解体工事を請け負う事業者の皆様が直面する、解体工事業の「登録」と「建設業許可(解体工事業)」の違いについて、解説します。

この二つ制度は、請け負える工事の規模や取得要件、根拠法令が根本的に異なります。特に、事業の成長と拡大を考える上で、この違いを正しく理解することが必要です。

制度の根拠法と目的の明確な違い

まず、それぞれの制度がどのような法律に基づいており、どのような目的を持っているかを確認します。この根拠法の違いが、後の請負規程や要件の違いに直結しています。

解体工事業の「登録」の枠組み

解体工事業の登録は、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)にその根拠を置いています。

根拠法令

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(通称:建設リサイクル法)

目的

建設物等の解体工事において、資材の分別解体や再資源化(リサイクル)を適切かつ円滑に実施するための体制を整備すること。これにより、環境負荷の低減と循環型社会の形成に貢献することを主な目的としています。

管轄

主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事。

特徴

あくまでリサイクル義務の履行確保に焦点を当てた制度であり、請負金額の大小ではなく、解体工事を行うすべての事業者に対する規制として機能します。

建設業許可(解体工事業)の枠組み

建設業許可は、建設業法に根拠を置く、より包括的な建設事業の規制制度の一部です。

根拠法令

建設業法

目的

建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進すること。解体工事が建設業の一業種として分類されたことにより、工事の安全性、品質、契約の公正さなどを包括的に担保することが求められます。

管轄

一つの都道府県内にのみ営業所を持つ場合は都道府県知事、複数の都道府県に営業所を持つ場合は国土交通大臣。

特徴

事業者の経営能力、技術水準、社会的な信頼性などを総合的に審査し、一定以上の工事を請け負う資格を与えることを目的としています。

請負可能な工事の規模

両者の違いの中でも、事業者が最も重視するべき点は、請け負える工事の請負金額の上限です。この上限が、事業者がターゲットとする市場と、その成長の可能性を決定づけます。

登録業者が請け負える工事の範囲(軽微な工事の制限)

解体工事業の登録のみで営業する場合、請け負うことができる解体工事は、建設業法上の「軽微な建設工事」の範囲に厳しく制限されています。

請負金額の上限

解体工事一式を行う場合、1件の請負代金の額が500万円未満の工事。

市場の制約

この制限があるため、原則として、小規模な木造家屋や内装解体など、比較的小規模な案件のみに活動範囲が限定されます。500万円を超える案件は、元請・下請にかかわらず、一切請け負うことができません。
一方、建設業許可(解体工事業)を取得している場合、請負金額に関する上記の「軽微な建設工事」の制限は撤廃されます。つまりは、請け負える範囲の制限がなくなります。

請負金額の上限

500万円以上の全ての規模の解体工事を請け負うことが可能です。

市場の拡大

これにより、中規模以上のビルや工場、インフラ関連の大規模解体工事、公共工事などより大きな市場への参入が可能になります。事業の規模拡大を目指す上で、この許可の取得は避けて通れない要件となります。

取得要件の厳格さの比較

建設業許可は、建設業法に基づき、事業の継続性、安定性、そして技術的な信頼性を証明するために、経営面、技術面、財産面で多岐にわたる厳しい要件が課せられます。一方、分別解体の適正実施などの登録は、主に技術的な側面に特化しています。

解体工事業の登録の主な要件(技術面に特化)

登録の要件は、建設リサイクル法の目的に沿って、解体工事の適正な施工管理に重点が置かれています。

技術管理者

各営業所に、解体工事に関する知識と実務経験を有する技術管理者を常勤で配置することが必須です。資格の例としては1級・2級建築士、1級・2級施工管理技士(土木、建築、管、電気)、解体工事施工技士など。または、一定期間以上の実務経験が必要です。

欠格要件

建設リサイクル法に定められた一定の罰則を受けていないことなど。

建設業許可(解体工事業)の主な要件

建設業許可は、以下の四つの重要な要件をすべて満たさなければなりません。

常勤役員等(経管)

許可を受けようとする法人の役員等の中に、適切な経営経験を持つ者がいること。具体的には、常勤役員等が建設業の経営業務について適切な経験を有していること、または、その役員を直接補佐する体制が整っていることなどが求められます。これは、事業の継続性を担保するための重要な要素の一つです。

営業所の技術者(専技)

営業所ごとに、請け負う建設工事に関する専門的な知識と経験を持つ営業所の技術者(専技)を常勤で配置する必要があります。資格の例としては1級または2級土木施工管理技士(種別は解体)、1級または2級建築施工管理技士(種別は解体)、技術士(建設部門または総合技術監理部門)など。

誠実性

申請者やその役員等が、請負契約に関して不正または不誠実な行為(詐欺、脅迫、契約不履行など)をするおそれがないこと。これは、発注者の保護と建設業の信頼性確保のために設けられています。

財産的基礎または金銭的信用

請け負った工事を完成させるための経済的な基礎があることが求められます。

一般建設業許可の場合

自己資本が500万円以上であること、または、500万円以上の資金調達能力があること(銀行の残高証明書などで証明)。

特定建設業許可の場合

さらに厳しい資本金、自己資本、流動比率などの財務要件(欠損の額、流動比率、資本金)が課せられます。これは、大規模な下請契約に対する発注者保護を目的としています。

特に建設業許可は、必要書類が多く、要件の判断が複雑といえます。適切な準備と申請のためにも、ぜひ、当事務所へご相談下さい。
グラス湘南行政書士事務所