建設業を営む皆様におかれましては、日々の業務のなかで、元請業者として、あるいは同じ専門工事業者として、建設業の許可をもっている業者さんと下請契約を結ぶ機会も多いのではないでしょうか?
「許可を持っている業者さんだから大丈夫だろう?」と信頼するのも無理のないことですが、その信頼の上に立つ契約だからこそ、基本的なチェックを怠らないことが肝要です。
特に、建設業法が定めるルールは厳格です。これらの法律は、発注者と受注者、そして下請けの皆さまが健全に事業を行えるよう、公正な取引を促すために存在します。
今回は、皆さまが安心して事業を進められるよう、建設業許可業者と下請契約を結ぶ際に、チェックするべき5つの重要な項目について解説します。

先方の建設業許可の有効性と範囲の確認

基本的な内容ですが、先方業者が本当に有効な建設業許可を持っているのか、そしてその工事に必要な業種が含まれているのかを確認することは非常に重要です。

チェックポイント①:許可の有無と有効期限

許可は5年ごとに更新が必要です。契約締結時点で有効な許可番号と、その有効期限を控えましょう。そして国土交通省の検索サイトである建設業情報提供システムで確認します。

チェックポイント②:許可業種

契約する工事内容が、先方業者が持つ許可業種と一致しているか確認してください。例えば、内装仕上工事の契約なのに、先方の許可が土木一式だけでは、法律上、その工事を許可業種として適法に請け負ったことにはなりません。

チェックポイント③:特定建設業の要件(自社チェック)

特定建設業の許可は、元請業者が自社で請け負った工事で、下請代金の合計額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は、6,000万円以上)になる場合、皆さまが特定建設業の許可を持っている必要があります。この金額は下請業者側をチェックするものではなく、元請である皆さまの責任を担保するための要件です。

書面による契約の徹底

口約束ではトラブルの元になります。建設業法は、下請契約の際、必ず書面(契約書や注文書・請書)を交わすことを義務付けています。

チェックポイント①:法定記載事項の充足

契約書面には、請負代金の額、支払期日、工事内容、工期など、法律で定められた14項目(主要なもの)がすべて明確に記載されている必要があります。特に、工事が完成した後の請負代金の支払期日と、契約不適合責任に関する取り決めは漏れなく記載してください。

チェックポイント②:変更契約の徹底

工事の途中で、設計変更、追加工事、工期の延長などがあった場合、元の契約書だけでは対応できません。当初の契約と同じように、変更内容、変更後の金額、新しい工期を記載した変更契約書や覚書を必ず交わしましょう。

請負代金の支払期日と支払方法の厳守

適正な代金の支払いは、下請業者の円滑な資金繰りと、健全な業界の維持のために最も重要といえます。

チェックポイント①:特定建設業者の支払期日

皆さまが特定建設業者である場合、下請代金は、先方からの引渡しを受けた日から50日以内のできる限り短い期間内で支払わなくてはなりません。

(特定建設業者の下請代金の支払期日等)

第24条の6 特定建設業者が注文者となつた下請契約(下請契約における請負人が特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人であるものを除く。以下この条において同じ。)における下請代金の支払期日は、第24条の4第2項の申出の日(同項ただし書の場合にあつては、その一定の日。以下この条において同じ。)から起算して50日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内において定められなければならない。

 特定建設業者が注文者となつた下請契約において、下請代金の支払期日が定められなかつたときは第24条の4第2項の申出の日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは同条第2項の申出の日から起算して50日を経過する日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。

 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない。

 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金を第1項の規定により定められた支払期日又は第2項の支払期日までに支払わなければならない。当該特定建設業者がその支払をしなかつたときは、当該特定建設業者は、下請負人に対して、第24条の4第2項の申出の日から起算して50日を経過した日から当該下請代金の支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に国土交通省令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。

これは建設業法で定められた厳格な期限であり、守る必要があります。

チェックポイント②:手形決済と割引率

支払いを手形で行う場合は、その手形期間にも注意が必要です。もし手形を交付するなら、割引を受けるなど下請業者が負担する費用に見合った金額を代金に含めるか、もしくは負担しなう配慮することが、適正な取引の観点から求めらています。国土交通省の指導では、手形期間は一般的に120日以内(特定業種は90日以内)が望ましいとされています。

チェックポイント③:不当な代金減額の禁止

工事の途中で一方的な理由で代金を減額したり、やり直しや手直しの費用負担を不当に押し付けるなどは、建設業法や下請法で厳しく禁止されています。

保険加入状況と安全衛生管理体制の確認

安全は、建設現場のすべてに優先します。事故や災害は、下請業者だけではなく元請業者にも大きな責任と損害をもたらします。

チェックポイント①:各種保険の加入確認

契約時に、以下の保険に加入しているか、保険証書の写しなどの提出を義務付けましょう。

労災保険

下請業者の従業員が現場で負傷した場合の補償。

請負業者賠償責任保険

施工ミスや災害などで第三者や物件に損害を与えた場合の賠償。

チェックポイント②:安全衛生責任者の選任

下請業者が現場で作業を行う際、安全衛生責任者を適切に選定しているか、その氏名や連絡先を把握しましょう。

チェックポイント③:再下請通知書の提出

契約した下請業者が、さらに別の業者に工事の一部を再発注する場合、元請業者である皆さまに対して再下請通知書を提出させることが義務付けられています。これにより、現場に入るすべての業者を把握し、安全管理や万一の責任の所在を明確にできます。

契約解除と紛争解決に関する取り決め

どれほど良好な関係であっても、予期せぬ事態は起こり得ます。言い方が悪いですが万一の逃げ道や解決の道筋を事前に決めておくことが肝要といえます。

チェックポイント①:契約解除の明確な定義

先方が経営破綻した場合、正当な理由なく工事を大幅に遅延させた場合など、やむを得ず契約を解除する際の条件と手続きを具体的に定めましょう。

チェックポイント②:契約不適合責任の取り決め

工事完了後に不具合が見つかった場合の、補修の範囲、費用負担、責任期間を明確にします。民法の原則を適用するのか、または業界慣習を踏まえた期間とするのか双方納得の上で決める必要があります。

チェックポイント③:紛争解決の手段

契約に関する争いが生じた場合、協議を行い、それでも解決しない場合は、どこの裁判所を管轄とするか、または建設業紛争審査会などの中立的な機関によるADR(裁判外紛争解決手続き)を利用するかを決めておきます。これにより、長期化する訴訟を避ける道筋ができます。

まとめ

建設業は、法令遵守と信頼関係の上に成り立つ事業です。
今回ご紹介した5つのチェック項目は、リスクを回避し、下請業者の皆さまとの間で長期的な信頼関係を築くための基礎固めとなります。特に許可の要件や支払期日は厳格なルールですので、今一度、皆さまの契約書を見直してみて頂く事が肝要です。

また、令和8年1月より、従来の下請法が抜本的に改正され、名称も「中小受託取引適正化法(取適法)」へと変わりました。建設業においては、工事そのものには建設業法が適用されますが、取引内容によって取適法が適用される場合がありますので注意が必要です。建設工事そのものではなく、設計や運送、事務上のシステムなど、付随する業務委託が対象ではありますが、今後の対策は喫緊の課題といえます。

建設業許可申請に関することはもちろん、契約書の作成やその他の許認可についてお困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所