建設業許可申請の準備を進めるなかで、履歴事項全部証明書という書類の提出が求められます。これは何の書類で、どこで取得するのか疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、建設業許可申請において、なぜ履歴事項全部証明書が必要なのか?また、その取得方法について解説します。

履歴事項全部証明書とは?

履歴事項全部証明書とは、会社の基本的な情報と過去の重要な変更履歴(履歴事項)をすべて記載した公的な書類です。
法務局に登記されている株式会社や合同会社などの法人が、申請時点で有効な情報に加えて、証明書発行日から3年前の1月1日以降に変更された事項を記載して証明するものです。

記載されている主な内容は?

履歴事項全部証明書には、会社の戸籍ともいえる重要な情報が記載されています。具体的には以下のような事項です。
・商号(会社名)
・会社(本店)の所在地
・会社の設立年月日
・目的(会社の事業内容)
・資本金の額
・発行可能株式総数、発行済株式の総数及び種類
・役員に関する事項(代表取締役、取締役などの氏名、住所、就任・退任など)
・支配人に関する事項

これらの情報により、会社の同一性や沿革であったり、現在の経営体制を公的に証明することができます。

建設業許可申請でなぜ必要なの?

建設業許可申請は、建設業を営んでいるという事実だけではなく、その会社が適切な経営体制と社会的な信用を有しているかを審査する手続きといえます。
履歴事項全部証明書は、この審査において以下の重要な役割を果たしています。

会社の存在と同一性の証明

履歴事項全部証明書は、申請者が法的に実在する法人であることを証明する、最も基本的な公的書類です。商号や本店所在地、設立年月日を確認し、申請書に記載された情報と一致しているかを照合します。

資本金・事業目的の確認

資本金の額は、建設業許可の要件の一つである、財産的基礎の判断材料となり得ます。また、事業目的に建設業の記載があるか、申請する業種に関する記載があるかを確認することで、その法人が建設業を営むことを前提として設立・運営されているかチェックします。万一、記載がない場合は、目的変更の登記が必要になることがあります。

役員構成の確認

役員に関する事項は、経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者の要件審査と密接に関わってきます。
役員の氏名や就任年月日を確認することで、経営経験の期間や経営体制の継続性、安定性を裏付けることができます。
また、申請する役員が、過去に法令違反などで許可を取り消された者など、欠格要件に該当しないかどうかの審査にも用いられます。

履歴事項全部証明書の取得方法は?

履歴事項全部証明書は、全国の法務局(登記所)で、取得することができます。
会社の所在地にかかわらず、最寄りの法務局で請求できます。
主な取得方法が以下の3つです。

1.窓口で申請する

窓口で備えてある交付申請書に会社の商号や所在地を記入します。1通につき600円の手数料がかかります。収入印紙を法務局内で購入し、支払います。

2.郵送で申請する

郵送申請は法務局に行く手間がなく、忙しい方には有効です。
交付申請書と手数料分の収入印紙、返信用封筒(切手を貼付し、宛名を記入)を同封し郵送します。ただし、窓口申請では当日交付を受けることができますが、郵送申請の場合は、郵送にかかる日数を考慮する必要があります。許可申請の期限に間に合うように、余裕をもって申請することが肝要です。

3.オンラインで請求する

オンライン申請は、最も早く手数料も安価になる方法です。
ただし法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用する必要があります。
専用のソフトをインストールし、会社の情報を入力して請求します。交付方法は郵送または指定の登記所窓口での受け取りが選べます。
手数料は窓口申請よりも安く、自宅や事務所から申請できるため便利です。

取得の際の注意点は?

1.異なった証明書の取得に注意

誤って「現在事項証明書」や「閉鎖事項証明書」を請求してしまうと、許可申請には使えませんので注意が必要です。必ず「履歴事項全部証明書」を取得して下さい。

2.有効期限に注意

建設業許可申請では、提出する履歴事項全部証明書について、発行から3ヶ月以内という有効期限が定められています。但し、都道府県や申請の種類(新規・更新・変更など)によって異なる場合がありますので、事前に管轄の許可行政庁へ確認しましょう。

3.旧商号・旧本店所在地も確認

会社の沿革を証明するため、3ヶ月以上前に商号や本店所在地を変更した場合、旧情報が履歴事項全部証明書に記載されているか確認するようにして下さい。記載が不十分な場合は、さらに過去の情報が記載された閉鎖事項証明書の提出が必要になる場合があります。

まとめ

履歴事項全部証明書は、会社の概要でもあり、建設業許可申請における経営体制や信頼性の裏付けとなる重要な書類です。
スムーズな許可取得のためには、この書類が最新の書類であり、かつ有効期限内であることを確認し、他の必要書類と合わせて早めの準備を進めることが肝要です。
手続きに不安のある方は是非、当事務所へご相談ください。
グラス湘南行政書士事務所