建設業界は大きな転換期を迎えています。慢性的な人手不足、技術者の高齢化という喫緊の課題に対し、デジタルトランスフォーメーション(DX)がその解決の肝として期待されています。しかし、「高度なシステムが人の役割を代替できるようになったら、建設業許可の根幹である技術者要件はどうなってしまうのか?」という疑問を抱くことがあります。
今回は、建設業許可制度の基本に立ち返りつつ、DXの進展が特に技術者の配置に関する規制にどのような影響を与え、そして私たち行政書士の役割がどう変化していくのかについて、現時点での法的な枠組みと今後の展望を交え、私なりの予想をつぶやきたいと思います。
建設業許可の基本と技術者要件
建設業許可制度は、建設工事の適正な施工と発注者の保護を目的として、建設業法に基づき運用されています。この制度の根幹の一つが技術者要件です。
具体的には、営業所に置かれる専任技術者と、各工事現場に配置される主任技術者・監理技術者がこれにあたります。これらの技術者は、資格や実務経験を有しているのみならず、工事の品質や安全を確保するための監督・指導・管理を現場で責任をもって行う人として非常に重要な役割を担っています。現行の建設業法は、この人の力が適正な施工を担保する、という考え方を基本として成り立っているのです。
建設業におけるDXの具体的な進展
近年、建設現場ではDXが目覚ましいスピードで進んでいます。特に注目するべきは、次の技術導入です。
BIM/CIMの活用
3次元モデルを用いて設計から施工、維持管理までを一貫して行うことで、情報の共有とミスの削減を実現します。
ドローン・3Dスキャナー
測量作業を大幅に効率化し、正確な現況データを瞬時に取得可能にしました。
IoT・センサー技術
現場の安全管理や品質管理のデータをリアルタイムで収集・分析し、人の判断を補助します。
AIによる設計・積算支援
過去のデータに基づき、最適化された設計案を提示したり、積算業務の精度と速度を向上させたりしています。
クラウド・電子化
バックオフィス業務である契約書管理、請求書発行、そして許可申請手続き自体も電子化が進み、大幅な効率化に寄与しています。
これらの技術は、従来の人の経験と勘に頼っていた部分をデータとシステムで補強・代替し始めており、特に若手技術者が不足する中で、生産性向上に欠かせないものとなっています。
技術者の代替に関する現在の法的位置づけ
現在、高度なシステムが一部の業務を代替しつつあっても、建設業許可における技術者要件の配置自体を、システムが全面的に代替することができません。現行法は、あくまで人が資格と経験をもって技術的な責任を負うことを要求しているからです。
ただし、技術革新に対応するための動きも出てきています。国土交通省が推進する「i-Construction」はその代表例です。情報化施工やBIM/CIMの活用を前提とした工事では、一定の条件下で技術者の配置基準が緩和されたり、現場の生産性向上が図られたりしています。これは、DX技術が人の役割を補助し、効率化に寄与していることを評価するものであり、人の配置そのものを不要とするものではありません。
現時点での緩和は、あくまで特例的なものであり、基本的な許可制度の骨格は維持されています。しかし、これらの特例は、将来的な法改正の方向性を示唆しているとも考えられます。
行政書士が考える技術者の代替の未来
技術者の代替は段階的に進行していくことは予想されますが、それは人の配置という原則がすぐに崩れるわけではなく、施工能力の担保はシステムを活用できる人へとシフトされる形になると予想しています。
具体的な変化としては、以下の点が考えられます。
①システム利用能力の評価導入
BIM/CIMや情報化施工に関するスキルを、従来の資格や実務経験と同等、あるいはそれ以上に評価する仕組みが導入される可能性があります。つまり、ただの土木施工管理技士ではなく、BIM/CIMを活用できる土木施工管理技士が、特定の工事においてより高い評価を得るようになるかもしれません。
②配置基準の柔軟化
特に小規模な工事や、完全にデジタル化され、遠隔監視・指示が可能な現場において、専任技術者や主任技術者の常駐義務が、より柔軟な遠隔管理へと置き換わる可能性があります。ただし、最初は品質・安全への影響が少ない分野から徐々に適用されていくと思われます。
③審査基準の重点移行
許可審査において、申請企業のDX導入状況や情報セキュリティ体制が、従来の経営管理体制と同等に重要な評価項目となるかもしれません。
これらにより、現場の負担軽減につながりますが、同時に技術者には高度なデジタルツールの習熟が必要となることが予想されます。
行政書士の役割はどう変わるか
DXが加速する中で、私たち行政書士の役割も変わらざるを得ません。
まず、許可申請手続き自体が電子申請へと完全に移行すれば、書類作成・提出という従来の役割はシステムに代替されていきます。しかし、それ以上に重要なのは、DXを導入した建設会社の適正な事業運営を支援するという新たな役割といえます。
法改正への対応アドバイス
新しい技術者要件、配置基準、審査基準など、刻々と変化する法制度の情報を正確に把握し、顧問先企業が円滑に対応できるよう、具体的な申請プランや配置計画の策定をサポートします。
DX時代の技術者配置コンサルティング
「このシステムを導入した場合、現場への技術者配置はどのように最適化できるか」といった、法と技術の境界線にある複雑な問題について、企業とともに解決策を探ります。
まとめ
建設業界におけるDXは、効率化のみならず、業界の持続可能性を左右する避けては通れない流れといえます。技術革新は、法律と制度に影響を与えますが、業界の未来を築くための機会と捉えます。
今後も法改正の動向を注視し、適正かつ発展的な事業運営ができるよう、全力でサポートさせて頂きます。お困りごとやご相談されたいことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
「グラス湘南行政書士事務所」