建設業許可申請は、電子申請の動きが活発になりつつあります。
電子化は便利になった反面、注意するべき点があることも事実です。特に神奈川県の申請においては、独自のルールや紙申請との違いを理解しておくことが重要です。
今回は、これから電子申請に切り替える方や新規申請を検討しており、電子申請で行いたい方に向けて、神奈川県の建設業許可電子申請で留意するべきポイントを解説します。
建設業許可申請の電子化とは?
建設業許可申請の電子申請とは、国土交通大臣が提供する「建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)」を利用して、申請書類や添付資料をオンラインで提出する方法です。
令和5年1月からは、大臣許可・知事許可ともに、電子申請の導入が始まりました。神奈川県への申請もこのシステムを利用します。従来の紙申請から、データのアップロードとオンライン上での入力、確認へと手続きの性質が変わりつつあります。
留意点1:電子申請が導入されても紙媒体が残る
電子申請の導入がある現在でも、すべてがオンラインで完結するわけではありません。
承継申請(合併・事業譲渡など)は紙媒体のみ
事業承継(法人の合併、事業譲渡、会社分割など)に伴う許可の承継申請手続きは、現在もJCIPシステムに対応しておらず、紙媒体での窓口申請のみとなっています。
特別な事情で事業承継を計画している場合は、その手続きのみ紙申請のルールに従う必要があるため、電子申請の準備とは別に、紙媒体申請様式やその他、必要書類を確認しておく必要があります。
GビスIDプライムの取得は必須!
電子申請のログインには、GビズIDプライムが必須です。このIDの取得には、審査期間として2週間以上要することがあります。許可申請の準備を始めたら、最優先でGビズIDプライムの申請を行うことが肝要です。
留意点2:電子申請による提出書類の一部省略
電子申請システムは、行政内部の連携によって提出書類を削減できるメリットがあります。
バックヤード連携による書類の省略
JCIPシステムでは、申請者が入力した情報に基づき、行政機関のバックヤード連携によって、いくつかの資料が自動的に確認されるようになりました。これにより、以前の紙申請では必要だったものの、電子申請時では提出が省略可能になった書類があります。
例えば、履歴事項全部証明書や、役員・株主の納税証明書などが該当します。(ただし、全ての情報が省略できるわけではありません。都道府県や申請の内容によって異なるため、申請前に手引きで確認する必要があります。)
紙申請時と異なり「不要になったもの」の把握
電子申請の導入により、紙申請で必要とされていた副本の準備や書類の押印は原則として不要になりました。
紙申請
正本・副本の合計2部(場合によっては3部)の作成が必要です。
電子申請
提出はデータ1セットで完結するため、副本は不要です。申請後にシステムからダウンロードできるデータ(PDF)を控えとして保管します。
確認資料は紙申請と同じものを添付する
バックヤード連携で省略可能な書類はありますが、申請者は許可要件を証明するために、準備する確認資料そのものは、紙申請時と同じ内容・水準のものを添付する必要があります。
例えば、経営業務の管理責任者や専任技術者の経験を証明する契約書や請求書、財産的基礎を示す残高証明書などは、従来通り準備し、すべてPDF化して添付しなければなりません。
留意点3:申請後の通知書と審査対応の現実
許可通知書は紙と電子を選択可能
許可が下りた際、申請者へ交付される許可通知書について、紙媒体での交付を受けるか、システム上で電子データとして交付を受けるかを選択できます。
紙の通知書
従来通り、行政庁の公印が押されたものが郵送されます。
電子の通知書
JCIPシステムからダウンロード可能ですが、行政の公印はありません。ただし、電子申請の正規の手続きを経たことを証明する電子署名(タイムスタンプ)が付与されています。
入札参加資格審査などの公的な証明書が求められる場面で、相手方が電子署名付きの通知書に対応していない場合などもあります。どちらの形式が必要かを事前に確認した上で選択することが肝要です。
不備が多い場合は、窓口申請を依頼される可能性も
電子申請は、行政職員による審査の前にシステム側で多くのチェック機能が働きますが、それでも不備が発見されることがあります。
特に、添付書類の内容と入力情報の不整合や、許可要件を証明する資料の不足など、不備が多く意思疎通が困難な場合、神奈川県の審査担当者から「一部申請を取り下げて、紙媒体で窓口にて申請し直してほしい」と書類を返されるケースもありますので注意が必要です。
これは審査の長期化を防ぐための措置といえますが、申請者側にとっては大きな時間的コストとなります。この事態を避けるためにも、申請前の準備と入力の正確性には細心の注意を払う必要があります。
まとめ
電子申請は、慣れないと非常に複雑で手間がかかります。
システムの操作ミス、ファイル形式のエラー、そして何より神奈川県の独自ルールの見落としは、許可取得の遅延に繋がります。また承継申請のような紙申請との併用が必要なケースでは、ルールの混同リスクが高まります。
当事務所では皆様が事業に専念できるよう、申請手続きを代行します。お気軽にご連絡ください。
「グラス湘南行政書士事務所」