建設業許可は29の業種に分かれていますが、特定の工事を請け負うには、その工事内容に応じた業種の許可が必要です。
大型船の内船工事は建設業許可の取得が必要なのでしょうか?
結論から申し上げると、大型船の内装工事は原則として建設業許可がなくても請け負うことができます。
建設業法上の「建設工事」は、土地に定着する工作物の新設、増設、改築、除去、または修繕を対象としており、船舶は土地に定着する工作物ではないためです。
建設業許可が必要な「建設工事」とは?
建設業許可は、建設業法第3条に基づき、請負金額が一定額以上の「建設工事」を行う場合に必要となります。
建設業の許可
第3条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
一 建設業を営もうとする者であつて、次号に掲げる者以外のもの
二 建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が二以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの
この法律において「建設工事」とは、土地に定着する工作物の建設や改修を指します。具体的には、建築物(住宅、オフィスビル、工場など)、土木構造物(道路、橋、ダム、トンネルなど)、設備工事(電気、管工事など)が該当します。
これらの工事は、土地にしっかりと固定され、移動できない性質をもっています。建設業法はこうした大規模な工事の適正な施工を確保し、発注者を保護することにあります。
なぜ船舶工事は建設業許可が不要なの?
船舶は、土地に定着しているわけではないため、船内の設備や内装を改修する工事は、建設業法が定める「建設工事」の範囲から外れることになります。
したがって、船内のキャビンや機関室、操舵室などの内装工事を請け負う場合、原則として建設業許可が不要になります。
船舶工事の種類と注意点
ただし、船舶に関連する工事でも陸上に設置される施設に関わる場合は、注意が必要です。例えば、船を係留するための岸壁やドック、造船所の建物、船舶に資材を積み込みむためのクレーンなどの建設工事は、土地に定着する工作物となるため、建設業許可が必要になるのです。
船舶以外に建設工事に該当しない工事は何があるの?
造園の維持管理業務
公園や庭園の草刈り、剪定、除草といった日常的な維持管理業務は、建設工事とは見なされません。ただし、造園工事として樹木や石を配置するなど、土地に定着する工作物の新設・改修を伴う場合は、建設業許可が必要になります。
エレベーターの保守点検
エレベーターの定期点検や簡単な部品交換は、建設業許可が不要です。これは、すでに設置された設備の維持管理にあたるためです。一方、新たなエレベーターの設置や大規模な改修・撤去は、昇降機設置工事として建設工事に該当し、許可が必要になります。
機械設備の据え付け
工場などに設置される大型の機械設備の据え付け工事は、原則として建設工事には該当しません。
これは、機械設備が「土地に定着する工作物」ではなく、その機械自体に据え付ける工事であるためです。ただし、据え付けに際して基礎工事や建物の改修が必要な場合は、その部分については建設工事の許可が必要となる場合があります。
看板の設置
土地に定着しない一時的なイベント用の看板や、建物の外壁に取り付ける比較的小規模な看板の設置は、建設業工事に該当しません。
しかし、鉄骨などで基礎をつくり、土地に設置する大型の屋外広告物などは、鋼構造物工事として建設工事に該当します。
まとめ
建設業の許可制度は非常に複雑で、法改正や解釈によってもかわることがあります。ご自身の事業が建設業許可の対象になるかどうか判断に迷われる際は、当事務所へご相談下さい。当事務所では建設業許可申請を承ります。お気軽にご相談下さい。