建設業を営む皆様にとって、作業員名簿は欠かせない書類の一つです。しかし、なぜ名簿の作成が必要なのか、と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、作業員名簿の必要性や記載事項、そして作成、管理のポイントを解説します。

作業員名簿とは何か?その目的と重要性

作業員名簿とは、建設現場で作業に従事する全ての人の氏名、所属、資格、健康状態などを記載し、現場の責任者が管理、把握するための名簿です。建設現場で従事する全ての人とは、自社の社員であったり、協力会社の作業員などを含みます。

作業員名簿の主な目的

作業員名簿を作成する主な目的は、以下の3つに集約されます。

①安全衛生管理の徹底

現場にいる作業員を正確に把握し、緊急時の安否確認や負傷者が生じた際の対応に不可欠といえます。また、保有資格を確認することで、適正な作業配置が行われているかをチェックできます。

②適正な労働条件の確保

社会保険や雇用保険の加入状況を確認し、法定福利費を適正に確保するための基礎資料となります。また、ゼネコンなどの元請負人が、下請負人を含めたすべての作業員の社会保険加入状況を確認する際の重要なツールとなります。

③工事の適正な施工管理

現場の作業体制を明確にし、工事の進捗や品質管理を円滑に行うための情報を提供します。
作業員名簿は、人数のリストいうことだけでなく、現場の安全と適法性を確認する上で重要な台帳といえます。

作業員名簿の作成は法律上の義務なの?

令和2年10月改正の建設業法改正により、作業員名簿の作成が事実上義務化されました(厳密には施工体制台帳の記載事項として作業員に関する事項が定められました)。

作成が必要とされる理由は?

安全管理と緊急時対応の基盤

「誰が、いつ、どこで」作業をしているのかを明確にし、災害事故や災害発生時に迅速な救護活動、家族への緊急連絡を可能にするためです。

建設業法による適正な施工の要求

建設業法では、元請負人による下請負人への指導、管理の徹底や、社会保険の加入状況の確認が求められています。作業員名簿は、これらの責務を果たすための具体的な手段として機能します。この責務は、許可の有無に関わらず、全ての業者が負うものです。

公共工事、民間工事の契約上の要求

公共工事や元請負人との民間工事では、契約書や発注者の指示により、安全書類の一部として作業員名簿の提出が義務付けらていることがほとんどです。

許可業者でも必要?勘違いしやすい注意点

「様々な要件をクリアし、膨大な書類を提出して建設業許可業者になったのだから、細かな書類は不要だろう」といった誤解をされることがありますが、これは間違いです。
作業員名簿の役割は、その現場で働く個々の作業員の安全とその作業員が適法に雇用、保険加入されているかを確認することにあります。これは、事業主が許可業者であるかどうかに関係するものではないからです。
許可業者であっても、新規現場入場者の資格や健康状態、社会保険の加入状況を元請負人または現場管理者が把握することは、現場作業における当然のルールともいえます。

作業員名簿に記載するべき重要事項とは?

作業員名簿に記載するべき事項は、安全管理と適正な労働環境の確認のために、詳細に規定されています。一般的な記載事項は以下の通りです。

作業員個人の情報

・氏名
・生年月日、年齢
・血液型
・現住所
・雇用保険加入状況
・社会保険加入状況

会社、現場の情報

・所属会社名、事業所
・雇入れ年月日
・作業内容、職種
・現場での役職

資格・健康に関する情報

・保有資格
・特別教育の受講歴
・健康診断受診年月日

特に社会保険(健康保険、厚生年金保険)と雇用保険の加入状況は、近年、法令遵守の観点から元請負人が厳しくチェックする最重要項目の一つです。未加入者がいる場合は、現場入場が拒否される可能性があります。

作成、管理における注意点

グリーンファイル(安全書類)とセットで作成する

作業員名簿は、グリーンファイル(安全書類)と呼ばれる一連の書類群です。これらはセットで元請負人に提出が求められますので、まとめて作成、管理する体制を整えることが肝要です。

変更があった際は、速やかに更新する

作業員名簿は、現場への入場者が変わるたびに更新が必要です。途中で退場した作業員や新たに入場する作業員がいる場合は、必ず最新の情報に更新し、現場責任者や元請負人に共有しておく必要があります。

個人情報保護を徹底する

作業員名簿は、氏名、生年月日などの個人情報が含まれています。情報漏洩を防ぐために、保管方法を厳重にし、目的外での利用は避けるようにすることが重要です。

外国人労働者の場合の注意点

外国人労働者が作業員として従事する場合、在留資格や就労可能範囲を確認できる書類のコピーも併せて管理することが求められます。不法就労の防止にも繋がるため、事業者の管理は必須といえます。

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グラス湘南行政書士事務所