建設業許可を取得、維持するうえで欠かせないのが、正確な財務諸表の作成です。特に「ワン・イヤー・ルール」という会計の原則は、建設業法特有の様式で財務諸表を作成する際に、重要になります。このルールを理解することは、許可申請や決算変更届をスムーズに進める上で重要です。
今回は、会計におけるワンイヤールール(1年基準)の基本と、建設業法様式の財務諸表(特に許可申請時の財務諸表)を作成する際の注意点について解説します。

ワンイヤールール(1年基準)の基本

①ワンイヤールールとは?

ワンイヤールール(1年基準)とは、貸借対照表(B/S)において、資産や負債を流動項目と固定項目に区分するための基本的なルールのことです。
具体的には、決算日の翌日から起算して1年以内に現金化される(支払期限が到来する)資産や負債を流動項目として分類し、1年を超えて現金化される資産や負債を固定項目として分類します。

区分定義貸借対照表上の分類
流動性決算日の翌日から1年以内に現金化・支払期限が到来するもの流動資産・流動負債
固定性決算日の翌日から1年を超えて現金化・支払期限が到来するもの固定資産・固定負債

このルールによって、企業の短期的な支払い能力(流動性)や長期的な資金繰りの安定性(固定制)を判断しやすくなります。

②具体的な適用例

長期借入金の一部

銀行からの借入金のうち、返済期限が1年を超えるものは固定負債の長期借入金ですが、そのうち決算日の翌日から1年以内に返済期限が到来する部分については流動負債の1年以内返済予定長期借入金(または振替処理後、短期借入金など)に振り替える必要があります。

定期預金、投資有価証券

満期が1年以内のものは流動資産ですが、1年を超えるものは固定資産の投資その他の資産などに分類されます。

建設業法様式の財務諸表作成時の注意点

建設業の許可申請や決算変更届では、法人であれば別紙15号、個人であれば別紙16号などの建設業法様式に則った財務諸表を作成、提出します、これは会社法や税法上の決算書とは異なる独自の様式です。

①会計ソフトの数字をそのまま使わない

一般的な会計ソフトが出力する財務諸表は、通常、会社法や会計基準に基づいたものであり、建設業法様式とは勘定科目の配列や分類が異なります。
特に注意が必要なのは、ワンイヤールールの適用と勘定科目の組替です。

②流動資産・固定資産の厳密な区分

建設業の財務諸表では、経営事項審査(経審)にも関わる流動比率や自己資本比率を算定するための重要な基礎資料となります。したがってワンイヤールールに基づき、流動資産と固定資産の区分を行う必要があります。

特に注意が必要な勘定科目

①長期借入金の1年内返済額

前述の通り、借入金の元本返済予定表を確認し、決算日の翌日から1年以内に返済する部分を流動負債の短期借入金(または1年以内返済長期借入金)として振り替える処理が必要です。この処理が漏れると、流動比率が不当に低く評価されてしまうことがあります。

②完成工事未収入金・未完成工事支出金

建設業特有のこれらの勘定科目は、通常、流動資産に含まれますが、極端に回収が長いものや、1年超の長期にわたる工事にかかる支出などは、その性質上、個別に固定項目として扱うかどうかの検討が必要になる場合があります。

③法定様式への科目組替(フォーマットの順守)

建設業法様式では、定められた勘定科目の配列・名称を使用しなければなりません。
例えば、一般会計で「減価償却累計額」を間接控除方式で表示していても、建設業法様式では「固定資産」の直接控除方式で表示を組替える必要あります。
また、流動負債の部では、「短期借入金」「支払手形・買掛金」など、流動性の高い順に記載することが求められます。
提出する財務諸表が、建設業法施行規則で定められた別紙様式の定義に完全に合致しているかチェックすることが重要です。

まとめ

ワンイヤールールは建設業の財務諸表においては、長期借入金の処理など、企業の信用力を測る上で重要な意味を持ちます。
許可申請や決算変更届は、税務署に提出した決算書をそのまま添付すればよいわけではありません。建設業法という特別法に基づく、独自のルールと様式が存在します。
当事務所では、建設業法様式に完全に準拠した財務諸表の作成代行から、許可申請までをトータルサポートで、承っています。複雑な手続きでお困りの際は、お気軽のご連絡ください。
グラス湘南行政書士事務所