宅建業を営む上で、不動産の取引で必ず取り交わすものとして、重要事項説明(以下重説)というものがあります。
宅地建物取引士(以下宅建士)の独占業務であり、契約前の最重要プロセスですが、現場では日常的に取り交わされているものです。しかし、そこには怖い落とし穴があります。
これくらい説明しなくても大丈夫だろう・・
調査が間に合わなかったけれど、多分こうだろう・・
そんな油断が、宅建業免許を揺るがす大惨事を招くかもしれません。
今回は、宅建業者が負う重要事項説明義務違反の恐ろしすぎるペナルティについて、行政処分の仕組みから民事責任まで解説します。
なぜ重要事項説明はこれほどまでに重いのか?
宅建業法第35条に規定されている重要事項説明は、単なる手続きではありません。
宅建業者と消費者との間に、情報格差がある不動産取引において、消費者の利益を保護し、不足の損害を防ぐための役割を果たしています。
そのため、プロである宅建業者がこの義務を怠ったり、事実と異なる説明を行ったりした場合のペナルティは、他の法規制に比べても非常に厳格に規定されています。
免許の効力を失うリスク
まずは、国土交通大臣や都道府県知事から下される行政処分です。これは宅建業者の看板に直結します。
①指示処分
最も軽い処分とはいえ、侮ってはいけません。
以後、このようなことがないように!
・・という行政からのイエローカードです。処分内容は行政のホームページ等で公表されるため、法令遵守ができていない会社として信用を失うリスクがあります。
②業務停止処分(1年以内の期間)
一定期間、新規の媒介契約や売買契約が一切できなくなります。重要説明義務違反の内容が悪質、あるいは過去に指示処分を受けていた場合などに下されます。数ヶ月の業務停止は、中小零細業者にとっては事実上の倒産宣告になりかねません。
③免許取消処分
故意に事実を告げなかったり、虚偽の説明をしたりなど、悪質性が極めて高い場合の最終宣告です。
一度免許が取り消されると、原則として5年間は再取得(免許の受け直し)ができません。
罰金だけでは済まないダメージ
行政処分とは別に、宅建業法違反として刑事罰の対象となることもあります。(宅建業法第83条第1項第4号)
金額だけ見れば少額のように感じますが、問題はそこではありません。
宅建業法違反で罰金刑を受けた場合、それは免許の欠格事由に該当する可能性があります。つまり、罰金を払って終わりではなく、その結果として免許が取り消されるという罰金と免許取消というペナルティが発生するのです。
民事責任による損害賠償
行政や警察が動く前に、買主や借主から突きつけられるのが民事上の責任です。
契約解除と損害賠償
重要な事項について説明が漏れてた、あるいは間違えていた場合、相手方はそれなら買わなかった(借りなかった)として、契約の解除を主張できます。
それに伴い、引越し代、仲介手数料の返還、違約金、さらにはその物件が適正に説明されていれば得られたはずの利益など、多額の損害賠償請求に発展してしまうリスクがあります。
宅建士個人の責任
基本的には会社が責任を負いますが、宅建士個人に対しても不法行為に基づく損害賠償が請求されるケースがあります。従業員を守るためにも、正確な重説は必須です。
うっかりでは済まされない違反例
知らなかったは、プロの世界では通用しません。特に以下のケースはトラブルの火種となりやすいものです。
①インフラの整備状況
飲用水、ガス、電気の供給施設の整備見通し。配管が私道を通っている場合の承諾の有無など。
②法令上の制限
建築基準法や都市計画法による制限。特に再建築不可の告知漏れは致命傷です。
③心理的瑕疵(告知事項)
いわゆる事故物件。人の死に関する告知ガイドラインを遵守しているか。
④水害ハザードマップ
近年の法改正で必須となった説明項目です。最新の地図を確認しているかが問われます。
免許を取るために
宅建業免許は、取得することよりも維持し続けることの方が、難しく大変です。
重要事項説明義務違反を防ぐためには、単に宅建士の知識を深めるだけではなく、社内の調査・確認体制(コンプライアンス)を構築することが不可欠といえます。
・調査漏れを防ぐチェックリストの導入
・法改正に合わせた重要事項説明フォーマットの更新
・更新申請時における過去の違反歴の精査と是正
まとめ
重要事項説明は、消費者への誠実さの証であると同時に、貴社の免許を維持するための重要な手続きであるといえます。
少しでも不安を感じられたら、当事務所へご相談ください。
「グラス湘南行政書士事務所」