建設業を取得するためには、財産的基礎または誠実性を示すことが必要であり、その裏付けとなるのが納税証明書です。しかし、この納税証明書の種類や取得方法、そして未納の扱いについては、多くの誤解が生じやすい所といえます。
今回は、納税証明書の具体的な種類、取得時の注意点、そして税金を滞納していた場合はどうなるのかについて、解説します。

建設業許可で求められる納税証明書とは?

建設業許可の要件の一つに、財産的基礎または金銭的信用を有していることがあります。この信用力や誠実性を示すために、許可申請では以下の2種類の税に関する証明書の提出が求められます。

①法人または個人事業主の「事業税」の納税証明書

建設業許可(知事許可)の審査で最も重要視されるのが、事業税の納税状況といえます。事業税は事業活動にかかる都道府県税です。発行先は県税事務所(東京都は都税事務所)になります。

法人:法人事業税
個人事業主:個人事業税

②法人または個人事業主の「国税」の納税証明書

事業税に加え、以下の国税についても、滞納がないことを証明するために提出が求められます。発行先は税務署になります。

法人:法人税、消費税及び地方消費税
個人事業主:所得税、消費税及び地方消費税

原則として、許可申請の直前の直近1期分(1年分)の確定申告に基づく納税証明書が必要です。

納税証明書の具体的な取得方法と種類

納税証明書は、税金を納めている窓口(税務署、県税事務所など)で取得しますが、その種類や名称は自治体によって異なります。
当事務所は神奈川県にありますので、今回は神奈川県と東京都のケースで見ていきたいと思います。

①事業税の納税証明書

取得場所

神奈川県:神奈川県県税事務所
東京都:東京都主税事務所

証明書の種類

神奈川県:「未納の徴収がないことの証明」を請求
指定の様式を使用し、未納がないことを証明します。

東京都:「納付すべき額及び納付済額」が記載された証明書を請求
証明書上で未納額がゼロであることを確認します。

留意点

神奈川県:「未納がないこと」を証明する書式が用意されています。
東京都:「完済証明書」という名称の証明書は一般的ではありませんが、提出された証明書で未納がないことを厳しく確認されます。

②国税(法人税、所得税、消費税等)の納税証明書

これは国税に関する証明書です。
取得場所:会社の所在地を管轄する税務署
証明書の種類:
様式その1(納税額等証明書)で納税額、所得金額などを証明
様式その2(未納の税額がないことの証明書)で建設業許可申請で求められるのは、この「未納がないこと」を証明する書式となります。

納税証明書でつまずかないためのチェック事項

納税証明書に関する最も重要なことは滞納(未納)の扱いです。

滞納があっても証明書は発行されるが、許可は下りない

納税証明書、特に国税の「様式その1」や「地方税の一般証明書」は、たとえ滞納(未納)があっても、請求すれば発行されます。証明書には、課税額、納付済額に加えて、滞納(未納)がそのまま記載されます。
しかし、建設業許可の審査において、税金に未納額が記載されている証明書を提出した場合、財産的基礎または誠実性の要件に欠けると判断され、許可は原則として下りませんので注意が必要です。

滞納がある場合の鉄則

万一、滞納があることが判明した場合は、以下の手順で対応することが肝要です。

直ちに完納する

納付期限を過ぎた未納分は、延滞金も含めて全額を支払います。これが最優先事項です。

納付の確認期間を待つ

納付をしても、税務署などのシステムにその情報が反映され、証明書に「未納額ゼロ」と記載されるまで、通常数日から2週間程度はかかります。

完納後の証明書を再取得する

納付情報が反映されたことを確認してから、改めて証明書を請求します。この「未納額ゼロ」の証明書をもって、初めて建設業許可申請に利用できます。

有効期限に注意

納税証明書には、明確な有効期限の記載はありませんが、建設業許可申請では、発行から3ヶ月以内など、申請日時点で直近の情報であることが求められます。他の必要書類の準備が整い、申請の目処がたってから取得するようにしましょう。

確定申告・完納が大前提

納税証明書は、確定申告が完了し、それに基づく納税義務が発生していることが前提で発行されます。特に新規法人など、直近1期分の確定申告がまだの場合は、設立届出書の写しなどで代用しますが、決算が到来しているにもかかわらず、申告・納税を怠っている場合は、まずはそれらを完了させることが急務です。

神奈川県や東京都など、どの自治体で申請する場合でも、求められる証明書の名称や形式は異なるものの、直近の税金を完納していることを証明するという、本質的な要件は変わりません。
納税証明書の取得や、建設業許可申請に関する疑問、ご不安をお持ちの方は、是非当事務所へご相談ください。複雑な手続きを代行し、建設業許可に向けたサポートをさせて頂きます。

グラス湘南行政書士事務所