一定規模以上の建設工事を請け負う場合は、建設業許可の取得が必要です。許可が必要であるにもかかわらず、無許可で工事を行った場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という処罰が科されますので注意が必要です。建設業許可を取得することで、社会的信用が上がり、受注拡大の機会にも繋がる可能性があり、様々なメリットを得ることができるのも事実です。現状は「軽微な工事」のみを請け負っている方でも、将来的に一定規模以上の工事を請け負える準備をしてみてはいかがでしょうか。
「許可取得は難しいイメージがある」「要件に当てはまっているか分からない?」そのような方に向けて、今回は建設業許可の6つの要件について解説します。

建設業許可の6つの要件

建設業許可には主に下記の6つの要件をクリアする必要があります。
1常勤役員等(経管)の設置
2営業所技術者等(専任)の設置
3財産的基礎
4誠実性の確保
5欠格要件
6適切な社会保険への加入
                                     これら6つの要件を一つでも欠けると許可取得は厳しくなります。以下、それぞれの要件について解説します。

常勤役員等(経管)の設置

2020年の建設業法改正により経営業務の管理責任者(経管)は、名称と要件が変更されました。改正後の名称は常勤役員等「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者」となります。この要件のクリアには個人に依存することからハードルが高い傾向にありました。これは組織全体で経営管理を行う体制で、要件がクリアできれば認められます。会社組織全体としてみれば、緩和といえるのではないでしょうか。

営業所技術者等(専任)の設置

2024年の建設業法改正により、「専任技術者」の名称が許可の区分に応じて変更となりました。
一般建設業許可:営業所技術者
特定建設業許可:特定営業所技術者
これらを総称して「営業所技術者等」と呼んでいます。この名称変更には、技術者が営業所に常勤で配置される役割であることを明確にするためです。
従来は営業所の専任技術者は工事現場の主任技術者や監理技術者との兼任が原則、認められていませんでした。 今回の法改正により以下の条件を全て満たす場合に限り、営業所技術者が工事現場の主任技術者や監理技術者を兼務することが可能になりました。
・請負代金の額が1億円未満(建築一式工事の場合は2億円未満)であること
・兼任する工事現場の数が1現場までであること
・営業所と工事現場との距離が、1日で巡回可能であり、移動時間が概ね2時間以内であること
・工事現場の状況を情報通信機器等を利用して、リアルタイムで確認できること
・下請次数が3次以内であること
この改正により技術者の効率的な配置が可能となり、生産性の向上や人材不足の緩和が期待されています。

財産的基礎

財産的基礎要件については一般建設業許可と特定建設業許可で要件が異なります。
〈一般建設業の要件〉
下記のいずれかに該当すること
・直前の決算において自己資本の額が500万円以上であること
・500万円以上の資金調達能力があること
・直前5年間許可を受けて継続して営業した実績のあること

〈特定建設業の要件〉
直前の決算において下記の①~③の要件すべてに該当すること
①欠損の額が資本金の20%を超えないこと
②流動比率が75%以上であること
③資本金が2000万円以上であり、かつ、自己資本が4000万円以上であること

誠実性の確保

誠実性とは一言で言うと「不正や不誠実な行為をする恐れがないこと」です。
例えば不正とは契約内容を偽ったり、虚偽の申告をしたり法律やルールに違反する行為をいいます。不誠実とは手抜き工事や代金を支払わないなどが挙げられます。また過去にも法律違反や不正行為、不誠実な行為をしていないことなどが求められます。

欠格要件

以下に該当する場合は許可を受けることが出来ません。
・成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権を得ない者
・不正の手段により許可を受けたことにより許可を取り消され、その取り消しの日から5年を経過しない者
・建設工事を適切に施工しなかったために、公衆に危害を及ぼしたとき、または危害を及ぼす恐れがあるとき
・請負契約に関して不誠実な行為をしたことにより、営業の停止を命ぜられ、その停止期間が経過しない者

適切な社会保険への加入

2020年の建設業法改正により社会保険への加入が義務化されました。社会保険とは健康保険、厚生年金保険、雇用保険を指します。原則として従業員が一人でもいれば社会保険に加入する義務が生じます。
建設業許可取得は単に書類を揃えるだけではなく、各要件を正確に理解し、適切な証明書類を準備する必要があります。特に常勤役員等や営業所技術者等の要件は個々の経歴や資格によって判断が分かれることがあるため、専門的な知識が求められます。
当事務所では建設業許可申請を代行しています。お気軽にご連絡下さい。

グラス湘南行政書士事務所