新しい従業員を雇用することは、事業拡大に繋がる機会といえます。
しかし、従業員を雇用した際には、社会保険などの各種手続きに加え、建設業許可に関連した重要な手続きが必要になることがあります。
特に、許可の要件に関わる従業員や、会社の社会保険等の加入状況は、建設業許可の維持や更新、そして将来の事業展開に大きく影響します。
今回は、従業員を雇用した際に必要な建設業許可関連の手続きについて解説します。
営業所の技術者(専技)や常勤役員等(経管)の場合の手続き
新たに雇用した従業員が、建設業許可の要件となる営業所の技術者(専技)や常勤役員等(経管)となる場合、あるいは新しい役員として迎い入れる場合は、手続きが必要です。
営業所の技術者(専技)の変更・追加
営業所の技術者(専技)は、営業所ごとに常勤し、請負契約の適正な履行を確保するために配置される技術者のことです。
営業所の技術者(専技)の要件
・特定の国家資格を持っていること。
・実務経験を証明できること(特定の期間、指導監督的実務経験を含む場合もあります)。
・その営業所に常勤していること。
手続き
・新しい従業員を営業所の技術者(専技)として配置する場合、または既存の営業所の技術者(専技)が退職し、後任を配置する場合は、変更届を提出する必要があります。
・届出期限は、変更の事実が発生してから原則として2週間以内です。
・添付書類として、その従業員の資格証明書、常勤性の証明書類、および実務経験を証明する書類などが必要です。
常勤役員等(経管)の変更・追加
常勤役員等(経管)は、適正な経営体制の確保を目的とし、法人の役員または個人事業主として、適切な経営経験を持つ者を指します。(※令和2年の建設業法改正により、現在は体制を問う形式に移行していますが、ここでは便宜的に従来の表現を用います)。
手続き
・新しく役員が就任する場合や、常勤役員等(経管)となる従業員を雇用する場合は、同様に変更届の提出が必要です。
・届出期限は、営業所の技術者(専技)と同様に原則として2週間以内です。
・添付書類として、新しい役員の履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、常勤性の証明書類、および経営経験を証明する書類(役員としての期間や業務内容を証明するもの)などが必要です。
・氏名、住所の変更など、個人の変更があった場合も、遅滞なく届出が必要です。
その他の従業員雇用に関する手続き
上記のような役職ではない一般の従業員を雇用した場合でも、建設業許可の適正な履行を担保する観点から、間接的に影響する重要な手続きがあります。それは、社会保険・労働保険の加入状況に関するものです。

社会保険・労働保険の適正加入の徹底
建設業許可業者は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険など社会保険等の加入が義務付けられています。これは、適正な社会保険等の加入が建設業許可の要件となっているからです。
雇用保険
従業員を一人でも雇用すれば、加入義務が生じます。
健康保険・厚生年金保険
法人の場合は、原則としてすべての従業員が加入対象です(一部例外あり)。個人事業でも、常時5人以上の従業員を雇用している場合は加入義務が生じます。
手続き
・新しい従業員を雇用した際は、速やかに社会保険および労働保険の加入手続きを行う必要があります。
・加入手続き後、加入証明書類を保管しておきましょう。
・建設業許可の更新時や業種追加の際には、これらの加入状況を証明する書類の提出が求められます。
経営状況の変化に伴う手続きの検討
従業員が増加することで、会社の財務状況や組織図、営業所の体制などが変化する場合があります。
営業所の新設
従業員の増加に伴い、新たな拠点を設ける場合、営業所新設の手続きが必要です。
資本金の増額
事業規模の拡大に伴い、増資を行った場合は、資本金および役員に関する変更届が必要です。
経審への影響
適切な社会保険の加入は、経営事項審査(経審)の評価点(W点)に大きく影響します。従業員の増加に伴い、適正な手続きを行うことで、経審での評価向上に期待できます。
届出のタイミングと重要性
建設業許可に関する届出は、その内容によって届出期限が厳格に定められています。
| 変更事項 | 届出期限 | 罰則等 |
| 常勤役員等・営業所の技術者の変更 | 変更日から2週間以内 | 届出遅延は指示処分の対象となる可能性あり。最悪の場合、許可取り消しにつながることも。 |
| 事務所の所在地、商号などの変更 | 変更日から30日以内 | 同上 |
| 決算報告書(事業年度終了届) | 事業年度終了後4ヶ月以内 | 提出しないと更新申請を受け付けてもらえない。 |
重要ポイント
特に営業所の技術者(専技)や常勤役員等(経管)の変更は、許可要件の可否を左右するため、届出を怠ると許可の継続ができなくなる恐れがありますので注意が必要です。新しい従業員を雇用した際は、その方が許可要件に関わるポジションにあるかをまず確認し、必要な手続きを期限内に行うことが肝要です。
まとめ
建設業許可に関する手続きは多岐にわたり、専門的な知識と正確な書類作成能力が求められます。
従業員雇用時にチェックするべき点を下記へ挙げましたのでご参照ください。
①役職の確認
新しい従業員が営業所の技術者(専技)または常勤役員等(経管)となるか?
②変更届の準備
該当する場合は、2週間以内の届出に向けた準備(資格証明、常勤証明、経験証明など)を行う。
③社会保険等の加入
雇用後速やかに健康保険、厚生年金、雇用保険の加入手続きを完了する。
④記録の保管
社会保険の加入証明、雇用契約書など、常勤性を証明できる書類を保管する。
「忙しくて手が回らない」、「手続きに不安がある」という方は、ぜひ当事務所へご相談ください。安心して本業に専念できるよう、許可の維持・管理を徹底してサポートいたします。
「グラス湘南行政書士事務所」