建設業は、社会の基盤を支える重要な産業ですが近年、工事の大規模化・複雑化、高度な技術要求、そして地域インフラの維持管理といった多様な課題に直面しています。
これらの課題を単独の企業で解決することは困難であり、そこで重要な役割を果たすのが「JV(ジョイント・ベンチャー)」共同企業体です。
今回は、JVの基本的な仕組みから、日本の建設業界で活用される主要な3つの形態、そしてJVを組むことで得られる、メリットについて解説します。

建設業におけるJV(共同企業体)の基本

JV(共同企業体)とは、複数の建設業者が特定の建設工事や事業を共同で施工・実施するために、一時的に結成する事業組織です。

目的が明確

JVは、恒久的な組織ではなく、請け負った特定の工事の完成、または特定の事業の終了をもって、解散することを前提としています。

共同連帯責任

JVの構成員は発注者に対して、工事全体の完成において、共同で連帯責任を負います。

協議書の締結

構成員間の役割分担、出資比率、利益配分、損失負担、意思決定の方法などは、結成時にJV協定書(共同施工協定書)によって明確に定められています。

日本の建設業界におけるJVの3つの形態

その目的によってJVが主に次の3つの形態に分類されます。

①特定建設工事共同企業体(特定JV)

単体企業では対応困難な大規模工事や、高度な専門技術を必要とする、工事施工を目的として結成されるJVです。具体的な工事としては、長大橋梁、地下鉄工事、超高層ビルなどがあり、発注者側が入札条件として、JV結成を求めるケースが多いです。

②経常建設共同企業体(経常JV)

主に中小建設業者が、継続的な経営体質の強化や受注機会の拡大を目的として、比較的長時間にわたり結成するJVです。
共同で複数の工事を請け負うことで、単独では満たせない入札参加資格を獲得するなどが挙げられます。

③地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)

近年、重要性が高まっている形態です。これは地域内のインフラ(道路、河川、公園など)の維持管理業務や災害時の緊急対応を継続的に実施することを目的として、主に地元企業が結成するJVです。地域社会の安全と安心に直結する公共性の高い事業を担います。

JVを組むことの具体的な5つのメリット

建設業者がJVを結成することのメリットには、主に以下の5つが挙げられます。

メリット1:受注機会の拡大

これは最大のメリットといえます。JVを組むことで、構成員各社の施工実績、技術者数、経審点数(経営事項審査)を合算できます。単体企業では満たなかった格付けや大規模工事の入札参加資格を満たすことが可能となり、受注機会の拡大に繋がります。

メリット2:リスクの分散と軽減

大規模工事には、予期せぬトラブルや工期遅延、コスト超過など多くのリスクが伴います。
JVでは、これらのリスクを構成員間で分担するため、1社が被る経済的、経営的な負担を大幅に軽減できます。

メリット3:専門技術・ノウハウの相互補完

JVによって異なる専門的技術とノウハウを効果的に組み合わせることができます。
例えばA社がトンネル掘削に強く、B社が環境保全技術に優れているなど、単独では不可能だった高品質で総合力の高い施工が実現します。

メリット4:経営資源(ヒト・モノ・カネ)の効率的な活用

大規模なプロジェクトに必要な技術者、重機、資材、運転資金などの経営資源を、構成員間で融通し合うことができます。遊休資材を活用できるため、単独で全てを調達、維持するコストと手間を削減し経営効率を向上されることができます。

メリット5:地域社会への貢献と信頼性の確立

特に地域維持型JVは、地域のインフラを守り、災害時の初動対応を担う役割を果たします。これにより、ただの事業者としてではなく、地域に不可欠な存在として信頼性を確立し、長期的な安定経営に繋がります。

まとめ

JVは大きなメリットをもたらしますが、その結成と運営には専門的な手続きが必要です。

JV協議書の明確化

利益配分、責任分担、意思決定プロセスなど、トラブルを防ぐための詳細な協議書作成が不可欠です。

建設業許可の確認

JVを組む全ての構成員が、請け負う工事の種類に応じた建設業許可を保有している必要があります。
JV結成は、事業拡大と地域貢献を両立される強力な戦略となります。当事務所ではJV協議書作成から、建設業許可、入札参加資格に関する手続きまでトータルでサポート致します。お気軽にご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所