しなければなりません。アンカー工事が該当する可能性のある主要な業種は、その工法や規模によって大きく以下の3つに分けられます。

①とび・土工工事業

アンカー工事の多くは、このとび・土工工事業に含まれます。
例えば、地滑り防止や土留め壁の安定化を目的として、アンカーである鋼材を地盤に挿入し、定着させる工事であったり、トンネル掘削時や斜面安定化のために、岩盤にボルトを打ち込み、安定化を図る工事などが挙げられます。
とび・土工工事業は、基礎工事や地盤改良工事など、建設工事の土台に関わる幅広い工事を包括しており、特別な技術や機械を用いるアンカー工事も多くがここに分類されます。

②鋼構造物工事業

アンカーが主として構造物の主要な部位となり、その組立、設置が主体となる場合は、鋼構造物工事業の許可が必要となることがあります。
例えば、橋梁等の耐震補強に伴う大規模な定着部設置などが挙げられます。
ただし、一般的な地盤へのアンカー打設のみであれば、通常はとび・土工工事業に留まります。

③舗装工事業、管工事業、その他(付帯工事の場合)

アンカー工事が他の主要な工事の付帯として行われる場合、主たる工事の業種に含まれることがあります。
例えば、道路のガードレール設置に伴うアンカー打設であれば舗装工事業に該当しますし、プラント配管の支持構造物設置に伴うアンカー打設であれば、管工事業に含まれる可能性があります。

建設業許可の判断基準

アンカー工事を請け負う上で、建設業許可が必要かどうか、またどの業種で取得するべきかを判断する際の基準を解説します。

①許可が必要な基準

建設業許可は、請負金額が消費税込みで500万円以上の工事を請け負う場合に必須となります。これはアンカー工事であっても例外ではありません。

②業種特定の判断基準

複数の業種にまたがる工事を請け負う場合、どの業種の許可が必要かは、工事全体の中で、どの作業が最も施工技術上重要か、また費用の大半を占めるか、という観点から判断します。
アンカー工事が主体の契約であれば、とび・土工工事業の許可が必要です。
トンネル工事やダム工事などの安全性や機能確保のために補助的に行われる場合が、主たる工事の業種(土木一式工事など)に含まれると解釈されることもありますが、アンカー工事の技術的専門性が高い場合は独立してとび・土工工事業の許可が求められるケースが多いです。

③特定建設業の判断基準

アンカー工事を請け負う業者が、発注者から直接請け負い、かつ4,500万円以上(税込)の金額で下請契約を締結して他の業種に施工させる場合、特定建設業の許可が必要となります。

実務上の注意点

建設業者がアンカー工事を適法かつ円滑に行うための実務上の重要事項です。

①技術者要件の明確化

とび・土工工事業の許可を取得、維持するためには、専任技術者が必要です。

一般建設業の場合

・実務経験10年以上
・指定学科(土木工学、建築学など)卒業後、高卒5年以上または大卒3年以上の実務経験。
・1級・2級土木施工管理技士、建設部門の技術士などの資格保有者。

特にアンカー工事は専門性が高いため、技術者の資格や実務経験が許可要件に合致しているかを厳しくチェックされます。

②契約書・見積書における業種の明記

トラブル防止のため、請け負うアンカー工事がどの建設業許可業種に該当するのかを、契約書や見積書で明確に記載しておくことが推奨されます。これにより、後々の許可行政庁や発注者との見解の相違を防ぐことができます。

③関連法令・工法の遵守

アンカー工事、特にグランドアンカー工事は、工事の安全管理が非常に重要です。
専門工事業としての高い技術力と安全管理体制が求められるため、常に最新の工法や安全基準を把握しておく必要があります。

まとめ

アンカー工事の建設業許可状の位置づけは、原則として、とび・土工工事業に分類されます。許可行政庁の判断基準を正しく理解し、適法かつ安全に業務を遂行できるよう、万全の体制を整えることが肝要です。
ご自身の事業がどの業種に該当するのか判断に迷われた場合は、ぜひ当事務所へお気軽にご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所