宅地建物取引業を営むにあたって免許に関する各種手続きが存在します。
事務所の新設や移転、法人の組織再編などに伴い、免許換えと新規申請のどちらを行うべきか迷われる経営者の方は少なくありません。
この2つの手続きは、一見すると新しい免許を取得するという点で似ていますが、行政庁の管轄、審査期間、これまでの実績の引き継ぎ、保証協会の手続きなどにおいて決定的な違いがあります。
今回は、行政書士の視点から、免許換えと新規申請の違いと、実務上注意すべきポイントについて解説します。

免許換えと新規申請の違いとは?

免許換えとは?

免許換えとは、すでに取得している宅建業免許が変わる際に行う手続きです。
宅建業の免許は、事務所の所在地によって以下の2パターンに分かれます。

・大臣免許:2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合
・知事免許:1つの都道府県内のみに事務所を設置する場合

例えば、神奈川県知事免許を受けている事業者が、東京都内に新しく支店を設置する場合、管轄が神奈川県知事から国土交通大臣に変わるため、免許換えの手続きが必要になります。

新規申請とは?

新規申請とは、新たに宅建業免許を一から取得する手続きです。
一般的には、これから新しく宅建業を始める場合に用いられます。しかし行政実務上は、現在の免許の有効期限が切れてしまった場合や法人の合併等による組織再編の場合も、原則として新規申請の扱いになるケースがあります。

免許証番号の引き継ぎ

免許換えの場合:番号の更新と引き継ぎ

免許換えを行う場合、知事から大臣、または大臣から知事など免許の権者は変わりますが、法人の同一性が保たれている限り、宅建業免許自体は継続されます。
そのため、免許換えが完了すると、新しい免許番号が交付されますが、これまでの実績を示す「(〇)第〇〇〇〇号」の括弧書きの数字は原則として引き継がれます。 括弧書きの数字は更新回数を表しており、長年営業している信用力をそのまま維持できるのが大きなメリットです。

新規申請の場合:全く新しい番号の付番

新規申請の場合は、文字通り新規ですので、既存の番号を引き継ぐことはできません。新しく一から番号が割り振られます。
特に、以前受けていた免許の有効期限が切れてしまい、慌てて新規申請をやり直すようなケースでは、括弧書きの数字が(1)にリセットされてしまいます。信用力の観点からも、期間管理には十分な注意が必要です。

審査期間と空白期間

最も重要な点は、手続き中に営業ができるかどうかといったことではないでしょうか。
免許換えの場合:営業継続が可能(空白期間なし)
免許換えの申請を行った場合、申請後であっても、新しい免許が下りるまでの間は、従前の免許に基づいてそのまま営業を継続することができます。
そのため、免許換えの申請中だから一時的に取引をストップしなければならないという事態は発生しません。ただし、申請自体は、事務所の移転や設置の事実が発生する前に速やかに行う必要があります。

新規申請の場合:新規開業時は免許が下りるまで営業不可

新規に事業を始める場合の新規申請では、免許証が交付されるまで一切の宅建業取引を行うことはできません。
行政庁の標準処理期間は自治体や時期により変動しますが、概ね30日前後ですが、書類の補正や宅建協会・保証協会への加入手続きを含めると、申請から営業開始まで2~3ヶ月程度の期間を見込んでおくことが肝要です。

保証協会・宅建協会における手続き

宅建業を開業・維持する上で、全日本不動産協会(うさぎマーク)や全国宅地建物取引業協会連合会(ハトマーク)などの保証協会への加入は不可欠です。この保証協会に関する手続きも異なります。

免許換えの場合

管轄の都道府県が変わるため、所属する地方本部や本会の移管手続き、あるいは保証協会における所定の変更届が必要になります。弁済業務保証金分担金の追加納付が生じるケースや、所属支部の変更を伴うため、事前に各協会の事務局との綿密な連携が求められます。

新規申請の場合

新規に保証協会の入会審査と、弁済業務保証金分担金の納付を一から行います。免許申請と並行して協会手続きを進めるのが一般的なスケジュールとなります。

まとめ

比較項目免許換え新規申請(開業時)
主な対象ケース事務所の追加・移転で管轄庁が変わる場合新たに宅建業をスタートする場合
免許番号・実績継続・引継される新規(リセット)になる
申請中の営業従前の免許で営業継続が可能免許交付まで営業不可
行政庁の審査書類審査と事実確認新規基準に基づく厳格な審査

宅建業法はコンプライアンスが非常に厳しく見られる分野です。特に、事務所の移転や支店の新設に伴う免許換えのタイミングを誤ったり、無許可の状態で営業を行ったりしてしまうと、思わぬ行政処分の対象になりかねません。
免許申請に関してお悩みの方や、事業拡大を検討中の経営者様は、ぜひ一度、当事務所までご連絡ください。
「グラス湘南行政書士事務所」