不動産取引において、氏名や住所、年収、家族構成、さらには住宅ローンの審査書類など、宅建業者が扱う情報は極めて機密性の高いものばかりといえます。
万が一、個人情報の漏洩が発生すれば、社会的信用の失墜だけではなく、業務停止処分や損害賠償請求に発展するリスクもあります。
今回は、宅建業者が遵守するべき個人情報保護法と宅建業法のルール、そして実務で取り入れるべき具体的な対策について解説します。

宅建業者に求められる個人情報保護の重要性

宅建業は、お客様のプライバシーに深く踏み込む業種です。売買や賃貸の仲介、管理業務のいずれにおいても、個人情報の適切な管理はビジネスの根幹を支える信頼そのものといえます。
2017年の改正個人情報保護法の施行以降、取り扱う個人情報の件数に関わらず、すべての宅建業者が個人情報保護法の適用対象となっています。それは小規模な事務所であっても例外ではありません。

根拠となる法律と守秘義務

宅建業者が守るべきルールは、主に個人情報保護法と宅建業法の2つの法律があります。

宅建業法第45条(秘密を守る義務)

宅建業法では、業務上知り得た秘密を漏らしてはならないという厳格な守秘義務が課されています。

対象

宅建業者およびその従業員(退職後も含む)

罰則

違反した場合、罰金刑や免許取消・業務停止などの行政処分の対象となる可能性があります。

個人情報保護法

個人情報の取扱いに関する共通のルールを定めた法律です。取得時の利用目的の公表、安全管理措置、第三者提供の制限などが定められています。

宅建業者が遵守するべき具体的な運用ルール

実務において特に注意するべき点は、以下の取得、利用、提供の3段階におけるルールです。

①利用目的の特定と公表

個人情報を取得する際、何のために使うのかを具体的に特定しなければなりません。

対策

ホームページへのプライバシーポリシーの掲載や、媒介契約時、入居申込時に利用目的を明記した書面に同意を得る仕組みを構築します。
例えば、物件情報の紹介や住宅ローン借入審査の取次、指定流通機構(レインズ)への登録などが挙げられます。

②第三者提供の制限と同意

本人(顧客)の同意を得ずに、個人情報を第三者に渡すことは原則禁止されています。
広告掲載やレインズへの登録、管理委託先への情報提供、提携ローン会社への紹介などはすべて第三者提供に該当します。あらかじめ包括的な同意を得ておくことが実務上不可欠です。

③本人からの開示、訂正請求への対応

顧客から自分のデーター内容を修正または削除してほしいと求められた場合、遅滞なく対応する体制を整えておく必要があります。

実務で取り組むべき安全管理措置

国土交通省の不動産業における個人情報保護に関するガイドラインでは、具体的な安全管理措置が示されています。これらを組織・人・物理・技術の視点で整理します。

組織的・人的安全管理

責任者の配置

個人情報保護の責任者を決め、漏洩時の連絡体制を整備します。

従業員教育

事務職員や営業担当に対し、定期的な研修を実施します。退職後も守秘義務があることを雇用契約書や就業規則に明記することも重要です。

物理的・技術的安全管理

書類の保管

顧客カルテや契約書写しは、鍵付きキャビネットに保管します。机の上に放置したまま離籍するのは厳禁です。

PC・デバイスの対策

PCにパスワードをかけるのは勿論、ウイルス対策ソフトを最新に保つ、USBメモリ等への安易なコピーを禁止するなどの措置を講じます。

廃棄の徹底

不要になった個人情報書類は、シュレッダー処理を行います。

万が一の情報漏洩への備え

どれだけ対策を講じても、人為的ミスやサイバー攻撃による漏洩リスクをゼロにすることはできません。

①事実関係の調査と二次被害の防止

どこから、何が漏れたのかを確認し、被害の拡大を防ぎます。

②本人への通知

影響を受ける顧客へ速やかに連絡し、謝罪と説明を行います。

③監督官庁等への報告

個人情報保護委員会および国土交通省(または都道府県)への報告義務が発生する場合があります。

まとめ

宅建業者にとっても個人情報保護は、法定遵守(コンプライアンス)に留まらず、顧客からの信頼を勝ち取り、持続可能な経営を行うための不可欠な要素です。
特に近年は、IT重説の普及や電子契約の解禁など、不動産業界のデジタル化が加速しています。これに伴い、デジタルデータの取り扱いに関するリスクも増大しています。
法改正や適切な書面作成、社内規程の整備について不安がある場合は、当事務所へご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所