建設業界全体で高齢化が進む中、そろそろ子に代を譲りたいという方もいらっしゃるでしょうか。
従来の建設業法では、個人事業主が亡くなったり、引退したりする場合、許可は一度失効し、後継ぎが改めて新規申請をする必要がありました。しかし、2020年10月の法改正により、事前申請を行うことで許可を切らさず承継できるようになっています。
今回は、親から子へ建設業許可をスムーズに引き継ぐための重要なポイントを解説します。

建設業許可の承継制度(事前認可)とは?

2020年の法改正で導入された承継認可という制度があります。これまでは、個人事業主である親が廃業して子が新規許可を取る際、審査期間中の数ヶ月間は無許可状態になってしまい、大きな工事が受注できない空白期間が生じるというリスクがありました。
新制度では、譲渡・譲受や相続の前に許可権者(知事など)から許可を受けることで、空白期間を作らずに、そのまま許可番号や実績を引き継ぐことが可能になりました。

改正前後の違い

項目改正前(原則)改正後(認可制度利用)
許可番号新しくなる引き継げる
空白期間数ヶ月発生するなし(継続)
過去の実績引き継ぎに工夫が必要そのまま承継可能

スムーズな承継のための3つの壁

制度が便利になったとはいえ、無条件で引き継げるわけではありません。特に以下の3つの要件(壁)をクリアしているか、事前に確認が必要です。

①常勤役員等(経管)の要件

もっとも高いハードルになるのがこの経管です。後継者であるお子様が、以下のいずれかを満たしている必要があります。

・建設業の経営経験(役員や個人事業主など)が5年以上あること。
・経営業務を補佐した経験があること(一定の条件あり)。

例えば、ずっと現場には出ていたが、経営にはタッチしていなかったという場合、すぐに承継できないケースがあります。数年先を見越した準備が不可欠です。

②営業所の技術者(専技)の確保

各営業所に常勤で配置しなければならない技術者です。

・1級・2級建築施工管理技士などの資格を持っている。
・または、10年以上の実務経験がある。

後継者本人が資格を持っていない場合は、従業員の中に要件を満たす方を確保し、引き続き雇用を継続する必要があります。また、指定学科卒業などの条件により、実務経験が10年よりも短縮されるケースがあります。

③財産的基礎の証明

個人事業の場合、500万円以上の資金調達能力(預金貯金残高証明書など)が、承継のタイミングでも求められます。事業主の交代に伴い、銀行口座の名義変更なども発生するため、タイミングを合わせる必要があります。

親子承継でよくある落とし穴

社会保険への加入が絶対条件

近年の建設業法改正により、適切な社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への加入が許可の要件となりました。法人は無条件で加入が必須となり、個人事業主は5人以上の常用労働者がいる場合、必須となります。以前は一人親方や家族経営など未加入で済んでいたケースも、承継認可もタイミングでは厳格にチェックされます。未加入の場合は、承継前に加入手続きを完了させなければなりません。

タイミングを逃すと新規申請になる

事前認可は、あくまで代替わりをする前に申請を出す必要があります。例えば、親御様が急逝された後の相続の場合は、死亡後30日以内に申請が必要です。この期限を1日でも過ぎると、許可は失効し、一から新規で取り直すことになります。実績も途絶えてしまうため、非常に大きな損失といえます。

失敗しないための事業承継ロードマップ

スムーズに引き継ぐためには、以下のステップで進めることが肝要です。

①現状診断(1年前~)

後継者の経営経験や資格の有無を確認する。

②体制構築(半年前~)

足りない要件(社会保険や資格など)を整える。

③事前相談(3ヶ月前~)

行政書士を介して、自治体の窓口と事前相談を行う。

④認可申請(2ヶ月前~)

書類を提出し、審査を受ける。

⑤承継完了

認可が下りた日から、正式に後継者が許可主となる。

まとめ

建設業許可の事業承継は、法律、財務、労務の知識が複雑に絡み合う高度な手続きといえます。
親御様が築き上げてきた歴史や、許可番号を失うことは、会社にとって大きなマイナスといえます。
うちはいつ引き継ぐのがベストか?
今のままで要件を満たしているか?
・・とお悩みであれば、まずは一度、当事務所へお気軽にご相談下さい。貴社の状況に合わせた、最適な承継プランをご提案いたします。
グラス湘南行政書士事務所