今回は、29業種ある業種の中でも、特に他の業種との境界線が曖昧になりやすい左官工事にスポットを当てます。左官工事だと思っていたけれど、実際は塗装工事だったり、防水工事だと言われたけれど、左官工事でいけるのか、といった疑問を解消できるよう詳しく掘り下げていきたいと思います。
左官工事にはどんな工事が該当するの?
左官工事とは、工作物にこて塗り、吹き付け、貼り付け等により、壁、床、天井等の仕上げを行う工事、またはそのための下地を作る工事と定義されています。
日本の伝統的な建築技法から最新のモルタル仕上げまで、非常に幅広い技術が含まれます。壁を塗るのみならず、構造物の耐久性や美観を左右する下地作りから仕上げまでを一貫して担うのが左官工事の大きな特徴といえます。
①左官工事に該当する具体的な工事例
建設業許可事務指針(ガイドライン)によると、具体的には以下の工事が左官工事に該当します。
・こて塗り、吹き付け等
・モルタル工事
・モルタル防水工事
・吹付工(モルタル吹付)
・とぎ出し工事
・洗い出し工事
②左官工事の役割と重要性
左官工事は、表面塗装だけではありません。コンクリートの骨組みの上に、モルタルを薄く、かつ均一に塗ることで、建物の気密性を高めたり、火災に強い壁を作ったりする役割があります。また、最近では珪藻土(けいそうど)や漆喰など、自然素材を用いた環境住宅への関心が高まっており、意匠性の高い左官工事の需要も評価されています。
混同しやすい他の専門工事との決定的な違いとは?
左官工事は、塗る、貼る、吹き付けるという工程が含まれるため、他の専門工事と非常に混同されやすいのが特徴です。ここでは、実務上特にとくある混同例を挙げ、その違いを整理します。
①左官工事と塗装工事
最も多いのが、塗装工事との混同といえるのではないでしょうか。
どちらも壁を仕上げるという点では共通しています。
左官工事
主に「こて」や「吹き付け」を用いて、厚みのある材料を塗り、形を整えながら仕上げます。下地調整も含まれます。
塗装工事
主に「刷毛」「ローラー」「スプレー」を用いて、塗料を塗布し、皮膜を作ります。
判断するポイントとしては、使用する材料が厚みを持って形を作るものであれば左官工事、色を付けたり、表面を保護する薄い膜を作るものであれば塗装工事と判断するのが一般的です。
②左官工事と防水工事
モルタル防水という言葉があるため、防水工事との区分が難しい場合があります。
モルタルに防水材を混ぜて塗る工事。これは左官の技術がメインとなるため、左官工事に分類されます。一方、防水工事は、アスファルト防水、シート防水、ウレタン塗膜防水など、防水を主目的とした専用の材料を用いる工事です。
③左官工事とタイル・れんが・ブロック工事
仕上げとしてタイルを貼る場合、どちらの許可が必要か迷うことがあります。
モルタルを使用して下地を作り、その延長としてタイルを貼りつける場合は左官工事に該当します。一方、タイル・れんが・ブロック工事は、タイルの貼り付けそのものが主目的である場合です。
④左官工事ととび・土工工事
同じモルタルやコンクリートの吹き付けでも、目的によって業種が分かれます。
左官工事は建物の壁などを仕上げるためのモルタル吹付です。一方、とび・土工工事は、法面の崩落を防ぐために行うコンクリート吹付です。
| 比較項目 | 左官工事 | とび・土工工事 |
| 主な目的 | 建物の仕上げ・下地作り | 基礎工事・足場・法面保護 |
| 吹き付け対象 | 建物の壁、床面など | トンネル壁面、道路の法面など |
| 使用材料 | モルタル、漆喰、土 | コンクリート、セメントミルク |
左官工事の許可取得に必要な営業所の技術者(専技)の要件
左官工事の一般建設業許可を取得するためには、営業所ごとに技術者(専技)を置く必要があります。以下のいずれかに該当する人がいれば、資格要件を満たすことができます。
①国家資格を保有している場合
以下の資格を持っていれば、実務経験が短縮、あるいは不要になります。
・1級建築施工管理技士
・2級建築施工管理技士(仕上げ)
・技能検定:左官(1級・2級・3級)
なお、技能検定の2級と3級は、合格後1年から3年以上の実務経験が必要です。
②10年以上の実務経験がある場合
資格がなければ、左官工事に関する実務経験が10年以上あれば技術者(専技)になれます。なお、実務経験は学歴によって、5年または3年に短縮されます。
まとめ
左官工事は、伝統的な手仕事から現代的な吹付技術までを含む奥の深い業種といえます。しかし、それゆえに塗装や防水、とび・土工工事との線引きを誤ると建設業法違反や最悪な場合、ご本人に自覚がなくても虚偽申請とみなされるリスクがあります。
工事の内容は、仕上げか補強なのか、また使用する材料は厚みのあるものか、液状なのかなど・・これらを分析し、適正な業種で許可を取得することが、安定した経営の基盤となります。もし、ご自身の行っている工事が左官に該当するか確信が持てないという方は、ぜひ当事務所へお気軽にご相談ください。最適な許可取得に導き、スムーズな申請を行います。
「グラス湘南行政書士事務所」