建設業許可において、経営方針の転換や事業承継、人材の高齢化などのより、やむなく建設業の許可を廃業する事態に陥ることは少なくありません。

今回は「建設業許可廃業後の工事施工はどうなってしまうのか..」廃業の手続きや注意点について解説します。

廃業後の工事はどうなる?

結論からいうと、建設業許可を廃業された後も、許可を受けていた期間中に締結した、工事請負契約に基づく工事については引き続き行うことができます。
建設業法は、許可を受けていない者が、請負契約を締結することを制限しています。既に適法に締結された契約に基づく工事の履行は妨げられないという趣旨のもとです。

許可の取消し等の場合における建設工事の措置
第29条の3 第3条第3項の規定により建設業の許可がその効力を失つた場合にあつては当該許可に係る建設業者であつた者又はその一般承継人は、第28条第3項若しくは第5項の規定により営業の停止を命ぜられた場合又は前二条の規定により建設業の許可を取り消された場合にあつては当該処分を受けた者又はその一般承継人は、許可がその効力を失う前又は当該処分を受ける前に締結された請負契約に係る建設工事に限り施工することができる。この場合において、これらの者は、許可がその効力を失つた後又は当該処分を受けた後、2週間以内に、その旨を当該建設工事の注文者に通知しなければならない。
2 特定建設業者であつた者又はその一般承継人若しくは特定建設業者の一般承継人が前項の規定により建設工事を施工する場合においては、第16条の規定は、適用しない。
3 国土交通大臣又は都道府県知事は、第1項の規定にかかわらず、公益上必要があると認めるときは、当該建設工事の施工の差止めを命ずることができる。
4 第1項の規定により建設工事を施工する者で建設業者であつたもの又はその一般承継人は、当該建設工事を完成する目的の範囲内においては、建設業者とみなす。
5 建設工事の注文者は、第1項の規定により通知を受けた日又は同項に規定する許可がその効力を失つたこと、若しくは処分があつたことを知つた日から30日以内に限り、その建設工事の請負契約を解除することができる。

廃業届の提出が必要なケースとは?

許可行政庁へ廃業届の提出が必要なケースは、以下の内容が挙げられます。

許可業種の廃止

複数の業種の許可を持っていた業者が、そのうち一つの業種だけを廃止する場合も、勿論必要になります。

事業の継承

廃業届を提出せずに、今ある許可をそのまま引き継ぐ方法もあるのですが、個人事業主から法人成りにするなど、事業主体が変わる場合です。

代表者の交代

会社の代表者が変わり、許可の名義も変更する場合。

許可の有効期限切れ

更新手続きを行わずに許可の有効期限が満了した場合も、そのまま放置してはいけません。新規で取り直す以外は、廃業届を出さなければなりません。

廃業届の提出と工事状況

建設業法の許可を廃業する場合は、建設業法に基づき、許可行政庁に廃業届を提出する必要があります。廃業届は、許可の有効期間が満了する日、または許可を廃止する日から30日以内に提出しなければなりません。
廃業届の手続きを終えた後でも、既に受注している工事については、契約書に基づき、工事の完成まで誠実に完遂する必要があります。これは建設業法が発注者の保護を目的としているからです。ただし、発注者が許可業者に工事を引き継がせたい意向があれば、締結済みの請負契約を解除することはできます。

工事を引続き行うにしてもいくつかの注意点があります。

発注者への通知義務

廃業後、無許可業者になったことを2週間以内に、発注者に通知する必要があります。

契約解除の可能性

廃業の事実を知った発注者は、一定期間内に契約を解除する可能性があること。

保証や契約不適合責任

廃業後も、施工した工事に対する保証や契約不適合責任は継続すること。

用語の説明
契約不適合責任とは?
完成した建物や工事が、種類、品質、数量に関して契約内容に適合しない場合に、請負人(建設業者)が負う責任です。これは、2020年4月の民法改正によって、従来の「瑕疵(かし)担保責任」に代わって導入されました。

「軽微な工事」である許可不要な工事はどうなるの?

建設業許可が不要な「軽微な工事」についてはどうでしょうか?
軽微な工事はそもそも、建設業許可がなくても請け負うことができますので、廃業後も引き続きこれらの工事を請け負うことは可能です。ただし、自社の能力や責任範囲を明確にし、施主との間でトラブルが起こらないよう細心の注意を払う必要があります。

「通常の廃業」と「業法違反による廃業」

通常の廃業と異なり、建設業法違反によって許可が取り消された場合は、その後の影響が大きく異なります。

新規契約の締結が5年間できない

業法違反によって許可が取り消された日から5年間は、新たに建設業の許可は取得できません。

未完了工事の損害賠償リスク

業法違反による許可の取り消しの場合でも、原則として、既に契約を締結している工事は最後まで施工しなければなりません。しかし許可取り消し事由が、施工不良や契約違反など、発注者に損害を与えるものであった場合、発注者はそれによって被った損害の賠償を請求される可能性があります。

社会的信用の失墜

業法違反による許可の取り消しは、会社の社会的信用に大きな影響を及ぼし、取引先との信用も失墜してしまいますので注意が必要です。

当事務所では建設業許可申請を承ります。お気軽にご相談下さい。

グラス湘南行政書士事務所