近年、農業法人が経営多角化の一環として、農地の造成工事やビニールハウスの設置であったり、地域貢献として土木工事への参入を検討するケースがあります。
しかし、農業法人という形態で建設業許可を取得するには、通常の建設会社とは異なる視点と注意が必要です。
今回は、農業法人が建設業許可を取得する要件と、申請時に陥りやすい落とし穴を行政書士の視点で解説します。
農業法人でも建設業許可は取得可能?
結論からいうと、農業法人であっても建設業許可の取得は可能です。
建設業法上、許可を受けるための要件は、経営業務の管理責任者(経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者)などが定められています。法人の登記簿上の事業目的に建設業が含まれていれば、農業経営が主軸であっても建設業許可を受けることに法的な制限はありません。
技術者要件の壁
建設業許可取得における最大のハードルは、各営業所に常勤で配置しなければならない営業所技術者(専技)の確保です。
建設業の技術者要件は、指定学科の卒業に加え、実務経験または国家資格の保有などが基本です。たとえ農業土木であっても、建設業の実務経験として即座にみなされるわけではありません。
実務経験の証明
農業法人が行う農地造成などの工事実績が、建設業法上の建設工事に該当するものであると客観的に証明できなければ、実務経験として認められません。契約書、請求書、工事写真などを通じて、その工事が請負契約に基づいた建設工事であることを示せるかが肝となります。
専任性の確保
農業の繁忙期に農作業に従事し、閑散期に建設現場に出るというスタイルであっても、許可上は営業所に常駐する専任の技術者でなければなりません。農業の現場作業をメインにしている場合、この常勤性の証明が難航することがあります。
申請時に注意するべき点
申請をスムーズに進めるために、注意するべき点が3つあります。
➀定款の事業目的の確認
貴社の定款を確認してください。事業目的に「建設工事の請負」、「土木工事業」などの文言がなければ、まずは定款変更の手続きを行う必要があります。農業法人上の目的と建設業の目的が両立できるか、法務面でのチェックも忘れないようにしましょう。
➁専任技術者の常勤性
農業法人の役員や従業員が、農作業と建設業の技術者を兼務する場合、雇用保険加入状況や、社会保険の加入状況から営業所に常勤していることが証明できなければなりません。
繁忙期に遠方の農地へ長期間出向くような体制では、専任性を疑われる可能性があります。
➂施工体制の管理と安全対策
建設業許可を取得するということは、建設業法の遵守義務が発生することを意味します。それには職長教育や安全衛生責任者教育、適切な労災保険の管理体制などを整えておく必要があります。特に農業現場と建設現場では安全管理の基準が異なる場合があるため、社内の安全衛生管理体制をアップデートすることが不可欠です。
まとめ
農業法人の多角化は、地域経済の活性化や経営の安定化において有意義な事業展開といえます。しかし、建設業は国民の生命や財産に関わるものとして厳格な法規制の下にあります。
・定款に建設業の目的が入っているか
・専任技術者要件を満たす人物を常駐させられるか
・建設業法に準じた労務・安全管理体制を構築できるか
農業法人特有の事情と建設業法の要件を照らし合わせ、無理のない事業計画を立てることが最も肝要です。
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