建設業を営む中で、事業規模の拡大とともに検討されるのが、特定建設業許可取得です。
元請けとして、1件の工事につき下請代金の合計額が5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上となる下請契約を締結するためには、一般建設業ではなく特定建設業の許可が必要です。
特定建設業許可の取得には、一般建設業よりもさらに厳しい財産的基礎と技術的要件が求められます。

今回は、その中でも皆様が頭を悩ませる監理技術者の確保と、その専任性に関する必須要件を実務的な視点で解説します。

特定建設業における技術者の違い

一般建設業では営業所技術者(専技)に実務経験10年などの要件がありましたが、特定建設業ではそのハードルが一段上がります。

特定建設業(7業種)の場合

以下の7業種(指定建設業)で特定許可を受けるには、1級の国家資格が必須となります。実務経験での振り替えは認められません。

・土木工事業
・建築工事業
・電気工事業
・管工事業
・鋼構造物工事業
・舗装工事業
・造園工事業

指定建設業以外の場合

上記以外の業種については、1級資格者に加え、一般の営業所技術者(専技)要件を満たした上で、さらに元請けとして4,500万円以上の工事に関し、2年以上の指導監督的な実務経験を有する者も認められます。

※だたし、この指導監督的実務経験の証明は非常に難易度が高く、実務上は1級資格者を確保するのが確実なルートといえます。

現場の配置する監理技術者の役割と要件

特定建設業許可が必要な工事(大規模な下請発注を伴う元請工事)では、現場に監理技術者を配置しなければなりません。

監理技術者は、下請業者を適切に指導し、工事全体の技術面・安全面の管理を行う重要な役割を担います。

監督技術者資格者証と講習

監理技術者として現場に立つためには、資格を持っているだけではなく、以下の2点が必要です。

➀監理技術者資格者証の交付を受けていること
➁監理技術者講習を受講し、有効期限内であること

許可申請書には、営業所に置く技術者(専技)がこれらの要件を満たしているか、あるいは別途現場用の技術者が確保できているかチェックされます。

混同しやすい専任の定義を整理する

特定建設業の運用で最も混同しやすいのが、専任という言葉の解釈です。建設業法には2つの専任が存在します。

➀営業所技術者(専技)の専任

これは常勤であることを指します。原則として、営業時間中は営業所に常駐している必要があり、他社の役員や、遠方の現場の配置技術者を兼ねることはできません。

➁工事現場の配置技術者の専任

公共工事や重要な民間工事(請負金額が4,000万円以上、建築一式なら8,000万円以上)の場合、現場ごとに技術者を専任で配置しなければなりません。
営業所技術者は、原則として、現場の監理技術者にはなれません。ただし、当該営業所で契約した工事であることや現場が近接していること、常に連絡が取れる体制であることなどの条件を満たす場合に限り、例外的に兼務が認められます。特定建設業の場合、扱う工事金額が大きくなるため、この専任性の重複により業法違反を指摘されるリスクが高まります。

審査でチェックされる直接的雇用関係

特定建設業の許可申請において、技術者が自社の社員であることの証明は非常に厳格です。

・健康保険被保険者標準報酬決定通知書
・住民税徴収額決定通知書

これらの書類により、継続的な雇用関係(社会保険の加入状況)が確認されます。例えば、必要な時だけ来てもらったり、名義だけ借りるといった行為は、欠格事由に該当し許可の取消しや罰則の対象となります。また、後期高齢者などで社会保険の加入義務がない場合は、確定申告書や賃金台帳などで実態を証明する必要があります。

特定建設業取得を成功させるために

特定建設業許可への切り替えを検討される際は、以下の点を確認してください。

➀資格の確認

1級施工管理技士などの有資格者は、自社で社会保険に加入しているか?

➁実務経験の裏付け

資格がない場合、元請としての指導監督的実務経験を契約書や注文書で客観的に証明できるか?

➂人員配置のシミュレーション

許可取得後、大型案件が重なった際、現場ごとに配置できる専任の監理技術者は足りているか?

特定建設業の維持には、一般建設業以上のコンプライアンス意識が求められます。特に技術者の引き抜きや退職による欠員は、即座に許可要件の喪失につながるため、人事管理も重要な経営課題となります。

まとめ

特定建設業許可の取得は、企業の信頼を高め受注チャンスを広げる大きな一歩といえます。しかし、要件が複雑であるため、事前の準備不足で申請が受理されないケースも少なくありません。
当事務所では、貴社の現状の技術者配置を確認し、最適な申請ルートをご提案いたします。
ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所