建設業許可を取得すると、看板の設置が義務付けられます。この看板は建設業許可票のことで、建設業界内では「金看板」と呼ばれることが多いようです。この設置を怠ると建設業法違反となってしまいますので、忘れずに設置を行う必要があります。
今回は、建設業許可の看板について、記載事項や見落としがちな点について解説していきたいと思います。
建設業許可の看板設置はなぜ義務なの?
建設業法第40条に看板設置の定めがあります。
(標識の掲示)
第40条 建設業者は、その店舗及び建設工事(発注者から直接請け負つたものに限る。)の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令の定めるところにより、許可を受けた別表第一の下欄の区分による建設業の名称、一般建設業又は特定建設業の別その他国土交通省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。
建設業許可を取得した事業者は、店舗や事務所、建設工事の現場ごとに、定められた標識を「公衆の見やすい場所」に掲示する義務があります。なぜ設置が義務化されているのかですが、工事をする業者が、適切な許可を受けた業者であることが看板を見て分かるようにするためです。また万一、工事で災害事故が起きてしまった場合、責任の所在を明らかにする目的もあります。業者が看板を設置していなければ、どんな業者が何の工事をしているか分かりません。無許可業者との取引を避けるためにも重要な役割を果たしています。
どんな看板を設置すればいいの?記載事項とルールは?
単に看板を設置すれば良いわけではありません。看板には記載するべき事項が建設業法施行規則第25条で定められています。
(標識の記載事項及び様式)
第二十五条 法第四十条の規定により建設業者が掲げる標識の記載事項は、店舗にあつては第一号から第四号までに掲げる事項、建設工事の現場にあつては第一号から第五号までに掲げる事項とする。
一 一般建設業又は特定建設業の別
二 許可年月日、許可番号及び許可を受けた建設業
三 商号又は名称
四 代表者の氏名
五 主任技術者又は監理技術者の氏名
2 法第四十条の規定により建設業者の掲げる標識は店舗にあつては別記様式第二十八号、建設工事の現場にあつては別記様式第二十九号による。
具体的にまとめると以下の内容となります。
【事務所・店舗に設置する場合】
・商号または名称
・代表者の氏名
・一般建設業または特定建設業の別
・許可年月日、許可番号及び許可を受けた業種
【建設工事の現場に設置する場合】
・商号または名称
・代表者の氏名
・主任技術者または監理技術者の氏名
・一般建設業または特定建設業の別
・許可を受けた業種
・許可番号
・工事内容
・工期
特に建設工事の現場に設置する看板には、主任技術者や監理技術者の氏名を記載する義務があります。これは、現場の責任者を明確にし、発注者などの関係者が見てすぐに分かるようにするためです。
看板は行政庁から送られてくるの?
看板は送られてきません。ご自身で用意しなければならないのですが、看板作成会社に依頼するのが一般的です。なお、許可がおりた場合、行政庁から建設業の許可通知書が送られてきますので、許可通知書が届いたら看板を作成する必要があります。
看板の材質は何でもいいの?
看板の材質は特に指定がないため、何でもいいとされています。しかし、看板は「公衆の見やすい場所に掲げる」という義務のもと、屋外に設置されることが多いため、紙などの材質はおすすめしません。耐久性を考えてアクリル板やプラスチック版、または金属板などが望ましいです。
あとは加工のしやすさも重要です。建設業を継続していると記載内容の変更等が発生します。その際にも文字の印刷や彫刻が容易ほうがよいでしょう。
看板のサイズは決められているの?
看板のサイズについては決まりがあります。事務所用と現場用とでサイズに関する規格は異なります。
事務所・店舗用の看板:縦35cm以上、横40cm以上
工事現場用の看板:縦25cm以上、横35cm以上
この規格は、最低限満たさなければならない大きさです。これより小さくならないよう注意しましょう。また、看板に記載する文字の大きさについては、明確な定めはありません。しかし何度も言っていますが「公衆の見やすい場所に掲げる」という義務の観点から、遠くからでもはっきりと見える文字サイズにする必要があります。
「建設業許可申請の手引き」 神奈川県 引用

見落としがちな注意点
1.事務所と現場で看板が異なる
事務所用の看板と現場用の看板で、記載事項が異なります。現場用の看板には主任技術者などの氏名や工事内容が記載する必要がありますので注意が必要です。
2.常に最新の内容に更新する必要がある
建設業許可には、更新や変更届の提出が必要な場合があります。5年ごとに建設業許可は更新申請を行わなければなりませんし、代表者などが変更となった場合は、変更届の提出が必要となります。その都度、変更に合わせて看板の記載内容も最新の内容に修正しなければなりません。古い内容のまま放置をしてしまうと、これまた建設業法違反となりますので注意しましょう。
3.「公衆の見やすい場所」の定義
単に看板を事務所に置いておけば良いわけではありません。「公衆の見やすい場所」とは通行人や来客者が、事務所の外からでも確認できる場所のことをいいます。このように誰でも確認できる見やすい場所に設置する必要があります。
4.許可の有効期間に注意する
建設業許可には5年ごとの更新があります。更新を怠ると建設業許可はなくなってしまい無許可業者となってしまいます。許可が失効したにもかかわらず、看板を提示したままにしておくと、無許可営業と誤解されるリスクが生じ、建設業法違反となる可能性がありますので十分に注意しましょう。
建設業許可の看板は、ただの義務ではなく、建設業法に則って責任ある工事を行うという「信頼の証」ともいうべきものです。看板の設置、許可内容の変更と手続きについてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。