国内の建設業界において、経営者の高齢化と後継者不足は深刻な課題と言われ久しいですが、法制度の整備が進んだ現在では、合併や第三者承継を活用する方法があります。
今回は、建設業許可を取扱う行政書士の視点から、事業承継の選択肢と手続き上の重要なポイントについて解説します。

後継者不在の建設会社が直面するリスクとは?

後継者が決まらないままの状態であると、経営者自身に万が一の事態が起きた際、会社や事業は立ちいかなくなるリスクがあります。

建設業許可の失効と空白期間の恐怖

代表者が亡くなった場合や、廃業を選択した後に新規で取り直そうとすると、許可の空白期間が生じます。この期間中は500万円(建築一式工事の場合は1,500万円)以上の工事を一切請け負うことができず、既存の取引先や従業員が離れていく原因にもなります。

経営事項審査の消失

公共工事を主軸にしている会社にとって、長年積み上げてきた経営事項審査の点数や施工実績は大きな財産といえます。
許可が失効してしまうと、これまでの実績がすべてリセットされてしまいます。
こうしたリスクを回避するため、第三者への事業承継や事前の認可制度を活用する方法があります。

建設業法における事業承継の許可制度とは?

以前までの建設業法では、会社組織の変更や事業譲渡、合併などを行う際、以前までの許可をいったん廃業し、新しい会社が一から新規許可を取得し直す必要がありました。
しかし、法改正により事業承継等の事前認可制度が導入され、実務は大きく変わりました。

許可番号や地位の継続

合併や分割、事業譲渡、さらには個人事業主の法人成りにおいても、事前に行政庁の認可を受けることで、従前の建設業許可の番号や地位をそのまま引き継ぐことができます。

空白期間の回避

許可が途切れることなく移行するため、大型案件の受注や公共工事の入札参加を維持したまま、円滑に経営権を移行することが可能です。

後継者がいない場合の選択肢

社内に親族や社員の後継者がいない場合、外部の成り手による事業承継が選択肢となります。

➀同業他社や異業種企業への事業譲渡・株式譲渡(M&A)

建設業に参入したい会社や規模拡大を目指す同業他社へ会社を譲渡する方法です。
株式譲渡であれば、法人格や建設業許可そのものは、そのまま維持されます。(役員変更等の届出は必要です)。
事業譲渡の場合でも、前述の事業譲渡の許可を活用すれば、許可をそのまま引き継ぐことができます。

➁従業員や外部人材への承継・第三者承継

親族外であっても、社内で技術と人望のある方や、外部から招いた後継者候補に経営権を渡す方法です。
後継者が常勤役員等(経営業務の管理責任者)や営業所技術者(専任技術者)の要件を満たす、あるいは計画的に資格を取得させることで、スムーズな承継体制を構築します。

事業承継を成功させるために

建設業の事業承継は、通常のM&Aや会社売買とは異なり、建設業法特有のハードルがあります。

ポイント解説
一部の業種だけの承継は不可建設業法の承継制度では、許可を受けている全部の承継が原則です。不要な業種がある場合は、承継前にあらかじめ一部廃業の手続きを済ませておく必要があります。
過去の処分歴や義務も引き継ぐ許可番号や実績だけではなく、被承継者が過去に受けた監督処分や未提出の決算変更届(事業年度終了届)の提出義務も承継人が引き継ぎます。
綿密なスケジュール管理と事前協議許可申請は、事業承継を実行する前に行う必要があります。行政庁への事前相談から認可まで数ヶ月の審査期間を要するため、逆算したスケジュール調整が必須です。

まとめ

後継者不足の課題は、先送りにしてしまうと、選択肢が狭まってしまいます。
事業承継は、決断してから実行に移すまでに多くの時間と準備を要します。
当事務所では、建設業許可の維持・承認に関する法務サポートから、行政庁との事前協議、書類作成までワンストップでサポートいたします。お気軽にご連絡ください。
グラス湘南行政書士事務所