建設業を営むには、一部の軽微な工事を除き、建設業許可が必要です。この許可を取得するためには、営業所ごとに特定の要件を満たす「営業所技術者」を配置しなければなりません。この技術者等は「専任技術者」とも呼ばれ、請負契約の適正な締結や履行を確保する役割を担います。
この専任技術者になるためには、特定の資格や実務経験が求められます。特に、実務経験で要件を満たす場合、その期間が重要となります。一般的には10年間の実務経験が必要とされますが、特定の「指定学科」を卒業している場合、短縮されることがあります。
今回はこの実務経験の短縮に繋がる「指定学科」について解説します。

「指定学科」とはどんな内容?

建設業許可における「指定学科」とは、建設工事に関する特定の学問分野を指します。これらの学科を卒業していると、技術的な知識があるとみなされ、実務経験の期間が短縮されます。
指定学科は、29種類の建設業許可業種ごとに定められています。例えば、「土木工事業」や「建築工事業」といった主要な業種では、多くの学科が指定されています。

これらの業種では、以下の学科が指定されています。
・土木工学:土木、都市工学、衛生工学、交通工学など
・建築学:建築、都市工学など
・農業工学:農業土木、森林土木など
・鉱山学:資源開発工学、地球工学など
これらの学科は、大学・高等専門学校・高等学校などで履修することができます。

指定学科の卒業による実務経験短縮の具体例

指定学科を卒業している場合、必要な実務経験期間は以下のように短縮されます。
・大学または高等専門学校(指定学科卒業):3年間の実務経験
・高等学校(指定学科卒業):5年間の実務経験
指定学科を卒業することによって、通常の10年間必要な実務経験が、3年または5年に短縮されることになります。これは実務経験として証明する期間が少なくて済むため、これから建設業許可を取得しようとしている方にとって、大きなメリットといえます。

指定学科卒業による実務経験短縮の注意点

実務経験は、許可を取得しようとする業種に関してのものである必要があります。

例えば建築工事業の許可を取得する場合、建築工事に関する実務経験が求められます。単に建設会社に勤めているだけでは、実務経験として認められない場合があります。

特定の資格による緩和

指定学科卒業と同等にみなす特定の資格についても触れると、1級施工管理技士と1級技士補は「大学または高等専門学校(指定学科卒業)」、2級施工管理技士と2級技士補は「高等学校(指定学科卒業)」と同等にみなす措置が取られています。しかし各施工管理技士が専任技術者になれる業種には、限定がありますので注意が必要です。
例えば、電気工事施工管理技士がなれる専任技術者は電気工事業だけといった限定があるのです。対して「電気工学学科卒業」ではより広く、「機械器具設置工事業」と「消防施設工事業」も3年または5年の実務経験で専任技術者になることができます。

緩和措置の例外は?

一般建設業の場合は、指定建設業7業種といわれている「土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園」と電気通信工事業については、施工管理技士と技士補を指定学科卒業者と同等にみなす措置が適用されませんので注意が必要です。
施工管理技士と所定の有資格者は専任技術者になれますが、「技士補」では専任技術者になれません。
特定許可の場合、指定建設業7業種は1級資格者のみ専任技術者になることができ、それ以外の業種では、1級資格者に加えて指定学科卒業者の実務経験期間の短縮や10年の実務経験者は認められますが、実務経験には必ず「2年間の指揮監督的実務経験」を含まなければなりません。

まとめ

指定学科卒業は、この専任技術者の要件をクリアするための有効な手段です。ご自身または従業員の方の中に、該当する学科を卒業している方がいれば、積極的に活用すべきです。
しかし、指定学科の判断は卒業証明書や実務経験証明書の記載内容が要件を満たしているかどうかの確認も必要になり、学科の名称も学校により若干異なることがあります。要件を満たすか判断に悩まれる場合は、当事務所へご相談ください。

グラス湘南行政書士事務所