建設業界において、請負契約による着金までの期間の長さが資金繰りとして問題視されています。
工事を着工してから最終的な代金が回収されるまで数か月かかることは珍しくありません。しかし、その間にも社員や外注先への人件費支払いはもちろん、資材の代金、重機リース料などの支払いは毎月発生します。
さらに近年は、人件費や資材高騰の上昇が続いており、手元資金のショートを防ぐための資金調達がこれまで以上に重要になっています。また、国が進める約束手形の廃止方針など、建設業界における決済環境も大きな過渡期を迎えています。
こうした中、一時的なつなぎ資金の調達手法としてファクタリングがあります。
今回は、建設業許可や経営事項審査(経審)を取り扱う行政書士の視点から、建設業においてファクタリングの必要性、銀行借入との違いや経審への影響を解説します。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、保有している未回収の工事代金請求などの売掛債権をファクタリング会社に売却し、支払期日よりも前に現金化する資金調達の方法です。
融資ではないため、借入金(負債)が増えないという特徴があります。
建設業においては、主に以下の決済方法が利用されることがあります。
2社間ファクタリング
自社とファクタリング会社の間で契約。元請業者には知られずに利用できますが、手数料は8%〜15%程度と高めです。
3社間ファクタリング
自社・ファクタリング会社・元請業者の3者で契約します。手数料は2社間ファクタリングと比べて2%〜8%程度と低めですが、元請業者の承諾が必要となります。
元請業者との関係を考慮し、2社間ファクタリングを選択するケースが一般的です。
ファクタリングと銀行借入の徹底比較
銀行融資の場合、自社が赤字決算であったり債務超過に陥っていると審査が厳しくなります。 一方、ファクタリングの審査で重視されるのは、売買する工事代金債権の確実性です。この確実性というのは、元請業者の信用力を意味します。
そのため、自社の決算内容が厳しく銀行融資が受けにくい状態であっても、工事代金の入金が確実であれば資金調達できる可能性が高くなります。
経営事項審査(経審)への影響は?
公共工事の受注を目指す建設業者にとって最も気になるのが、ファクタリングを利用すると経審の評点(P点)に悪影響が出るのかという点です。
結論からいうと、ファクタリングは適切に活用すれば経審の評点への影響を最小限に抑えられます。
負債が増えないため自己資本比率や有利子負債依存度を悪化させない
経審のY点(経営状況分析)では、貸借対照表の自己資本比率や負債割合などが厳しく評価されます。 銀行借入で資金調達すると有利子負債が増加し、財務比率が悪化してY点が下がる原因になります。しかし、ファクタリングは債権の売却であるため、貸借対照表上で負債が増えることはありません。
但し注意点として、ファクタリング利用時に支払う手数料は、決算書上で売上割引料または雑損失などの費用として計上されます。手数料を頻繁に支払うと、営業利益や経常利益を圧迫し、Y点の売上高経常利益率や自己資本額にマイナス影響を与える可能性があります。
決算直前で一時的なつなぎ資金が必要な場合、借入金を増やして有利子負債を悪化させるよりも、ファクタリングで対応した方がY点の下落を防げるケースがあります。
利益率低下と資金繰りとのバランスで計画的な利用が必要です。
ファクタリングの注意点
債権譲渡禁止特約の確認
民間工事の請負契約書には、売掛金の譲渡を禁止する債権譲渡禁止特約が含まれているケースが多々あります。債権譲渡自体は法的に有効とされますが、契約違反を理由に元請との信頼関係を損ねるリスクがあります。2社間ファクタリングを利用する場合でも、契約内容の事前確認が不可欠です。
悪質事業者に注意
ファクタリングを装い、実質的に高利貸しを行う悪質事業者に注意が必要です。例えば、手数料が異常に高い場合や元請業者が倒産した場合に、自社が弁済義務を負うなどの契約を求めてくる業者は非常に危険です。正規のファクタリング契約は無担保・無保証が基本です。
まとめ
ファクタリングは、入金までの未回収期間を埋め、急な資材費や人件費の支払いに対応するための有効な資金調達手段といえます。
・銀行融資が間に合わない緊急時のつなぎ資金
・経審直前で負債を増やしたくない時期
このような場面ではメリットとなります。
但しファクタリングは、あくまで一時的な資金繰りの手段であり、長期的な改善には公的融資の活用、原価管理の見直し、適正な工期・支払条件の交渉といった根本的な対策が欠かせません。
当事務所では、建設業許可の新規更新や経審手続きはもちろん、事業計画の作成や資金繰りに配慮したアドバイスも行っております。資金調達と経審への影響について不安のある方は、お気軽にご相談ください。
「グラス湘南行政書士事務所」