建設業界では、世代交代やグループ企業の再編、大手企業からの技術、経営支援として役員の出向が頻繁に行われます。その際、必ずと言っていいほど直面するのが、出向してきた役員を、建設業許可の経営業務の管理責任者に就任させられるのかという疑問です。
今回は、出向役員が経管になれる条件と、その際の注意点を解説します。

出向役員でも経管になれる?

結論からいうと、出向役員であっても、一定の条件を満たせば経営業務の管理責任者になることは可能です。
国土交通省の指針や各都道府県の審査基準においても、出向者が経管になることを一律に禁止はしていません。しかし、経管には経営経験と同じくらい重要な常勤性という壁があります。

経管に求められるハードル、常勤性とは?

建設業許可を維持するためには、経管がその営業所に常勤していなければなりません。出向役員の場合、この常勤性をどう証明するかが最大のポイントになります。
審査官は、以下の2点を厳しくチェックします。

①物理的にその営業所で働いているか?
②他の会社で常勤の仕事をしていないか?

例えば、親会社でフルタイムの代表取締役を務めながら、子会社の経管を兼務するといったケースは、原則として認められません。

出向役員を経管にするための3つの必須条件

出向役員を経管として登録するためには、主に以下の3つの要件をクリアし、それを書面で証明する必要があります。

①出向契約書の準備

出向契約書の中で、その役員が許可を受けようとする会社に出向先として、経営業務を執行するポジションに就くことが明記されている必要があります。ただし、技術指導員としての出向では、経管の要件を満たせませんので注意が必要です。

②社会保険の加入状況

ここが実務上、最もトラブルになりやすいポイントです。通常、経管の常勤性は健康保険被保険者証のコピーなどで証明します。しかし、出向者の場合、社会保険を出向元で維持したままにすることが多いかと思われます。
この場合、健康保険被保険者証に加えて、出向契約書や賃金負担の合意書などを提出し、実態として出向先で常勤していることを疎明しなければなりません。

※自治体によっては、出向先での給与支払実績の提出を求められることもあります。

③経営経験の証明(過去の経歴)

当然ながら、その役員自身に5年以上の経営業務の管理責任者としての経験が必要です。出向先での役員経験を証明するために、出向元の確定申告書や建設業許可申請書の控えなどを取り寄せる必要があります。

ここが落とし穴!よくある失敗パターン

実務でよくある要注意なケースを挙げます。

週2、3日だけ来る非常勤役員

経管は専任かつ常勤でなければなりません。他社との兼務がある場合や、出勤日数が限定されている場合は、経管として認められません。

住所が遠方すぎる

例えば、出向元の本店が東京にあり、住所もそのまま東京に置いたまま、出向先である大阪の支店で経管になる場合、通勤が可能かどうかが問われます。あまりに遠方の場合は、住居実態の証明を求められることがあります。

出向期間が短すぎる

許可を取るためだけに一時的に籍を置くようなケースは、実態がないと判断されるリスクがあります。

まとめ

出向役員を経管に据える手続きは、通常の役員就任よりも必要書類が多く、審査の難易度も高めです。特に社会保険が出向元にあるという状態は、一見すると常勤していないように見えてしまうため、理由書などの説明書類の作成が欠かせません。
また、自治体によって、出向者の常勤性を認める基準が微妙に異なるのも厄介なところです。
今後、グループ会社から役員を呼び寄せる予定がある・・
現在の経管が引退するので、親会社の役員を後任にしたい・・
そのような時は、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。
建設業許可は、一度取得して終わりではありません。役員の交代や組織の変更に合わせて、適切にメンテナンスしていくことが事業継続の鍵となります。
貴社のスムーズな経営体制構築を全力でサポートいたします。
グラス湘南行政書士事務所