2024年の建設業法改正により「専任技術者」の名称が「営業所技術者等」に変更となりました。
建設業許可を取る際に、この「営業所技術者」の役割について疑問を持つ方もいらっしゃるかと思います。
特に「一人で複数業種の技術者になることができるのか?」という質問をよく耳にします。
結論から言うと、いくつかの条件を満たせば、一人で複数の業種の営業所技術者を兼任することは可能です。
今回は兼任するための条件と注意点について解説します。
営業所技術者とは?
営業所技術者とは、建設業許可業者の営業所に、専任で配置される技術者のことを指します。営業所技術者は、その営業所で行われる建設工事の契約や施工を監督・管理する重要な役割を担っています。つまり、許可を受けた種別の技術的知識と経験を持った人でなければなりません。
複数の業種を兼任するための条件
1.複数の業種で実務経験がある場合
建設業許可を取得するための要件として、一般的に10年以上の実務経験が必要になります。例えば土木工事で10年以上の経験を持ち、さらに舗装工事でも10年以上の経験を持っていれば、この2つの業種の営業所技術者を兼任できる可能性があります。
可能性といったのは、それぞれの業種ごとに実務経験を、個別に証明する必要があるからです。証明書類としては請負契約書の写しや発注者からの証明書など複数の書類を準備しなければなりません。
2.複数の資格を持っている場合
建設業許可取得をクリアするための資格は、多岐にわたります。例えば土木工事業と水道施設工事業の両方で許可を受けるとしたら、1級土木施工管理技士の資格を持っていれば、土木工事業と水道施設工事業の両方の営業所技術者になることができます。この場合の証明書類は国家資格者証または合格証明書です。営業所技術者本人で用意できる書類であるため、比較的兼任要件としてはクリアしやすといえます。
3.一般建設業と特定建設業を兼任する場合
建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」の2種類あります。
一般建設業:下請けに発注する工事の合計金額が税込5,000万円未満(建築一式工事は8,000万円未満)
特定建設業:下請けに発注する工事の合計金額が税込5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)
例えば「土木一式工事」は一般建設業許可を取得しており、「建築一式工事」は特定建設業許可を取得している場合で、以下の要件を満たすことで、両方の営業所技術者として兼任することができます。
「一般建設業(土木一式工事)」の技術者要件を満たしている
指定学科卒業後、土木工事の実務経験が10年以上ある、または所定の国家資格(例えば土木施工管理技士など)を保有している。
「特定建設業(建築一式工事)」の技術者要件を満たしている
1級建築士や1級建築施工管理技士の資格を保有している。
この様に、一人の技術者が複数の業種について、それぞれ求められる資格や実務経験を保有していれば、同じ営業所内で一般建設業と特定建設業の技術者を兼任できます。
これは、特定建設業が一般建設業の技術者要件よりも厳しい要件が必要であるため、特定建設業で要件をクリアしていれば、一般建設業の要件は包括していると見なされるわけです。
注意点とよくある落とし穴
上記の条件で複数の業種の兼任が可能ですが、いくつか注意するべき点があります。
1.専任性の原則
前述したように営業所技術者は「専任」でなければなりません。複数の業種を兼任する場合でも、兼任する業種について、その営業所の専任技術者として業務に従事できる状況でなければなりません。兼任することによって、物理的に業務に従事できないであろうと判断されれば、許可が認められない可能性があります。
2.証明書類の準備
こちらも前述したように、兼任の条件をクリアするためには、それぞれの業種について、技術者要件を満たしていることを証明する書類を準備する必要があります。
実務経験での証明の場合は、工事経歴書や契約書など、多くの書類が必要です。特に、過去の勤務先での経験を証明する場合は、前職の勤務先への問い合わせが、必要となる場合がありますので、計画的に進めることが肝要です。
3.複数の営業所での兼任は原則不可
今回のテーマである「一人で複数業種の営業所技術者」は、条件をクリアすれば可能ということでした。 これに関連して「複数の営業所」での兼任はどうか?という点です。
結論として、複数の営業所の営業所技術者を兼任することは、原則認められていません。 営業所技術者は、その営業所の「専任」でなければなりません。同じ会社内に複数の営業所がある場合は、それぞれの営業所に専任の技術者を配置しなければなりませんので、ここを勘違いしない様にしてください。
専任性の要件に疑問をお持ちの方は、是非、当事務所へご連絡下さい。全力でサポートさせて頂きます。