経営事項審査とは、公共工事の入札に参加するために、避けて通ることのできない重要は手続きです。
今回はこの経営事項審査の概要と、なぜ受ける必要があるのか、そして審査の仕組みを解説します。

経営事項審査(経審)とは?

経営事項審査、通称「経審」とは、建設業者が公共工事の入札に参加を希望する際に、必ず受けなければならない審査のことをいいます。
これは、国土交通省が定めた建設業法に基づき実施され、建設業者の経営状況や技術力などを総合的に評価し、点数化する制度です。
ざっくりいうと、「この業者が、発注された公共工事を適正かつ確実に施工できる能力があるか」判断するための役割を果たします。

法律上の根拠
経審は、建設業法第27条の23にその実施が定められています。

(経営事項審査)

第27条の23 公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。

2 前項の審査(以下「経営事項審査」という。)は、次に掲げる事項について、数値による評価をすることにより行うものとする。

一 経営状況

二 経営規模、技術的能力その他の前号に掲げる事項以外の客観的事項

3 前項に定めるもののほか、経営事項審査の項目及び基準は、中央建設業審議会の意見を聴いて国土交通大臣が定める。

この規定により、建設業者である以上、公共工事への参入を目指すのであれば、経審は必須となります。

経審を受ける理由は?

経審の目的は、点数付けに加え、公共工事の入札参加という具体的な目標を達成するために必要です。

理由1:公共工事の入札参加資格を得るため

国や地方公共団体(都道府県や市町村)が発注する公共工事の入札に参加するためには、まず入札参加資格(指名競争入札参加資格)を取得する必要があります。
この資格審査(自治体ごとに行われる「格付け」とも呼ばれます)において、以下の2つの審査結果が必須とされています。

①経営事項審査(経審):客観的な経営状況・技術力を点数化

②入札参加資格審査(自治体の独自審査):経審の結果に加え、地域要件や納税状況などを審査

つまりは、経審を受けて点数がなければ、その後入札参加資格審査に進むことができず、公共工事を行うことはできません。

理由2:客観的な企業力の証明

経審の結果は、総合評点値(P点)という形で点数化されます。このP点は、会社の経営規模、財務体質、技術力などを国が定めた統一基準で評価したものです。

・金融機関の融資審査
・民間工事の元請け・協力会社の選定
・大手ゼネコンとの取引

これらの場面で、経審の点数は客観的な企業力の証明となり、信用力の向上に繋がるといえます。

理由3:自社の強みと弱みの把握

経審の申請書類を作成し、結果の分析を行う過程で、自社の財務状況、技術者数、工事実績などが数値として明確となります。
その結果、技術力が足りないから、次の経審までに採用、育成したり、評価を上げるために流動比率を改善したりと、具体的な経営改善の目標設定に役立てることができます。

経営事項審査の有効期間と手続きの流れ

有効期間は1年7ヶ月

経審の結果通知書に記載される、総合評定値(P点)の有効期間は、審査基準日(決算期)から1年7ヶ月と定められています。
この有効期間を過ぎると、そのP点は失効し新たな入札参加資格の申請や更新ができなくなります。
継続的に公共工事を受注するためには、毎年決算期ごとに経審を受ける必要がある、という点を理解しておく必要があります。

申請手続きの流れ

経審の申請は、以下の2段階の手続きで構成されています。

①経営状況分析(Y点)

担当機関は、登録経営状況分析機関で、財務諸表を分析し、経営状況(Y点)を算出します。

②経営規模等評価(X・Z・W点)及び総合評定値請求(P点)

担当機関は、各都道府県知事または国土交通大臣で、Y点結果に加え、完成工事高や技術者数などの客観的事項を審査し、P点を算出します。

経営事項審査(経審)は、公共工事を受注するための手続きにとどまらず、建設業者としての企業力、信頼性を国に証明し、事業の安定と成長に繋がる大きな制度です。毎年、計画的に経審を受審し、評点の維持、向上に努めることが、経営の盤石化に繋がると考えます。
しかし、これらの手続きは提出書類も多岐にわたり、建設業会計の専門知識も必要とされます。評点を最大化するための決算書の組み方や加点要素の整備には専門的な視点が不可欠といえます。
当事務所では、書類作成はもちろん、評点アップのためのアドバイスを行い、公共工事受注をサポートいたします。お気軽にご連絡ください。
グラス湘南行政書士事務所