下請法が2026年1月に改正され、法律の正式名称も変わります。
改正後は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」へと名称変更され、通称も「下請法」から「取適法(とりてきほう)」に変わるとされています。
この改正は、下請事業者や個人事業主などの受託者を保護する目的で、法律の適用範囲を広げる意図が込められています。今回は下請法が改正されることで、建設業界にどのような影響があるのか、また知っておくポイントについて解説します。
下請法改正による変更内容
価格の適正化
委託事業者が価格決定に際して、不当な行為を行うことを防止するために、価格の適正化を促進することが目的です。例えば、原材料などのコスト上昇について、受託業者から価格改定の相談を求められたときは、その相談に応じる努力義務が課されます。
書面のデジタル化
これまで紙媒体の契約が主流であった発注書などの書面が、受託業者の承諾を得たうえで、電子メールやクラウドサービスによる電磁的交付も可能となります。
手形支払いの原則禁止
特に製造業において、手形等における支払いが原則禁止されることになります。これは、手形による支払いが中小事業者の資金繰りを圧迫する大きな要因となっている現状を是正するためです。
下請法では委託事業者が受託事業者に対して、受領から60日以内に請負代金を支払うことを義務付けています。しかし、手形で支払う場合、この期間内に現金化できないケースが多く、中小事業者が割引率や手数料を負担しなければなりませんでした。今回の改正により、この不利益が解消されることになります。
製造業が今回の下請法改正で手形払いへの規制が強化されているのに対し、建設業では既に建設業法により、手形等による支払いに制限が設けられています。
建設業法では、元請業者が下請業者に代金を支払う場合、手形を交付する際は公正取引委員会規則に基づいて現金化までの期間を定めることが求められています。
建設業界への影響
建設業法も時代の変化により、頻繁に改正が行われていますが、今回の下請法の改正により建設業界でも直接的な影響を及ぼします。原則、建設業界は建設業法の適用なのですが、工事に付随する業務は下請法の適用を受けるからです。
建設工事そのものは下請法の対象外です。建設業法は元請と下請けの多重構造を前提に、契約書面の交付義務や代金支払いのルールを詳細に定めており、その結果、下請業者を保護する役割を果たしています。
一方、建設業でも下請法が適用されるケースについてですが、これは例えば、建設工事で用いる資材の製造委託であったり、警備業などの役務提供委託などは下請けの対象になります。この点が、建設業特有の注意点といえます。
まとめ
下請法の改正は、主に製造業が直面する課題に対応したものですが、建設業も関連する業務では下請法の影響を受けるのも事実です。特に原材料の高騰への対応やデジタル化の流れは、製造業も建設業も共通する大きなテーマといえるでしょう。
建設業に携わる皆様にとっては下請法のみならず、建設業法の正しい理解や適正な取引を行うことが求められます。
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