金融機関は融資の可否を判断する際、企業の信用力、継続性、透明性などを総合的に評価します。実は、建設業許可の取得は、これらの金融機関が重視する評価ポイントを裏付ける信頼の証ともいえます。
今回は、建設業許可が融資に有利な理由と、金融機関が特に評価するポイントを解説します。
建設業許可が融資に有利な3つの理由
建設業許可を取得していることが、金融機関の評価を高めます。その背景には、許可取得の際にクリアしている厳しい要件と、それによって得られる企業としての格付けがあります。
理由1:法令遵守(コンプライアンス)明確な証明
建設業許可を取得するには、建設業法で定められた経営業務の管理責任者や専任技術者といった人的要件、そして財産的基礎といった要件をクリアする必要があります。
これらは、企業が適正な経営体制と確かな技術力を持ち、安定した資金力のものとで事業を運営できること、つまり法令を遵守した優良な事業者であることを公的に証明するもので、信用力の面で非常に高い評価につながります。
理由2:取引先の信頼性向上と事業の安定性
建設業許可を持たない業者は、税込500万円以上の工事(建築一式工事の場合は、1,500万円以上または延べ床面積150平方メートル以上)を請け負うことができません。
許可を得ることで、公共工事や元請け業者の安定的な案件に参入する資格が得られます。金融機関は、借りたお金が確実に返済されるのかなどの、事業の継続性・安定性を重視します。許可があることで、優良な取引先との安定した受注が見込めると判断され、融資審査で大きなプラス評価となります。
理由3:事業の透明性(財務情報の整備)
許可事業者は、毎事業年度終了後4ヶ月以内に、決算変更届(事業年度終了届)を許可行政庁に提出する義務があります。この届出には、工事経歴書や財務状況などが含まれ、企業の事業内容や財務状況が公的な手続きに基づき整理・開示されます。
金融機関の担当者は、融資審査の際にこれらの整備された書類(決算変更届に添付される工事経歴書や財務諸表)を通じて、会社の経営実態を正確に把握できます。事業の透明性が高まることは、金融機関からの信頼獲得に直結し、融資審査をスムーズに進める要因となります。
金融機関が融資審査で特に評価する4つのポイント
建設業許可の有無だけではなく、金融機関は決算書や面談を通じて、さらに具体的なポイントを評価しています。
①財務状態の健全性(特に自己資本比率)
金融機関は、企業の財務状況の健全性を最も重視します。特に建設業において注目される指標は以下の通りです。
自己資本比率
総資産に占める自己資本の割合。建設業では、15%以上が望ましいとされています。この比率が高いほど、借入金への依存度が低く、財務基盤が安定していると評価されます。
売上高経常利益率
売上高に対する経常利益の割合。3%以上を目安に、本業でしっかりと利益を上げられているかを見ます。
建設業許可の財産的基礎の要件を満たす過程で、必然的に財務状況を見直すことになり、これが結果、融資に有利な経営基盤に繋がります。
②受注実績と今後の事業見通し(事業の継続性)
金融機関は、過去の安定した受注実績と今後の確実な受注見込みを重視します。
受注残高の状況
今後の売上を支える受注残高が、適切に確保されているかを確認します。
特定の取引先への依存度
特定の元請けへの依存度が高すぎないか(理想は最大取引先への依存度30%以下)。取引先が分散していることで、リスクヘッジができていると評価されます。
事業計画の具体性
融資の使途(何に使うか)と、それによって将来どれだけの利益が上がり、どう返済していくかを示す事業計画書の説得力。工事ごとの原価や利益を明確にした工事台帳や資金繰り表を提出することで、計画の実現性が高まります。
③借入金の返済状況とメインバンクとの関係
過去の借入金の返済が滞りなく行われているかは、新規融資の判断材料として重要です。
また、メインバンクとの取引年数や預金残高の推移も評価の対象です。日頃から経営状況を定期的に報告し、試算表や資金繰り表を提出するなど、金融機関との良好な信頼関係を築いている企業は、審査で有利になります。
④経営者のビジョンと説明能力
融資面談では、決算書の数字だけではなく、経営者自身の人間性や将来への明確なビジョンが問われます。
業界動向と自社の強みを明確化
業界全体の流れを把握しつつ、自社が持つ技術力やニッチな市場での優位性などを具体的に説明できるか。
資金使途と返済計画の明確化
融資を希望する資金が、事業のどこに必要で、それによってどのように利益を生み出し、確実に返済できるのかを理論的に説明できるか。
建設業許可取得のための煩雑な書類作成や要件整備を乗り越えた経験は、経営者としての計画性と実行力の証明にもなります。
許可を活かし融資を成功させるために
建設業許可によって得られる公的な信用を最大限に活かすため、以下の点にも留意しましょう。
①財務データの継続的な管理
決算変更届に必要な工事経歴や財務状況を日頃から正確に記録・管理し、いつでも金融機関に提出できる状態にしておくこと。
②専門家との連携
財務戦略や資金繰り計画の策定、そして金融機関との交渉戦略には、当事務所のような行政書士や税理士などの専門家に相談することで、審査通過率を大きく高められます。
建設業許可を土台として、信用、継続性、透明性の三位一体で企業価値を高め、融資の成功と事業のさらなる発展を実現されましょう。
建設業許可の取得、更新、変更手続き、そして資金調達に向けた経営体質の強化について、ご不安やご不明点があれば、当事務所へお気軽にご連絡ください。
「グラス湘南行政書士事務所」