建設業許可の要件として、「経営業務の管理責任者(常勤役員等)」は大きなハードルではないでしょうか。常勤役員の要件は、2020年の建設業法改正により、多様な人材が常勤役員等となる道が開かれ、会社組織全体として、常勤役員の要件を認めるという改正内容となりました。その一つに「建設業に関する2年の役員等としての経験を含む、5年以上役員等(建設業以外を含む)としての経験を有する者」という要件があります。

これは、建設業の経営経験がなくても、他の業界での経営経験があれば、常勤役員等になれる可能性がある要件です。

神奈川県 建設業許可 手引き 抜粋

「5年以上役員等(建設業以外を含む)としての経験を有する者」が生まれた背景

この要件が新設された背景には、やはり建設業界の人手不足が挙げられます。建設業の役員経験が5年以上という条件のみでは、異業種から建設業界に参入したい企業や人手にとって、大きな障壁となっていました。そこで建設業界に限らず、経営全般の経験があれば、建設業界の知識、経験は、常勤役員を補佐する専門的な人材を配置することで、補えるという考えのもと、この要件が設けられました。

具体的な要件は?

具体的な要件としては、以下の2つの経験を合計して5年以上あれば、要件として満たせます。
• 建設業における役員等としての経験が2年以上あること(これは絶対条件です)
• 建設業以外の業界における役員等としての経験が3年以上あること

建設業における役員等としての経験が3年以上で、建設業以外の業界における役員等としての経験が2年でも認められることになります。
若干ややこしいので、判断例を提示します。

建設業としての役員経験2年 + 他業種としての役員経験5年 
= 絶対条件を満たし合計5年以上であるためOK

建設業としての役員経験4年 + 他業種としての役員経験1年
= 絶対条件を満たし合計5年以上であるためOK

建設業としての役員経験2年 + 他業種としての役員経験2年
= 絶対条件は満たしているが、合計5年未満であるためNG

建設業としての役員経験1年 + 他業種としての役員経験4年
= 合計5年以上は満たしているが、絶対条件が満たされておらずNG

証明書類は何が必要?

建設業の役員経験を証明する書類

履歴事項全部証明書:在任期間を確認します
工事請負契約書や注文書など:建設業に携わっていたことを証明します

建設業以外の役員経験を証明する書類

履歴事項全部証明書:在任期間を確認します
確定申告書:個人事業主の場合

これらの書類は、経験年数分を提出する必要があり、履歴事項全部証明書に記載された就任・退任年月日です。これが5年分(建設業2年、他業種3年)きっちり揃っている必要があります。もし途中に空白期間があったりすると、その期間は経験として認められず、要件を満たせない可能性があります。
また、許可行政庁での個別認定や事前相談が必要になる場合がありますので、必ず事前に管轄の行政庁に問い合わせる必要があります。

この要件で許可を取得するには補助者が必要

ただ役員経験を5年証明するだけでは不十分です。この常勤役員等を直接に補佐する者を配置する必要があります。この補佐者には、以下のいずれかの経験を持つ者を、許可を受けようとする会社に常勤で置くことが義務付けられています。

建設業の財務管理、労務管理、業務運営の経験がそれぞれ5年以上ある者

この補助者制度があるからこそ、建設業の経験が少ない役員でも、専門家を補佐につけることで、会社として健全な経営体制が構築できるとみなされるのです。

財務管理:工事施工に伴う、資金調達や資金繰りの管理、取引業者への代金支払いなどに関する業務経験をいいます。

労務管理:社内や工事現場での勤怠管理や社会保険などの手続きに関する業務経験をいいます。

業務運営:会社の経営方針や策定、実施に関する業務経験をいいます。

当事務所では建設業許可申請を承ります。この要件に当てはまるか確認したいという方は、ぜひ当事務所へご相談下さい。

グラス湘南行政書士事務所