建設業許可の5年ごとに更新が必要です。日々の業務に追われていると更新手続きを見落としていたり、要件を満たさないまま期限を迎えてしまうことが少なくありません。許可が失効してしまうと500万円以上の工事を請け負うことが出来なくなり、事業に影響を及ぼしてしまいます。
今回は、建設業許可の更新が出来ないケースと陥りがちなポイントについて解説していきます。

(1)更新期限を過ぎてしまうケース

最も多い事例が更新期限を過ぎてしまうケースです。建設業許可の有効期間は5年で、有効期限の30日前までに更新申請を完了しなければなりません。

陥りがちなポイント

・有効期限の30日前から申請をすれば良いと思い込んでいるケース

複数の業種で更新期限がバラバラになり、管理が困難になっているケース

対策

更新期限の3ヶ月前から準備を開始する

異なる業種についても出来る限り、更新時期をまとめて一本化するなどの対策をする。

(2)事業年度終了変更届(決算変更届)の未提出

建設業許可業者には、毎年事業年度終了後4ヶ月以内に決算変更届を提出することが義務付けられています。この届出が1期分でも未提出の場合、更新申請自体を受付けてもらえませんので注意が必要です。

陥りがちなポイント

  • 決算変更届が税理士の決算報告書と同じものだと思われているケース
  • 更新時に5年分まとめて提出すれば良いと誤解しているケース

決算変更届は決算報告書とは別物であり、更新時にまとめて提出すれば良いものではありません。
毎年事業年度終了4ヶ月以内に提出しなければなりませんので、更新する年度も同様に提出しなければなりません。

対策

  • 決算確定後、速やかに決算変更届を作成・提出する
  • 税理士と建設業許可の専門家(行政書士)との役割分担を明確化する
  • 提出済みの控えを適切に保管する

(3)各種変更届の提出漏れ

建設業許可取得後においても会社の事項に変更があった場合、定められた期限内に変更届を提出する必要があります。こちらの変更届も未提出の場合は更新申請ができません。
変更内容によって提出期限が異なりますのでご注意ください。

〈14日以内に提出が必要〉

  • 常勤役員等(経管)の変更
  • 営業所技術者等の変更
  • 欠格要件に該当した場合

〈30日以内に提出が必要〉

  • 商号・名称の変更
  • 営業所の移転・新設・廃止
  • 資本金の変更
  • 役員の変更

陥りがちなポイント

  • 役員変更の登記は行ったが、建設業許可の変更届を忘れる
  • 本店移転時に変更届が必要だと知らない
  • 営業所技術者等の退職・異動時の手続きを怠る

対策

  • 変更届が必要な場合のチェックリストなどを用いて、変更が生じた時点で、建設業許可への影響を確認する
  • 行政書士・社労士・司法書士などの専門家の連携体制を構築する

(4)人的要件を満たしていないケース

建設業許可更新時には、新規許可申請と同様に常勤役員等と営業所技術者等が適切に配置されていることを証明する必要があります。申請時には要件を満たしていても、5年後の更新時には状況が変化していて、要件を満たさなくなっている可能性があります。要件が満たされなければ当然に更新が出来ません。

陥りがちなポイント

  • 常勤役員等の急な退職、死亡への対応遅れ
  • 営業所技術者等の転職、退職後の後任者不在
  • 常勤性の証明書類(健康保険証など)の準備不足

対策

  • 後継者の育成、確保を計画的に実施する
  • 複数の有資格者を確保してリスクを分散する
  • 常勤性を証明する書類を定期的に整理する

(5)社会保険に加入のケース

2020年の建設業法改正により、社会保険への加入が建設業許可の要件となりました。法人や従業員5名を超える個人事業主は、適切な社会保険に加入していない場合は更新ができません。

陥りがちなポイント

  • 建設業法改正前から許可を取得している業者の対応遅れ
  • 健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況の確認不足
  • 従業員数の変化に伴う加入義務の対応遅れ

対策

  • 社会保険加入状況を定期的にチェックする
  • 従業員数に変化が生じた時には加入義務を再確認する

(6)特定建設業の財産要件未達

特定建設業許可の場合、更新時にも新規取得時と同じ要件を満たす必要があります。一般建設業と異なり、特定建設業は5年毎に財産要件の審査があります。

陥りがちなポイント

  • 一度取得すれば財産要件は不要と誤解している
  • 決算内容の悪化により要件未達になる
  • 必要な財産証明書類の準備不足

(7)欠格要件に該当するケース

役員や重要な使用人が刑事罰を受けた場合、欠格要件に該当し、更新ができなくなります。それがたとえ、軽微な交通違反でも、内容によっては影響を及ぼす可能性がありますので注意が必要です。

陥りがちなポイント

  • 交通違反(無免許運転・飲酒運転など)の影響を軽視している
  • 株主や重要な使用人の経歴確認不足
  • 執行猶予中の更新への影響を軽視

建設業許可の更新ができないと事業継続に致命的な影響を与えます。失敗を防ぐために日頃からの管理体制を構築し、早めの準備開始を心掛けましょう。また、当事務所のような建設業許可を取り扱う行政書士へ依頼することによってより、更新の失敗を防止することに繋がります。当事務所へお気軽にご相談下さい。

グラス湘南行政書士事務所