事業の継続は時には、経営環境の変化や後継者問題など、様々な理由から廃業や休止を選択せざるを得ない場面もあるかもしれません。特に建設業許可を受けている場合、これらの手続きには建設業法に基づく厳格なルールが存在します。
「忙しいから後回して良いだろう」「許可が切れるまでまだ時間があるから放っておこう」といった考えは、将来的な過料(罰則)や再許可取得時の支障を招く可能性があるため、大変危険です。
今回は、建設業許可業者が事業を廃業または休止する際に、押さえるべき正しい手続きの流れ、提出期限、そして注意点について解説します。
廃業と休止の違いを明確にする
まずは廃業と休止の違いを正しく理解することです。この区分によって、必要な手続きが異なってきます。
廃業(許可の取り消しが必要なケース)
廃業とは、建設業を永久的に、または許可の要件を満たせない状況となったため、許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)に対し、許可の取り消しを届け出る行為です。
廃業届の提出が義務付けられる主なケースを下記へ挙げます。
・個人事業主が死亡したとき
・法人が合併により消滅したとき
・法人が破産手続開始の決定により解散したとき
・法人が合併・破産以外で解散したとき
・許可を受けている建設業を全部または一部廃止したとき
・許可の要件である常勤役員等(経管)や営業所の技術者(専技)を欠いたとき
このうち、特に注意が必要なのが、許可の要件を欠いたときです。例えば、常勤役員等(経管)や営業所の技術者(専技)が退職し、30日以内に後任を選任できない場合、その要件を欠いた時点で廃業届の提出事由に該当します。
休止(廃業届が原則不要なケース)
休止とは、事業活動を一時的に停止するものの、将来的には再開する意思があり、かつ建設業許可の要件(経管・専技の設置、営業所の維持など)を引続き満たし続ける場合を指します。
一時的な事業停止や休業の場合は、原則として廃業届の提出は不要です。ただし、以下の建設業法上の規定には注意が必要です。
それは、建設業許可を受けた後、1年以内に営業を開始しない場合、または継続して1年以上営業を休止した場合は、許可が取り消される可能性があります。
(許可の取消し)
第29条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。
一 一般建設業の許可を受けた建設業者にあつては第7条第1号又は第2号、特定建設業者にあつては同条第1号又は第15条第2号に掲げる基準を満たさなくなつた場合
二 第8条第1号又は第7号から第14号まで(第17条において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するに至つた場合
三 第9条第1項各号(第17条において準用する場合を含む。)のいずれかに該当する場合(第17条の2第1項から第3項まで又は第17条の3第4項の規定により他の建設業者の地位を承継したことにより第9条第1項第3号(第17条において準用する場合を含む。)に該当する場合を除く。)において一般建設業の許可又は特定建設業の許可を受けないとき。
四 許可を受けてから1年以内に営業を開始せず、又は引き続いて1年以上営業を休止した場合
五 第12条各号(第17条において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するに至つた場合
六 死亡した場合において第17条の3第1項の認可をしない旨の処分があつたとき。
七 不正の手段により第3条第1項の許可(同条第3項の許可の更新を含む。)又は第17条の2第1項から第3項まで若しくは第17条の3第1項の認可を受けた場合
八 前条第1項各号のいずれかに該当し情状特に重い場合又は同条第3項若しくは第5項の規定による営業の停止の処分に違反した場合
単に受注がない、工事がないという状況ではなく、営業活動自体を1年以上完全に停止する場合は、許可取消しのリスクがあるため、許可行政庁への相談や、状況によっては更新をせずに許可を失効させることも検討が必要になってきます。
廃業届の提出方法と手続きの流れ
廃業届を提出しなければならない事由が発生した場合、その後の流れと注意点を解説します。
提出期限は30日以内
建設業法第11条に基づき、廃業事由の発生日から30日以内に、許可行政庁に対して、廃業届出書を提出しなければなりません。
この「30日以内」という期限は非常に厳格です。万一、期限を過ぎて提出した場合、10万円以下の過料(罰則)の対象となる可能性がありますので注意が必要です。
第50条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
一 第5条(第17条において準用する場合を含む。)の規定による許可申請書又は第6条第1項(第17条において準用する場合を含む。)の規定による書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者
二 第11条第1項から第4項まで(第17条において準用する場合を含む。)の規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出した者
三 第11条第5項(第17条において準用する場合を含む。)の規定による届出をしなかつた者
四 第27条の24第2項若しくは第27条の26第2項の申請書又は第27条の24第3項若しくは第27条の26第3項の書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者
2 前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
遅延が判明した場合、始末書などの提出を求められるケースも多く、再許可取得時にも影響が出る可能性があるため、迅速な対応が必須といえます。
提出書類と届出事項
提出するべき書類は、許可行政庁(国土交通大臣か都道府県知事許可か)によって異なりますが、主に以下の書類が必要となります。
・廃業届出書
廃業事由、廃業年月日などを記載
・変更届出書(必要な場合)
常勤役員等(経管)や営業所の技術者(専技)の削除など
・添付書類
法人の登記事項証明書、死亡診断書(個人事業主死亡の場合)など、事由に応じた確認書類
廃業届出書には、以下の内容を正確に記載します。
・届出者の氏名、住所、会社名(代表者名)
・許可番号、許可年月日
・廃業等の事由
・廃業等の年月日
提出先
国土交通大臣許可の場合
主たる営業所を管轄する地方整備局
都道府県知事許可の場合
その都道府県知事の建設業担当課
廃業ではなく「許可の更新をしない」という選択肢
事業を休止、縮小する際、廃業届を出してすぐに許可を取り消すのではなく、許可の更新をせずに、許可を失効させるという選択肢もあります。
建設業許可が5年間の有効期限があるため、期限が来る前に更新手続きを行わなければ、許可は自動的に失効し、取り消されます。
注意点
期限までの工事は可能
許可が失効するまでは、許可業種の建設工事を行うことができます。
失効後に再開する場合
失効後に再度、建設業を営む場合は、新規で許可を再申請する必要があります。
将来的に再開の見込みがなく、かつ許可要件を維持できない場合は、速やかに廃業届を提出することが推奨されます。
まとめ
建設業許可の廃業、休止の手続きは、後の再許可取得や法的なリスクに直結する重要な手続きといえます。特に、常勤役員等(経管)や営業所の技術者(専技)の交代、退職に伴う廃業届の提出は、30日以内という短い期限があるため、事態が発生したら直ぐに準備に取り掛かることが肝要です。
建設業の廃業、休止、許可の更新・変更手続きでお困りの方は、どうぞお気軽に当事務所へご相談ください。
「グラス湘南行政書士事務所」