「次の決算で会社の自己資本が500万円を下回りそうだ。建設業許可はこのまま取り消されてしまうのかな?」
建設業許可業者の方で、この様な不安に駆られている方もいらっしゃるのではないでしょうか? 結論から言うと次の決算で要件が満たせなかったからといって、すぐに許可が失効することはありません。 確かに建設業許可の要件には財産的基礎要件を満たさなければなりません。
そもそも「財産的基礎要件」って何?
財産的基礎要件とは、安定した事業を継続的に行うための資金力を証明するために設けられたものです。
これは、工事の途中で会社が倒産してしまったり、取引先への支払いが滞ってしまったりする事態を防ぐためです。
この要件が確認されるのは、新規申請時の他、許可の更新時や業種追加を申請する時です。
建設業許可にかかせない財産的基礎要件について「一般建設業」と「特定建設業」のそれぞれのケースで異なります。
「一般建設業」:原則として、自己資本の額が500万円以上あること、または500万円以上の資金調達能力があることが求められます。
「特定建設業」:特定建設業は下請けに出す工事の金額が大きい場合に必要となるため、一般建設業よりも厳しい基準が設けられています。下記のすべてに該当することが求められます。
・欠損の額が資本金の20%以内であること
・流動比率が75%以上であること
・資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること
なぜ決算で自己資本が足りなくなるの?
たとえ利益が出ていたとしても、決算書上の自己資本額は、単に利益の積み重ねだけで決まるものではありません。例えば赤字決算が続いていれば当然に、自己資本が減少しますし、役員の借入金が多い場合や、多額の減価償却費を計上した場合も要因となります。 役員からの借入金は、簿記上は負債として計上されるため、自己資本を押し下げてしまうことがあります。
また減価償却費の計上においても利益が圧縮され、結果的に自己資本が減る要因となります。
財産的基礎要件が足りなかった場合の対策
財産的基礎要件が足りなかった場合でも、いくつかの対策を講じることができます。
1.一般建設業の場合は500万円以上の資金調達能力を証明する
自己資本が500万円未満でも、金融機関からの残高証明書や融資証明書などで500万円以上の資金調達能力があることが証明できれば、要件を満たすことができます。
2.増資を行う
こちらは最も確実的な方法です。増資を行うことで自己資本を直接的に増やすことができます。但し、増資には株主総会の決議や登記手続きが必要なため、時間と手間がかかります。また増資後もその資金を維持する必要があるため、一時的な対策とならないように計画的に行う必要があります。
3.役員借入金の資本金への振替
役員からの借入金が自己資本を圧迫している場合、借入金を資本金に振替える方法があります。ただし、法務局への手続きが必要となるため、専門家への相談が不可欠となります。
4.決算期を待って次期決算で証明する
財産的基礎要件の確認は決算ごとに行われるものではなく、許可申請直前の決算内容で行われるため決算変更届を持って財産的基礎の要件が確認されるわけではありません。つまり財産的基礎要件が満たさないからといって直ちに許可がなくなる訳ではありません。
このことから、申請までに時間があるのであれば次の決算で自己資本を増やす計画も一つの方法です。
主には売上を増やし、経費を削減する努力をします。また不要な資産があれば売却を検討しても良いでしょう。
ただし、この方法は時間がかかるため、許可取得や更新を急ぐ場合は、向きません。
一般建設業の場合、過去5年間継続し、建設業許可を受けて営業した実績があることをもって、財産的基礎要件を満たしているとみなされます。この営業実績は「決算変更届」によって確認されますので、毎年きちんと提出していれば、更新時に改めて500万円以上の自己資本を証明する必要がありません。 ただし、決算変更届の提出を怠っていると、行政庁は継続して建設業許可を受けて営業した実績が確認できないため、新規申請時と同様に財産的基礎を証明しなければならない場合があります。
特定建設業の場合は、前述したとおり、直前の決算期における財産的基礎要件を全て満たしている必要があります。そのため、更新前の決算が要件を満たしているかどうか、注意しておく必要があります。
まとめると、財産的基礎要件は、特定建設業許可の取得時に特に重要な要件となります。 一方、一般建設業の更新時には、毎年の決算報告(決算変更届)によって要件を満たしているとみなされることが多いといえます。
それでも特定建設業許可の更新時に財産的基礎要件を満たしていない場合はどうなるの?
この場合は、特定建設業許可の更新ができないため、事前に般特新規申請を行い、一般建設業許可に変更しておかなければなりません。
般特新規申請の場合、新たに許可を取り直す訳ではないため、現在の許可番号はそのまま引き継がれます。
ただし、手続きや提出書類は新規申請と同様に複雑であるため、ご自身で申請するのは容易ではありません。
当事務所では建設業許可申請を承っています。お気軽にご相談下さい!